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湊 直信
国際通貨研究所
<財団法人国際通貨研究所(IIMA)は、当時の大蔵省国際金融局の認可を受けた財団法人として1995年12月1日に設立された。
その設立の主な目的は、唯一の外国為替専門銀行として横浜正金銀行の伝統を受け継いできた東京銀行が、普通銀行に転換するにあたり、そこに蓄積された知識と経験をもとに、国際通貨、国際金融問題に関して質の高い調査研究を行い、政策提言をすることであった(→設立趣意書、寄附行為)。
これに加え、広く内外での意見交流や経済社会の展望について啓蒙し、他の調査研究事業の助成をすることも大きな目的のひとつとされた。オフィスは東京三菱銀行第二別館7階(当時)におかれた。
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そして、IIMAは、発足以来今日に至るまで、国際通貨、国際金融の諸問題を専門とする調査機関として、以下のようなテーマを主として取りあげてきた。
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客員研究員
立教大学国際経営研究科 兼任講師
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① パラグ・カンナ、2017 年、「接続性」の地政学:グローバリズムの先にある世界、原 書房、尼丁千津子、木村高子共訳 Parag Khanna, Connectography: Mapping the Future of Global Civilization, 2016, Random House
② Bruno Macaes, Belt and Road, A Chinese World Order, 2018, C. Hurst & Co.Ltd.
SRID ジャーナル第 16 号(2019 年 1 月)では、様々な角度から、「一帯一路」が論じら れた。上記の二つの書も、「一帯一路」を理解する上で大いに参考となると思う。
①の著者パラグ・カンナはインド生まれで、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス で博士号を取得、CNN グローバル・コントリビューター、シンガポール国立大学上級研 究員である。
著者は「ネクスト・ルネッサンス」(2011 年出版)で、政府、企業、市民 団体等が権力を争いながらも世界規模の課題に取り組むために、「国を超えた外交」を 結ぼうとしている状況を分析し、世界的なルネッサンスへたどり着くために自発的な接 続性の急激な拡大を通じて、世界を自由化することを結論としている。
② の著者はブルーノ・マサンエスであり、ハドソン研究所のシニア・フェロー、中国 人民大学シニア・フェローであり、CNN,BBC のコメンテーターも務める。
ポルトガルの 駐ヨーロッパ大使の経歴もある。
書名の通り全て「一帯一路」について非常に詳しく、 様々な側面から論じている。
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圧巻なのは中華人民共和国設立から 100 年目にあたる 2049 年の、「一帯一路」完成後の 中国と世界を想像している点である。
中国は豊かになり力を増して、カスピ海をまたぐ 橋によって中国と欧州がつながり、タイのクラ運河によりインド洋と太平洋がつながっ ている。
アフリカではジブチ、南スーダン、中央アフリカ、カメルーンが高速鉄道で繋 がれている。
自動運転の自動車、船、飛行機が中心の中国と衛星国、地域を繋ぐ。
「一 帯一路」完成後は、国境は緩和されるが、普遍性をもつものではない。
文化や文明の異 質性という要素により不安定感なものになる反面、中国の「天下(Tianxia)」は、国家 間の複雑なネットワークである連帯を強調している。
「天下」は啓蒙思想や公の知識か ら離れることにより西洋のモデルにとって代わり、中国による新たな世界秩序が形成さ れる。
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以上の様に双方ともインフラ整備によるサプライチェーン強化に関しては共通点が多 いが、サプライチェーンのネットワークのインパクトに関しては論理の飛躍が大きく、 全く異なる世界像を描いている。
とは言うものの、現実は時として我々の想像を大きく超えることがあるので、将来の世 界を想像してその夢を楽しめる二冊である。
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