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中国車が目立つパリ・ショーで1台の高級日本車が光った#2024.11.25#ピーター ライオン

2024-12-08 10:18:19 | 連絡
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ピーター ライオンOfficial Columnist
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オーストラリア・パース生まれ。
西オーストラリア州大学政治学部 日本研究科卒。
83年に奨学生として慶応大学に留学。
88年から東京拠点のモータージャーナリストに。
現在、Forbes、Car and Driver(米)、Auto Express(英)、Quattroruote(伊)などの有力誌に新車情報や試乗記を寄稿。
2014年に「サンキューハザードは世界の愛言葉」上梓 (JAF出版)。
 
2015年4月から、NHKワールド制作の番組「Samurai Wheels」で、片山右京と共に海外150か国に英語で日本のクルマ文化を発信。
ワールド・カー・アワード賞元会長。
日本カー・オブ・ザ・イヤー賞選考委員。
2010年ニュルブルグリンク24時間レースにクラス4位入賞。
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10月半ばのパリーオートサロンでは、まるで中国の自動車メーカーが会場を支配しているかのようだった。
どこを見ても、中国車。
日本に進出してきたBYDもあれば、GACやXPengの新車も展示されていた。
実に、中国のカーメーカーだけで合計10メーカーのブースがあった。
その中には、SKYWORTH、AITO、FORTHINGなど、35年以上モータージャーナリストをしている私でさえ、聞いたことのないメーカーも多数あった。
プロポーションや外観が綺麗な中国製EVがあれば、どうかなと首をかしげるクルマもあった。
 しかし、その中で展示した日本メーカーが一社だけあった。
トヨタ、日産、ホンダなどのブースはなかったけれど、その唯一の日本の企業は、THKという世界的な部品メーカーだった。
そして、同社が発表しかなり注目されたのは、日産自動車の元専務でデザイン・ディレクターだった中村史郎氏によってデザインされたTHKのコンセプトカーだ。
でもその前に。
 正直に言うと、今回のショーは2030年にタイムスリップして、違う次元に到達したような気分だった。
世界ではパリオートサロンのような国際モーターショーの人気や重要性がだんだんと減っていっているにもかかわらず、中国のカーメーカーはどんどん参加してきている。
欧州の市場などに思い切り進出したいからだ。
電気自動車の技術的レベルから言えば、中国のメーカーはすでに欧米のレベルと並んだと言える。
いや、追い抜いたと言う人もいる。
デザイン的にも、性能的にも、航続距離も、それぞれの中国メーカーやクルマのルックスも独創性が育ってきた。
しかし、EU諸国の多くが中国から進出するEV との競争を警戒しているので、10月末には欧州に輸入される中国車に対する関税の上昇が話題になった。
このような中国車になんと最高で35%の関税がかかるという事態になったのに対し、中国側から猛反対の声が上がった。これで貿易戦争も始まる可能性が出てきたという人もいる。
でも、それだけではない。今月のアメリカの大統領選挙に勝ったトランプ氏が先々週、アメリカに輸入される中国車に対して60%の関税をかけると言い放った。そのせいで、アメリカの物価がかなり上がるだろうと識者は見ているし、中国との関係が世界的に段々と複雑になってくると言える。
さて、そういう中国車が話題を独占するパリで、1台の日本車が光った。
実は、モーターショー会場のBホールは、ほとんどと言っていいほど、中国メーカー車で埋まっていた。
その中で、中国車と同じぐらい目立っていたのが、最先端技術が詰まったその日本車だ。
その企業は一般人には聞き慣れないTHK社というハイテク部品サプライヤーだけど、国際メディアに特に注目されたのは、そのコンセプトカーのルックスとそのデザイナーにあった。
 日産GT-Rの伝説的なデザイナーであり、現在は自身のデザインスタジオを運営する中村史郎が、ハイテク部品サプライヤーTHKと組んで、1台の高級コンセプトカーを手掛けた。
ステージ上で中村氏とTHK社の寺町彰博社長がアンベールした「LSR-05コンセプト」は、日本国外初公開だったのだ。
 やはり、フェラーリやメルセデスベンツ、そして多くの日本のカーメーカーに部品を提供している世界一流パーツメーカーと、世界一流のクルマのデザイナーが手を組んで生み出したコンセプトカーを披露すれば、メディアやライバルが注目するのは当然だ。
最も格好良いEV車の一つですね、さすが中村さん!」とイタリア人の同僚が言った。 
4人乗り4輪駆動の流麗なクロスオーバー・クーペ「LSR-05コンセプト」は、中村のSNデザイン・プラットフォーム・スタジオが手がけた未来的なボディに巧みに包まれ、目を見張るような超ハイレベルな技術を誇る。
いうまでもなく、中村氏は日産自動車でデザイン・ディレクターとしてGT-R、Z、ジューク、キューブなどを生み出したことで知られている。
その彼がデザインしたLSR-05のビジョンは、ラグジュアリー(L)、スポーティ(S)、レボリューション(R)の理想を融合させ、ダイナミックな4シーター・クロスオーバー・クーペに仕上げることだった。 
THKは精密機械部品やリニアモーション技術を専門とし、自動車のパーツだけでなく、医療機器、航空宇宙、産業機械、ロボットなどの分野で活躍している。
また、フランスにも生産拠点を持ち、ヨーロッパ、北米、アジアを含む世界各地に40の工場を運営している。
自動車の部品では、インホイールモーター、アクティブサスペンション、電気式バイワイヤ・ブレーキシステムなどの部品をアメリカのビッグ3やイタリアのスーパーカーメーカー、そして日本のほとんどの自動車メーカーに供給しているTHKは、テスラとボッシュとボーイングを足したような存在だ。
 このプロジェクトは量産を視野に入れて設計されており、THKが独自に開発した複数の技術ソリューションが採用されている。
寺町社長は、このプロジェクトを市場に投入するためには、販売チャネルが広く、必要に応じてメンテナンスが可能な企業との提携が必要だと語る。
■業界をリードする技術
高級車の分野では、 「『ステルス・シートスライド・システム 』と呼ぶものを開発しました。
これは、レールが隠れているため、足元が広く、レールで靴が傷つくこともなく、シートの動きも静かでスムーズです」と、寺町社長は言う。
「すでに欧米の航空会社で採用されているほか、新幹線でも少し異なるバージョンが採用されています」と。
 寺町は、多くの高級車メーカーが彼のステルス・シート・システムに興味を示していると語った。
「より上品に見えますからね」と胸を張る 。
LSR-05は、93kW(800V)の可変磁束インホイールモーターを後輪に2基、フロントに220kW(800V)のモーターを1基搭載し、四輪操舵システムの一部を形成するプラットフォームを採用している。
これにアクティブ・サスペンション、MR流体アクティブダンパー、電動ブレーキなどの機能を組み合わせることで、卓越した乗り心地と操縦安定性を実現している。
しかし、おそらくLSR-05の最高の特徴は、そのワイヤレス、あるいは非接触充電システムだろう。
CLPSと呼ばれるこのシステムは、地面に埋め込まれた送信機を介してワイヤレス充電を可能にし、充電効率を高めるために車高を下げるアクティブ・レベル・コントロール・サスペンション(ALCS)と合わせて、電気自動車技術の未来を垣間見せてくれる。
寺町はこのように語った。
「私が長年にわたって実感しているのは、例えばテスラ車のように、新しい技術が市場に投入されると、たとえその技術がまだ開発段階で信頼性が十分でなくても、マニアや裕福な人々はその車を購入するということ。
そしてその技術は、より良く、より安全で、より安くするための改良と、費用対効果の高い対策という第二段階を経て、よりリーズナブルな価格の車へと濾過されていく。
私たちがこのクルマでやっていることは、そういうことです。
私たちのクルマには最先端の技術が採用されており、近い将来、その技術がより多くのクルマに搭載されることを期待します。」
欧米でEVの販売が失速している中で、中国のEVに重い関税をかけるポリシーは世界にどう影響するのか。
しかし、そんな中でも技術を誇るTHKは次世代のLSR-06とLSR-07のコンセプトカーの開発を進めており、2025年末の東京モーターショーで公開する計画を持っているようだ。
一般車にその技術がどのようにフィードバックされるのか、おおいに期待できる。
文=ピーター ライオン 

 


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