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Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。
政治学博士。
カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。
ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、
現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。
ジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア(Joseph Samuel Nye Jr.、1937年1月19日 - 85歳)は、アメリカ合衆国の国際政治学者。ハーバード大学特別功労教授。アメリカ民主党政権でしばしば政府高官を務め、ジャパン・ハンドラーとしても知られる。2014年(平成26年)秋の叙勲で旭日重光章を受章。
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世界政府が21世紀に誕生する可能性は薄い。しかし、すでにさまざまな形でグローバルなガバナンスは存在している。
世界には、通信や民間航空、海洋投棄、貿易、核兵器の拡散を規制する、何百もの条約や制度、体制がある。
だが、そうした制度だけでは十分ではなく、大国の指導力が必要となる。
ただし、今世紀中に大国がそうした役割を担うかどうかは不透明だ。
中国とインドの力は増大しているが、両国の行動は変わるのだろうか。
21世紀中葉に、米国、中国、インドの三極世界が形成すると予想されているが、皮肉にもこの3カ国は自国の主権維持に最も熱心だ。
以前、ロバート・ゼーリック世界銀行総裁は、中国は“責任あるステークホールダー”になると主張した。
一方で、力が強まるにつれて、自分の考えを押し付け、独自の国際制度を作るのではないかという声も上がっている。
欧州連合は国家主権を制限する実験に取り組んでおり、制度改革を推し進めるかもしれない。
ただし、世界が1945年の国際連合創設と同じような“世界憲法制定の好機”に恵まれるとは思えない。
現在、国連は世界機関として法律の制定、危機外交、平和維持、人道的使命を果たすうえで極めて重要な役割を果たしているが、それ以外の役割を果たすには規模が小さすぎる。
2009年に開かれたコペンハーゲンでの国連気候変動首脳会議のように192カ国もの首脳が集まる会議で、具体的な解決策に合意するのは難しい。
最近、クリントン米国務長官は、「国連は依然として最も重要な国際機関であるが、いつもその限界を思い知らされる。
国連はすべての問題に取り組むために設立されたわけではないし、
そうであってはならない」と語っている。
そうであってはならない」と語っている。
国際社会が直面している大きなジレンマは、いかにすべての国を参加させ、かつ、効果的な仕組みを作るかだ。
それに対する答えは、欧州諸国が“可変的配置”と名付けた考え方の中にある。すなわち、“多国間外交(マルチラテラリズム)”と“小規模な多国間外交(ミニラテラリズム)”を、問題に応じて使い分けるのである。
〇国連の限界を補うネットワークの力
たとえば、通貨問題を取り扱うためにブレトンウッズ会議で設立されたIMF(国際通貨基金)の加盟国は今日、187カ国に及んでいる。
70年代まで、ドルは世界の基軸通貨であり、通貨協力の最も重要な要素であった。
そして、71年のニクソンショック後、フランスがランブイエ城に5カ国の首脳を招聘して通貨問題を議論した。
このグループは7カ国に増え、議論の対象を広げ、G8へと発展していった。その後、G8は発展途上国から5カ国をゲストとして招くようになり、08年の金融危機の際にさらにメンバーを増やしてG20になった。
それと同時に、G7はより狭い通貨問題を議論するための場として継続している。
金融安定化委員会のような新しい組織が設立される一方、アメリカと中国の2国間協議の重要性も増している。
ある外交官が「クリントン政権の初期の頃のように20カ国で為替問題やメキシコの救済について交渉するのは容易ではない。
10カ国を超えれば、意見をまとめるのに大変で、何もできない」と語っていた。
その意見は正しい。
3カ国であれば、三つの2国間関係が存在する。
10カ国なら、45の2国間関係が存在する。
100カ国ならほぼ5000の2国間関係が存在する。
気候変動のような問題で、国連が十分な役割を果たせないのはこのためだ。
むしろ、温室効果ガスの80%以上を排出している12カ国で構成される、主要経済国フォーラムのような小グループのほうが交渉を行いやすい。
国際政治の仕事の多くは、正式なネットワークと非公式なネットワークに依存している。
G20のようなネットワーク組織は課題を設定し、合意を形成し、協調政策を立案し、情報を交換し、規範を設定するために利用されている。
米国務省のアン・マーリー・スローター政策企画局長は、「ネットワークによる結び付きから生まれるパワーは、結果を押し付けるパワーではない。
ネットワークは組織化されたり、管理されたりすることはない。
複数のプレーヤーが各自の合計よりも大きな全体に統合される」と語っている。
言い換えると、ネットワークは他のプレーヤーを支配するのではなく、共同して好ましい結果を達成するパワーを与えるのである。
世界的な情報化時代の特徴である、国家を超える課題に対処するために、国際社会は国連の枠組みを支援する補完的なネットワークを築き上げなければならない。しかし、主要国が分裂してしまうと、G20のようなネットワーク組織においても、国連やブレトンウッズ通貨体制のような行動指針となる政策課題を設定することはできないだろう。
08年の金融危機の直後、G20は各国が政策を調整する場として、保護主義の蔓延を阻止した。
11月にソウルで開催されるG20の会議でどんな成果を示せるか。世界中が気をもみながら見守っている。
週刊東洋経済2010年11月6日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。
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