<ハンズフリー拡声器(ワイヤレス・小型・10W・最大20m)適用か>
<
☆弧状列島,共助,IoT、スーパーブロードバンドモニタリング即時同報多地点伝達テレワーク
☆弧状列島,共助,肺炎ウイルス三密「「密閉・密集・密接」問題解消、平時・非常時の安全なICT環境で安心WEB会議、授業及びコンサート普及促進
>
:::::
マスクの着用が当たり前になった。しかし、このコロナ禍の「当たり前」によってコミュニケーションに困難を感じる人もいる。研究論文によれば、マスク着用時は声に含まれる高周波数域の音がカットされるという。論文の共同執筆者に取材した。
* * *
人の耳は、年を取るにつれ高音域を聞く機能から衰えていくと言われている。蝸牛(かぎゅう)とよばれる渦巻き形の器官に備わる「有毛細胞」の障害により、高音が聞こえにくくなる。これを加齢性難聴という。年をとるとモスキート音(蚊の飛ぶ音)などが聞こえない、あるいは聞こえにくくなると言われるのはこのためだ。
その一方、マスクを着用すると声の高音域がカットされ、声が聞き取りにくくなる可能性を示唆した論文がある。久留米大学医学部による2012年の研究だ。実験では、看護師役11人と患者役1人を用意。朝の検温場面を想定し、患者役にはベッドで寝てもらう。看護師役はマスク着用/非着用の2パターンで検温を実施。患者役には目を閉じてもらい、マスクを着けているかどうかがわからないようにした。
実験の音声は録音し、音響分析ソフトによって数量化した。「音圧レベル(周波数帯ごとの音の大きさ)」「声質(声のザラザラした感じ、しわがれ声、かすれ声の程度を表す指標であるHNR。値が大きいほど声質が低い)」のふたつの観点で分析した。
分析の結果、音圧レベルにおいては、マスク着用時には非着用時に比べて、4000〜8000ヘルツといった高周波数域の音圧が低くなる傾向にあることがわかった。一方、2000〜4000ヘルツの低周波数域においては、マスクの着用/非着用による音圧の違いはほとんどみられなかった。
一方、声質に目を向けると、検温の説明場面においては、マスクの着用/非着用による統計的に有意な差はなかった。しかし、計測した脈拍値を患者に伝える場面では、マスク着用時のほうが声質が有意に低下した。
どうやらマスクを着けると、人の声に含まれる高周波域の音がカットされる傾向があるというのだ。
一般的に、人がおこなう会話は300〜3000ヘルツぐらいの周波数がメインであると言われている。4000ヘルツは鳥のさえずりなど、かなり高い音で使われる周波数域だ。ただ、マスク着用時に4000ヘルツ以上の音域が低下しているということは、会話時にも4000ヘルツ以上の音が部分的に混ざっていると考えられる。
ところで最初記したように、加齢性難聴は4000ヘルツ以上の音から聞こえなくなる。ということは、みんながマスクを着けてしゃべっていると、加齢性難聴と同様、日常会話における聞こえに困難を感じる可能性がある。まして、すでに加齢性難聴が進行している人にとっては、マスクを着けた人の声はより聞きにくくなると考えられる。
なぜマスクは高音域をカットするのか。共同研究者の一人である久留米大学医学部の加悦美恵准教授は二つの理由を説明する。
「ひとつはマスクによって高音域の音がフィルターされるという説です。高音域であるほど振動の回数が大きく、フィルターが振動を阻害し、音圧が下がるのではないか。もう一つは、マスクを着用することで物理的に口の動作が阻害され、通常とは異なる声の出し方になっているという説です。ただ、口の開きが抑制されることが高音域の音圧低下に結びついているのかどうかははっきりしません」(加悦准教授)
では、マスクを着用した状態ではどのように話すのがいいのか。
「話す前に、『これから話しますよ』という合図を送ることが効果的です。肩に触れるとか身ぶり手ぶりで示すなど、なんでもいいので合図を出すことで、話の聞き取りに集中してくれます。また早口にならずに声のスピードをコントロールすることも大事だと考えられます」(同)
またもう一つ重要なのは、マスクを着けているということを意識して話すことだ。普段よりも声が届きづらい状況にあるということを意識することで、明瞭な発話をしようという動きが起こる。これをフィードバック効果という。
たとえば前述の「声質」の分析を思い出してみよう。検温の説明場面(看護師は話すことに集中する)では、声質に変化は起きなかった。しかし、脈拍を伝える場面(脈拍の数字を確認する、測定器を操作する、などの動作が付随)では、声質が低下した。つまり、自分が何に意識を向けているかによって、自然と話し方が変わるのだ。
一方、フィードバック効果には懸念点もある。
「実験では、いつもは着けていないマスクを着けたということで、発話者が無自覚に明瞭に話すよう『切り替え』が起きたのだと考えられます。しかしそうであるのならば、マスク着用が当たり前になったいま、その存在を意識することもなくなり、フィードバック効果も薄れていくのではないか。新しい会話のあり方を考える必要があると思います」(同)
耳の聞こえとコロナ禍の関係は深い。たとえば難聴の人は相手の口の動きを見て発話内容を判断することがある。「口話」と呼ばれる技術で、とくに先天性の難聴を持つ人は無意識のうちに身につけていることも多い。加齢性難聴の場合でも、相手がマスクを着けていると、口の動きが見えず、聞き取りに困ってしまうケースはある。
「耳の聞こえが悪い患者さんには、難しいとは思いつつも、どうしても耳元に近づいて話さざるをえないこともあります」(同)
新しい日常において、耳の聞こえに困っている人とどう接するか。せめてマスクを着けている自分の声は相手にとって聞きづらいものである、という意識は忘れずにおきたい。(文・白石圭)
* * *
人の耳は、年を取るにつれ高音域を聞く機能から衰えていくと言われている。蝸牛(かぎゅう)とよばれる渦巻き形の器官に備わる「有毛細胞」の障害により、高音が聞こえにくくなる。これを加齢性難聴という。年をとるとモスキート音(蚊の飛ぶ音)などが聞こえない、あるいは聞こえにくくなると言われるのはこのためだ。
その一方、マスクを着用すると声の高音域がカットされ、声が聞き取りにくくなる可能性を示唆した論文がある。久留米大学医学部による2012年の研究だ。実験では、看護師役11人と患者役1人を用意。朝の検温場面を想定し、患者役にはベッドで寝てもらう。看護師役はマスク着用/非着用の2パターンで検温を実施。患者役には目を閉じてもらい、マスクを着けているかどうかがわからないようにした。
実験の音声は録音し、音響分析ソフトによって数量化した。「音圧レベル(周波数帯ごとの音の大きさ)」「声質(声のザラザラした感じ、しわがれ声、かすれ声の程度を表す指標であるHNR。値が大きいほど声質が低い)」のふたつの観点で分析した。
分析の結果、音圧レベルにおいては、マスク着用時には非着用時に比べて、4000〜8000ヘルツといった高周波数域の音圧が低くなる傾向にあることがわかった。一方、2000〜4000ヘルツの低周波数域においては、マスクの着用/非着用による音圧の違いはほとんどみられなかった。
一方、声質に目を向けると、検温の説明場面においては、マスクの着用/非着用による統計的に有意な差はなかった。しかし、計測した脈拍値を患者に伝える場面では、マスク着用時のほうが声質が有意に低下した。
どうやらマスクを着けると、人の声に含まれる高周波域の音がカットされる傾向があるというのだ。
一般的に、人がおこなう会話は300〜3000ヘルツぐらいの周波数がメインであると言われている。4000ヘルツは鳥のさえずりなど、かなり高い音で使われる周波数域だ。ただ、マスク着用時に4000ヘルツ以上の音域が低下しているということは、会話時にも4000ヘルツ以上の音が部分的に混ざっていると考えられる。
ところで最初記したように、加齢性難聴は4000ヘルツ以上の音から聞こえなくなる。ということは、みんながマスクを着けてしゃべっていると、加齢性難聴と同様、日常会話における聞こえに困難を感じる可能性がある。まして、すでに加齢性難聴が進行している人にとっては、マスクを着けた人の声はより聞きにくくなると考えられる。
なぜマスクは高音域をカットするのか。共同研究者の一人である久留米大学医学部の加悦美恵准教授は二つの理由を説明する。
「ひとつはマスクによって高音域の音がフィルターされるという説です。高音域であるほど振動の回数が大きく、フィルターが振動を阻害し、音圧が下がるのではないか。もう一つは、マスクを着用することで物理的に口の動作が阻害され、通常とは異なる声の出し方になっているという説です。ただ、口の開きが抑制されることが高音域の音圧低下に結びついているのかどうかははっきりしません」(加悦准教授)
では、マスクを着用した状態ではどのように話すのがいいのか。
「話す前に、『これから話しますよ』という合図を送ることが効果的です。肩に触れるとか身ぶり手ぶりで示すなど、なんでもいいので合図を出すことで、話の聞き取りに集中してくれます。また早口にならずに声のスピードをコントロールすることも大事だと考えられます」(同)
またもう一つ重要なのは、マスクを着けているということを意識して話すことだ。普段よりも声が届きづらい状況にあるということを意識することで、明瞭な発話をしようという動きが起こる。これをフィードバック効果という。
たとえば前述の「声質」の分析を思い出してみよう。検温の説明場面(看護師は話すことに集中する)では、声質に変化は起きなかった。しかし、脈拍を伝える場面(脈拍の数字を確認する、測定器を操作する、などの動作が付随)では、声質が低下した。つまり、自分が何に意識を向けているかによって、自然と話し方が変わるのだ。
一方、フィードバック効果には懸念点もある。
「実験では、いつもは着けていないマスクを着けたということで、発話者が無自覚に明瞭に話すよう『切り替え』が起きたのだと考えられます。しかしそうであるのならば、マスク着用が当たり前になったいま、その存在を意識することもなくなり、フィードバック効果も薄れていくのではないか。新しい会話のあり方を考える必要があると思います」(同)
耳の聞こえとコロナ禍の関係は深い。たとえば難聴の人は相手の口の動きを見て発話内容を判断することがある。「口話」と呼ばれる技術で、とくに先天性の難聴を持つ人は無意識のうちに身につけていることも多い。加齢性難聴の場合でも、相手がマスクを着けていると、口の動きが見えず、聞き取りに困ってしまうケースはある。
「耳の聞こえが悪い患者さんには、難しいとは思いつつも、どうしても耳元に近づいて話さざるをえないこともあります」(同)
新しい日常において、耳の聞こえに困っている人とどう接するか。せめてマスクを着けている自分の声は相手にとって聞きづらいものである、という意識は忘れずにおきたい。(文・白石圭)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます