マッシモ・イントロヴィーニャ
マッシモ・イントロヴィーニャ氏(Massimo Introvigne、1955年6月14日、ローマ生まれ。67歳)はイタリア人の宗教社会学者です。新宗教の研究者の国際的なネットワーク「Center for Studies on New Religions(新宗教研究センター: CESNUR)」を設立し、理事長を務めています。イントロヴィーニャ氏は宗教社会学の分野で70冊の著書と100本以上の論文を発表してきました。Enciclopedia delle religioni in Italia(イタリア宗教百科事典)の主要著者の1人でもあります。また、イントロヴィーニャ氏は、Interdisciplinary Journal of Research on Religion(宗教研究の学際的ジャーナル)の編集委員であり、カリフォルニア大学出版による「Nova Religio」の理事でもあります。2011年1月5日~12月31日にかけては、欧州安全保障協力機構(OSCE)の「キリスト教徒およびその他の宗教の信者への差別に着目した、人種差別、排外主義、差別の根絶活動の代表者」を務めました。そして、2012~15年には、世界規模での信教の自由に関する問題を監視するために、イタリア外務省が設置した「信教の自由の監視」委員会の議長を務めました。
〇中国の邪教リストを広範囲にわたって研究されていますが、どのような経緯でこのリストは作られたのですか?
1990年代半ばから、中国政府は違法、そして、活動を禁止した団体を分け、邪教として指定することで管理してきました。
1990年代のある時点で、邪教に分類された団体の具体的なリストが作成されました。このリストは国際的なメディアで大きな注目を集めました。広範囲にわたる初回のリストには(アメリカのプロテスタント系団体の)ブランチ・ダビディアン(Branch Davidian)や(日本の)オウム真理教等の海外の団体も含まれていました。この初回のリストは、潜在的に危険をはらむ海外の団体に焦点が絞られていました。当時、邪教は他の国々で用いられている「カルト」と同じ意味を持っていました。しかし、
1995年になると、このリストは拡大され、危険な団体だけでなく、異端と見なされた団体も指定されるようになります。
ここで言う異端とは、中国で公式に認可を受けた5つの宗教団体の教義 – プロテスタント(三自愛国教会)、カトリック、仏教、道教、および、イスラム教に従わないことを意味します。非公認の団体の多くは中国で生まれた団体であり、プロテスタントから派生しました。初回のリストのうち、中国国外を拠点とする団体は(ベトナムの)スプリンムマスター・チンハイのみでした。同年、このリストは拡大され、
各地域のプロテスタントの団体や天父的児女、そして、世界基督教統一神霊協会等の海外の団体も含まれました。数千名の信者が中国の指導者の居住地域を包囲した1999年の法輪功の事件が、邪教に関する政府の考えを刺激しました。政府の支援により拡大し、しっかりと整備された団体が、初めて中国に対して、そして、中国共産党に対してより重大な脅威と見なされたのです。
1998年、公安部は法輪功を邪教に指定しました。この意味をはっきりさせるかのように、
1999年の議会の決議により邪教団体は正式に違法となりました。このとき、通称「610」反カルト部が設立されました。
2000年、国務院はこの流れに乗り、邪教に対応する別の部署のネットワークを設立します。
1995年、政府は18の団体が名を連ねた最新版の邪教リストを公開しました。このリストでは、呼喊派と全能神教会が邪教に指定されました。
〇現在のリストにはどの団体が掲載されているのですか?
2017年9月18日、中国の反カルト(邪教)を推進するウェブサイトの最新版は、
2014年に公開した活動禁止団体のリストと同じものを掲載しました。リストに取り上げられた20の団体のうち、次の11の団体が「危険」と見なされています。
1. 法輪功 2. 全能神教会 3. 呼喊派 4. 門徒会 5. 世界基督教統一神霊協会 6. 観音法門 7. 血水聖霊 8. 全範囲教会 9. 三班僕人派 10. 霊仙真仏会11. 中華大陸行政執事站さらに、このウェブサイトが「警戒」するよう市民に呼び掛けているのは、次の9つの団体です。
霊霊会、被立王、天父的児女、達米宣教会、新約教会、世界エリヤ福音宣教会、主神教、圓頓法門、華南教会。このリストから、合計20の団体のうち、11の主要(危険)団体とその他の9つの団体という2つのカテゴリーが存在すると考えられます。
〇リストに含まれると、どのような影響が生じるのですか?
リストに含まれると、その団体は「宗教団体」ではなく、単純に違法組織と見なされるようになります。従って、このリストは新興宗教への認識に大きな影響を与えてきました。
このリストに掲載されると、政府による容赦のない弾圧がリスト上のいかなる団体に関連する個人に適用されるようになります。
中国刑法の第300条は邪教の「利用」、つまり、邪教で活動する行為を犯罪行為と規定しており、違反者には3年から7年以上の懲役刑が科されます。これほどまでの厳しい弾圧は、1950年代の一貫道およびその他の団体への抜け目のない弾圧と同じレベルです。
かつての一貫道と同じように、法輪功が生き残る方法は、中国政府の影響が直接及ばない海外への移転しかありませんでした。また、違法組織と見られたことで、多くの団体の信者は「地下」に潜伏しました。
最後に、邪教リストは許可されている宗教に対する概念の対極を示す役割も果たしています。その結果、許可されている宗教団体の範囲から外れている団体は不安定な状態となります。一部の宗教団体は邪教リストに入る脅威を回避するために手を打っています。
末日聖徒イエス・キリスト教会やサイエントロジー等の海外の宗教団体は中国政府との協議を開始し、平和的な意図を説明してきました。
最後に、幅広く公表されてきたこのリストは、宗教活動として何が受け入れられるのか、何が迫害とび弾圧の対象になるのかに関する公式の方針に関して、研究者たちに考える貴重な鍵を与えています 。
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