米下院外交委員会は6月26日の午後(日本時間27日未明)、いわゆる従軍慰安婦問題で日本政府に責任を認めて謝罪するよう求める決議案を、39対2の賛成多数で可決しました。7月中に本会議に上程され、可決される見通しです。従軍慰安婦問題や強制連行問題など、過去の日中戦争、太平洋戦争中に日本軍や日本政府が行ったことへの謝罪や補償(いわゆる戦後補償問題)について、安倍総理が歴史をねじまげる発言を繰り返していることへの、米議会からのイエローカードということです。
安倍総理は無視を決め込み、外務省は事実に反するというコメントをしていますが、従来の日本外交であるならば、こういう非難決議を上げられることはなかったのです。過去の村山総理談話や河野衆議院議長談話という形でまとめられていた日本政府の正式見解が、安倍総理やそのとりまきの政治家たちによって、正式見解を反故(ほご)にする発言が相次いだ結果なのです。
問題がより深刻なのは、安倍総理はじめ当のご本人たちがまったく反省していないことです。恥の上塗りという感じなのですが、反省しない人たちは、この決議案の外交委員会採択の前の6月14日に、共同で米ワシントンポストに意見広告を出しました。自民党と民主党、無所属の議員45人と教授、政治評論家、ジャーナリストらが共同で出した「事実」(THE FACTS)と題する広告です。当時の日本政府や日本軍が慰安婦動員に介入したという文書は見つかっていないから、決議案の内容は歴史的事実と異なると反論しているものです。
戦後60年以上が経過し、被害者もその犯罪的な行為に従事した人も高齢化しています。その記憶が薄れていく中での、安倍チームの組織的事実改ざん、偽装工作が進行しているわけです。本来なら、この60年の間に、この行為に従事したものを洗い出し、誰がどのように命じて、この行為が行われたかを追求し、その加担の重要さに応じて責任を取らせるべきであったのです。ところが、日本社会では「そこまでしなくても・・」とか、「国民全員の責任で、その人たちだけの責任じゃない」などといって、事実の究明をストップさせてしまう雰囲気があるのです。
そもそも戦時のこうした犯罪的な行為を行う際には、後々問題になるかもしれない、署名入りの書類を作成すること自体ないのではないか(あってもすぐに消滅処分するか)と疑わねばならないのですが、くだんの意見広告の主旨は文書がないものは(自分たちが見つけられないものは)存在しない・・という、驚くほど短絡的な発想によるものです。
この意見広告の翻訳文は以下のサイトで読むことができます。
http://dj19.blog86.fc2.com/blog-entry-83.html
この意見広告に名前を連ねた45人の国会議員は以下の通りです。
《国会議員合計44名》
【自民党】(29名)
愛知和男 自民 衆議院 東京都(比)
赤池誠章 自民 衆議院 南関東,(比)南関東
稲田朋美 自民 衆議院 北陸信越(福井1)
江藤拓 自民 衆議院 九州(宮崎2)
大塚高司 自民 衆議院 近畿(大阪8)
岡部英明 自民 衆議院 北関東(比)
小川友一 自民 衆議院 東京都(東京21)
鍵田忠兵衛 自民 衆議院 近畿,(比)
亀岡偉民 自民 衆議院 東北(福島1)
木原稔 自民 衆議院 九州(比)
木挽司 自民 衆議院 近畿(兵庫6)
坂井学 自民 衆議院 南関東(神奈川5)
島村宜伸 自民 衆議院 東京都(東京16)
杉田元司 自民 衆議院 東海(比)
鈴木馨祐 自民 衆議院 南関東(比)
薗浦健太郎 自民 衆議院 南関東(千葉5)
平将明 自民 衆議院 東京都(東京4)
土井亨 自民 衆議院 東北(宮城1)
土井真樹 自民 衆議院 東海(比)
戸井田とおる自民 衆議院 近畿(兵庫11)
西本勝子 自民 衆議院 四国(比)
林潤 自民 衆議院 南関東(神奈川4)
古川禎久 自民 衆議院 九州(宮崎3)
松本文明 自民 衆議院 東京都(東京7)
松本洋平 自民 衆議院 東京都(東京19)
武藤容治 自民 衆議院 東海(岐阜3)
山本ともひろ 自民 衆議院 近畿(比)
渡部篤 自民 衆議院 東北(比)
中川義雄 自民 参議院 北海道
【民主党】(13名)
石関貴史 民主 衆議院 北関東
泉健太 民主 衆議院 近畿(京都3)
河村たかし 民主 衆議院 東海(愛知1)
北神圭朗 民主 衆議院 近畿(比)
神風英男 民主 衆議院 北関東(比)
田村謙治 民主 衆議院 東海(比)
牧義夫 民主 衆議院 東海(愛知4)
松木謙公 民主 衆議院 北海道(比)
松原仁 民主 衆議院 東京都(比)
吉田泉 民主 衆議院 東北(比)
笠浩史 民主 衆議院 南関東(比)
鷲尾英一郎 民主 衆議院 北陸信越(比)
松下新平 民主 参議院, 九州(宮崎)
【無所属】(2名)
西村真悟 無 衆議院 近畿(比) 旧民主党
平沼赳夫 無 衆議院 中国(岡山3) 旧自民党
国会議員のほかに、屋山太郎(政治評論家)、桜井よしこ(ジャーナリスト)、岡崎久彦(元駐タイ大使)などの見識のない有識者が名前を連ねています。
民主党の13人の中に泉健太が入っているのには驚きました。まだ20代で、参議院議員の福山哲郎さんの秘書から衆議院に当選した人で、福山さんの政治姿勢からしても、ここに名前を連ねるほど見識がないとは思っていなかったので・・。
参議院議員が2人いますが、いずれも今回の改選ではありません。今回改選の議員はさすがに名前を出すことに躊躇したものと思われます。
こんな国会議員を、日本の有権者は国会に送っています。この手の国会議員が少しずつ増えてきていて、それによって日本の政治はおかしくなってきています。ひとことで言えば、議論をしない国会、力で押し切る政治です。
この状況を変えられるのは、実のところ「有権者」のみです。いよいよ参議院選挙に突入します。前回にも書きました、感情に左右される投票ではなく、合理的に考えた投票をしましょう。
こちらも参考にして下さい。
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