竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

沖縄密約と普天間移設、そこにある道。

2010年02月28日 | 政治
「沖縄密約」(2007年 岩波新書)という本を読んでいた。非核三原則を唱えてノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作元総理が、実は日本への核持ち込みの密約をアメリカと交わしていた。
この密約は1972年の沖縄返還にまつわる日米交渉の中、水面下で交わされる。表向きは「核抜き返還」を国内にむけて約束していた佐藤元総理と、ベトナム戦争の泥沼の中で「核抜き」どころか事実上の「基地自由使用」を目論んでいたアメリカ。
最近になって、「基地自由使用」と「核の再持ち込み」を認める「密約」は佐藤元総理の自宅に保存されていた・・ということが明らかになり、外務省の有識者委員会が設置され、どうやら「密約」は存在したが政府の了解事項ではないというような「結末」となりそうな雲行きである。
政府が了解していないのであれば「密約」ではなくなるのだが、アメリカがそれで了解するのだろうか?実質は「密約は存在しない」、アメリカの「核持ち込み」も「基地自由使用」も認められないとうことになるはずだ。

実は「密約」にはもっと肝心な部分がある。それは沖縄返還に伴う日本側の財政負担の問題だ。財政負担の額は3億2000万ドル(当時のレートで1150億円)と公表された。しかし実際にはさらに約3億6500万ドルがあり、これらが現在の「思いやり予算」の出発点になっているという。
アメリカ側の要求は三つに分類できるという。
1) 在沖縄米軍資産など過去のものについて最大限の回収。
2) 返還に伴う米側からの支出は一切拒否。
3) 基地関係費用などで日本側から従来の枠組みを超えた新たな財政支出を引き出し制度化する。

この3)である。
この密約は交渉の当事者である外務省には内緒で大蔵省と米財務省の間で秘密裏に行なわれたという。「沖縄はタダで返ってくる」という佐藤元総理の主張を表面上はその通りであるように取り繕うために、当時の大蔵大臣福田赳夫の指示のもとに柏木大蔵省財務官(当時)とジューリック財務省特別補佐官との間で1969年9月から開始され、11月10日には決着合意していたという。

秘密合意の中身はこうだ。
1) 民生用資産買収 1億7500万ドル
2) 返還に伴う基地移転、その他経費  2億ドル(5年間で物品、役務により)
3) 通貨交換後の預金による供与  1億1200万ドル
4) 基地従業員の社会保障  3000万ドル
5) その他、琉球銀行株式、石油施設の売却益と米予算節約 1億6800万ドル
合計6億8500万ドル
(この額はいまの資金価値に換算するとゆうに3兆円を超える額だという。)

実際にはこの内訳はあってなきがものだったという。まともな積算根拠があるのはなく、とりわけ「返還に伴う基地移転、その他経費」(以下「返還経費」と略す)は強引な「つかみ金」のようなものだった。
しかし表向きは、この総額を公表するわけにも行かず、「通貨交換後の預金による供与」などは「無利子預金」という名の「無償供与」などとなり、「民生用資産買収」と「返還経費」の3億7500万ドルのうち、日本の国会を通せるのは3億ドルという合意となった。

7500万ドルが別枠で隠された。このうちの6500万ドルが、基地返還後5年間の「基地施設改善費」という名目で予算化され、その5年間が経過した後、1978年度から公式に在日米軍駐留費として予算計上されるようになった「思いやり予算」である。

「密約」がなかったものとしたのでは、この火事場泥棒のようなアメリカの仕業も歴史に消されてしまう。専門家委員会にはぜひ、まず「密約の中身」を明らかにすることをしていただきたい。その上で、鳩山総理には、この「密約」の無効を政府として宣言していただきたい。
そして、アメリカがどさくさまぎれに奪って行った莫大な国民の資産について返還を求めるべきである。アメリカは返さないかもしれない。しかし騙して奪った金を返さないようなものに対して、今後も「思いやり予算」などという「泥棒に追い銭」のようなことはすべきではないということが誰の目にもはっきりするだろう。

そのことは、普天間基地移設問題とも深く絡んでいる。アメリカは思いやり予算の枠組みでグアムへの海兵隊移転の費用も、それどころかグアムでの維持費まで要求している。それが「抑止力」の維持だと!
オバマのアメリカとなっても、依然、日本を骨までしゃぶり尽くしたいらしい。

「密約」をなかったものとすることは、こうした理不尽を受け入れてきた自民党外交を、民主党が「完結させる」(歴史上の日本側請求権を消滅させる)ことに他ならないのではないか。しっかりと歴史に目を向けてもらいたい。




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