磯輪日記

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『柚子の花咲く』

2014年07月30日 22時01分25秒 | こんな本読みました

『蜩ノ記』に続く葉室麟さんの作品です。


アマゾンの書籍紹介欄にはこんな風に記されています:

 少年時代に梶与五郎の薫陶を受けた筒井恭平は、与五郎が
 隣藩で殺害された事実を知り、真実を突き止めるため
 鵜ノ島藩に潜入するが――。
 人を愛すること、人が成長するということなど、人間に
 とって大事なものを教えてくれる感動の長編時代小説。


この本は、時代小説ですが、推理小説でもあるという体裁です。

しかし恩師殺害の謎を追っていく中で、主人公がそれまで知らなかった
人と人との関わり、交わりを知り、そこから人間として大事なものを
学んでいくプロセスがこの本のテーマだと思いました。

そして最後の感動的な場面へと。
人間の価値、器の大小を知ることができます。


幼い頃、主人公 恭平が師である与五郎から諭された言葉:

 「・・・それは相手を身分によって見ておるからだ。
  身分などは生まれ合わせにすぎぬ。生まれ合わせに
  よって、相手に頭を下げたり、居丈高になるなどと、
  おのれを変えるのは恥ずべきことだ。」


与五郎の足跡を辿って行く中で、恭平は気づきました。

 「われらに、生きていくために何を大切にしなければ
  ならないかを教えてくださいました。それはひとの
  心だ、と先生はお教えになったのです。私はそう
  思います」


そして物語の中で何度も登場し、この本のタイトルにもなり、主題でも
ある

 「桃栗三年、柿八年、柚子は九年で花が咲く」

という与五郎の口癖だった言葉。


最後の感動的な場面を読み終えた時、その言葉の意味がしっかりと
伝わってきました。


葉室麟。大好きです。
もう次の作品を読み始めました。



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