武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

177. 故障 Enguiço

2020-10-01 | 独言(ひとりごと)

 このところ、我が家で家庭用電気器具の故障が相次いでいる。同時期に寿命(対応年数)を迎えたのかもしれない。

エスピシェル岬の断崖沖を行く小型漁船(2020年9月28日撮影)

 電熱天火が故障した。これは確か3台目で3台目が一番長く使った。焼き魚にも使うし、ピッザやドリアも焼く。そして朝食のトーストも焼く。焼き魚は台所の窓際にその天火専用の台を作っていてその上に電熱天火を乗せ焼き魚をする。天火だから元々煙は出ないのだが、焼き魚の匂いが外に出て部屋の中に残らない。そして美味しく焼ける。

 昔はベランダで炭火を熾し焼き魚をしていたが消防署通達で禁止になったとかで、よそ様もベランダではやらなくなった。炭火を熾すのも面倒になっていたし、電熱天火でも充分だと思っていたが、それが故障した。

 ピッザを買い置きしているので早速電熱天火を買いに行かなければならない。4~5軒の家電量販店を回ったが同様の物は何処にも売られていなかった。もう流行らない電気器具なのだ。仕方がないのでミニオーヴンを買うことにした。ミニオーヴンといっても結構な大きさでしかも大中小の3種類が売られていた。一番小さいのだとピッザが入らないかもと思い中間を買った。ピッザは旨く焼くことが出来た。焼き魚はどうした物か焼き目が付かないし、どうも蒸焼き風になってしまってもう一つ旨くない。朝食のトーストも時間ばかりがかかって下手をすると乾パン風になってしまう。第一電気を食いそうだ。

 ハンドミキサーが故障した。以前には良く味噌を手作りしていて大豆を潰すのに使った。最近はマヨネーズを作る時に使うくらいだが、ニクロム線が焼ける匂いがし、煙が出て使えなくなってしまった。ガラス瓶に全ての材料を入れてからハンドミキサーを使えば一瞬にマヨネーズが出来上がる。ガラス瓶のままだから移し替える必要もなく便利に使っていた。買い替えようかとも思ってはいるが、マヨネーズを作ることくらいにしか使わないので普通のミキサーで作っている。でも移し替えるのが大変だ。

 電気掃除機が故障した。最近はコンピューター制御の『ルンバ』などが出回っていて、従来の掃除機を買う気にもなれない、と言ってもルンバはどうも我が家では馴染まないような気もして我が家に馴染むようなコンピューター制御掃除機が売り出されれば買いたいと思うがなかなか出そうもない。今はハンドクリーナーでやっているが吸い込みは悪い。そして従来の箒と塵取りで仕方なくやっている。

 電気ドライヤーが故障した。これもニクロム線が焦げる匂いがし、壊れてしまった。僕はドライヤーを使ったこともないし、使う必要もないが、MUZは必要なのだ。髪を洗った後は陽当たりの良い窓辺でうちわを使っている。

エスピシェル岬で獲物を協力して運ぶ4頭の蟻たち(2020年9月28日撮影)

 我が家にある電気器具の殆どは買い替えている。2台目、3台目というのもある。パリに住む日本人商社マンの知人は「ヨーロッパの電気器具は1年が寿命ですよ」などと言っておられた。1年ということはないにしても日本製より対応年数は短くて故障してしまう様な気もする。掃除機も何台か買ったし、洗濯機も2台目だが、これは案外と長持ちしている。テレビも地デジになったこともあるが何台目かだ。ミキサーも2台目。冷蔵庫も2台目。扇風機も2台目。プリンターも2台目。電子レンジも買ったが日本の物に比べるとあまり使い勝手が良くなく殆ど使っていない。正確には電気器具ではないかも知れないが、ガスコンロも2台目。

 ガス湯沸かし器が故障した。着火はし、お湯にはなるが、どんどん冷めて殆どぬるま湯になってしまい、入浴が出来ない。煙突に煤がたまってしまって燃焼が悪くなっているのかと思い、ダクトを外してみたが煤はたまっていない。ガス湯沸かし器自体一度も買い替えたことがない古いもので寿命かもしれない。

 電気器具は『オウシャン』が品数も揃っているし、一番安い様な気もする。その中でも一番安いもので充分だと思っていたが、店員は高い物を勧める。勧められれば何時もそちらを選んでしまう。取り付け費用込みで500ユーロ余り。製品は自分で持ち帰らなければならない。「取り付け日前には電話をしてから行きます。」とのことであったがこのコロナ禍の非常事態に来てくれるだろうか?と不安であった。

 家に帰ると、ガス会社からガス使用料の銀行口座自動引き落とし明細書DMが届いていた。開けてみると、何と、ガス湯沸かし器のキャンペーンというチラシが同封されていた。製品は『オウシャン』で見た物とは違ってはいたが、ほぼ同額。しかも使っているガス会社の製品だからガスには相うことは間違いがないし、と思い。『オウシャン』から買って帰ったガス湯沸かし器を再びクルマに載せ返却することにした。こういった量販店での返却は簡単である。書類作成に少々の時間はかかったが、係の人の愛想は良く気持ちよく返却出来たが、何と、10ユーロ札での返金で嵩張ってしまい、係の人も苦笑いであった。

 以前にも行ったことのあるガス会社の事務所はもぬけの殻であった。引っ越しをしている様で封筒の住所をグーグルマップで調べてみたら、街の反対側に移っていた。封筒には営業時間も載っていたので、その時間帯に着いたが閉まっていて短縮時間の張り紙があった。コロナ禍で営業時間短縮なのである。次の日に再びその短縮時間帯に着いたが、又もや閉まっていた。金曜日であったが、隣のドアで工事人が出入りしていたので聞いてみると「月曜日、月曜日」と素っ気ない。

 月曜日には開いていた。受付事務所は狭く、順番は表で待たなければならない。順番が来て、キャンペーンのガス湯沸かし器のことを言ったら喜んで対応してくれた。やはりお勧めは一番安いのではなく取り付け費用込みで500ユーロ余りがする。お勧めだから仕方なくそれに決めたが、書類作成に時間がかかる。その間、表では長蛇の列である。我が家ではガス使用料は銀行振り込みにしているが、その都度、事務所に支払いに来る人が多いのだ。書類も書き終わって「工事は明後日午後14:00から17:30の間でよろしいですか」ということになった。これなら具体的で安心だ。

 次の日、工事人らしき人から電話があった。「明日、午後からではなく11:00から取り付け工事をしたい。」と言うものであった。そして次の日は10:30に玄関のベルが鳴った。

 工事人2人でやってきて瞬く間11:00に取り付け完了である。お湯が出た。殆どなにも説明がない中、サインをさせられ慌ただしく2人は帰ってしまった。次の現場も午前中に済ませたいのだろう。古い湯沸かし器は台所の床に残されたままである。新しい湯沸かし器の段ボール箱の中に古い油まみれの湯沸かし器を入れゴミ捨て場まで自分で捨てに行った。途中、マリアさんと話し込んでいた、近所の若い男に繋がれていた小さな犬にけたたましく吠えられてしまった。

 その日は充分なお湯で入浴が出来た。以前の古いのとは違って元火というものがない。コックを捻るだけでお湯が出てくる。不安に思い、ガス湯沸かし器のガスの元栓を閉め、電源を抜いた。それをする必要はないのだろうけれど、それがいけなかったのだ。初期化してしまったのだろう。次の日はガスの元栓を戻し、電源を入れても、何度してもいろいろ試してみても着火しなくてお湯にはならなかった。仕方なく3つの鍋でお湯を沸かし入浴した。早速、故障かと思ったが、又もや金曜日である。土日は休みで月曜日まで待たなければならない。

 故障という一字は憂鬱の何物でもない。電気器具ではないコーヒーカップや御飯茶碗それに包丁まな板などはもう30年も使っているというのに。

 土曜日の朝、コーヒータイムにMUZがガス湯沸かし器の説明書を読み始めた。図解はあまりなく全てポルトガル語である。そんな中で『7秒間の長押し』という文言を見つけた。やってみると見事着火した。月曜日まで待たなくて、工事人に来て貰わなくて良かった。

 安心してコーヒーを飲んでから運動がてらエスピシェル岬まで野の花観察に行くことにした。途中コトビアの『アルディ』で昼食用のパンを調達である。クルマのドア鍵を閉めようと思ったが閉まらない。何度しても閉まらない。仕方がないので中から閉めて助手席から出て助手席のドアを閉めた。カーボ・エスピシェルに着いても同様にしなければならない。ドアキーの故障だ。又、月曜日には修理工場に行かなければならない。

 帰りにはアゼイタォンの『リドゥル』で買い物をした。今度はチェンジギアの頭のところの一部がぽろっとこぼれて床に落ちた。そういえば以前に欠けて瞬間接着剤で貼り付けていたところが再び外れたのだ。

 ドアの鍵は10回ほど試みてみるとカシャと軽い音がして鍵がかかった。家に帰ってからは2~3回でかかった。これはコツが掴めるのかも知れない。コツが掴めたら修理工場へ行かなくて済む。チェンジギアの頭の部分は再び糊で貼り付けるしかない。VIT

 

『端布キャンバス』 エッセイもくじ へ

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする