「首相不在」で外交成果が挙がるという皮肉
米ワシントンで6月21日に行われた外務・防衛担当閣僚
による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が示した共同発表
は、「外交敗北」の連続だった民主党政権にしてはなかなかの
出来映えだった。
軍事力を伴った海洋活動を活発化させる中国への危機感を
踏まえ、日米両国と価値観を共有するアジア太平洋各国と連携
した対中包囲網の構築を打ち出したからだ。
自民党の国会議員も「対中戦略でかなり踏み込んだ点は評価
できる」と舌を巻く内容だが、菅直人首相が日米同盟のさらなる
深化を打ち出した今回の発表で主導権を発揮した形成はなく、
「首相が口を出さなかったからうまくいった」との皮肉さえ
聞こえてくる。
「より深化し、拡大する日米同盟に向けて 50年間の
パートナーシップの基盤の上に」と題した共同発表のメーンは、
6年ぶりに策定した共通戦略目標にある。
日米が共通で取り組む24項目の課題を列挙し、その中の
1つに「地域の安全保障環境を不安定にし得る軍事上の能力を
追求・獲得しないよう促す」との項目を盛り込んだ。
普通に読むと何を対象にした記述なのか不明な文章だが、
外務省筋は「中国のことを書いた項目だ」と明言する。
共同発表では、宇宙やサイバー空間の脅威への対処や、
「航行の自由を保護し、安全で確実なシーレーンを確保」
とも記した。これも中国への牽制であることは自明の理だ。
さらに注目すべきは、地域の不安定要因となっている中国を
念頭に、以前から安全保障上のつながりが強い日米豪、日米韓
との枠組みに「日米印」の連携強化を加えた点だ。
日米両国と東南アジア諸国連合(ASEAN)との安全保障面
での協力強化も明記した。南シナ海での海洋権益確保のために
軍艦まで派遣する野放図な中国の振る舞いに対し、周辺国が
結束して対処する姿勢を鮮明にしたわけだ。
この話は、どこかで聞いたことがある。平成18年の
安倍晋三政権下で麻生太郎外相が提唱した「価値観外交」であり、
「自由と繁栄の弧」構想そっくりなのだ。
バルト諸国からインド亜大陸や東南アジアを通って東は
北東アジアまで弧を描くようにして民主主義、自由、人権、
法の支配、市場経済といった普遍的な価値を共有する国々との
連携を深める構想で、安倍内閣の重要な外交方針だった。
用語こそ使っていないが、中身は共同発表の趣旨とほぼ同じ
で、安倍首相退陣とともに消えた構想が4年ぶりに
復活したことになる
2プラス2では、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の
移設先を自公政権時代に合意していた同県名護市辺野古に
2本の滑走路を配置したV字形とすることでも正式に合意
したが、回帰は普天間移設だけではなかった。
復活に向けて動いたのが、自公政権下で構想に携わった
外務省幹部たちだった。
共同発表に向けた作業が始まったのは鳩山政権だった
昨年1月。普天間問題の混迷に焦点があたり、外務官僚には
苦難の時代だった。
鳩山政権は移設先を「少なくとも県外」と訴え、実現が
極めて困難な公約を掲げて誕生した。
いたずらに時間を費やしただけでなく、沖縄県側の希望は
失望に変わって態度を硬直化させ、代償は今も尾を引く。
政治主導の暴走を横目に、外務官僚はグローバルな観点
から着々と「自由と繁栄の弧」構想を進め、ようやく日米間
での明文化に成功した。
共同発表の内容は、仮に日本で政権交代が起きても
次の政権に引き継がれるのが原則だ。
それだけ重い合意事項といえる。
菅首相は、鳩山内閣の副総理として普天間問題の混迷を
苦々しく見ていた。その反動から、首相就任後は一貫して
日米同盟重視路線を強調してきた。
就任前から「外交は苦手」と公言してきたこともあり、
外務官僚が自由に活動できる素地はあった。
だが、どんなに立派な目標を定めても、実行しなければ
意味がない。米国は6月25日のハワイでの米中高官協議で、
中国の海洋活動について「緊張の沈静化を求める」と
さっそく言及した。
翻って菅政権はどうか。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船
衝突事件やロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問
といった攻勢にふがいない醜態をさらし、共同発表の実践
は汚名返上の好機だが、すでに退陣を表明した菅首相に
その資格があるはずもない。
それでも松本剛明外相は3日、中国に向けて出発する。
尖閣事件以来初めての閣僚の中国訪問だ。
4日に北京で行われる日中外相会談で2プラス2の成果を
どこまで相手に突きつけることができるか。
アジアの各国も注目している。
2プラス2が政治主導の形骸化が奏功した皮肉な例だと
すれば、東日本大震災の政治主導不在は人災といえるだろう。
6月のある日、初めて岩手、宮城両県の三陸沿岸地域を訪れ
、その思いをさらに強くした。
強烈な異臭とともにビルの5階近くまで積まれたがれきの山
もあった。機材がフル回転し、がれき撤去という復興への槌音
がさぞ響いているのだろうと思いきや、沿岸の被災地での作業
はまばらで、かつてにぎわいをいみせていただろう市街地の
跡地は不思議な静寂に包まれていた。
菅首相は「退陣表明」後の6月9日の国会答弁で
「がれき処理は8月中に生活地域から搬出することを目標に
頑張っている」と述べた。
まさか延命のためにわざとがれき処理を遅らせている
わけでもないだろうが、このままでは半永久的に菅首相存続
なのかとも勘ぐりたくなる。
これだけ大規模な災害では、さすがの官僚集団もまとめる
リーダーがいなければ能力を発揮できない。
こちらは首相不在という政治主導の喪失の影響は大きい
と痛感した。
(4日産経記事より抜粋引用させていただきました)
>>で、【自由と繁栄の弧】とは?
拡がる日本外交の地平 外務大臣 麻生太郎
日本国際問題研究所セミナー講演(外務省HPへリンク)
(前・中略)…いかがでしょう、麻生太郎がまた大風呂敷を、
と思われたとしたら、2つ申し上げて締め括りとさせていただきます。
皆さん、大風呂敷とおっしゃいますが、
ビジョンとはたいがいいつも、大風呂敷であります。
そして日本外交には、ビジョンが必要であります。
なぜとなれば、これが第二の点ですが、日本外交のビジョン
は、われわれ日本の善男善女にとってのビジョンであります。
日本人ひとりひとり、誇りと尊厳をかけるに足るビジョンで
あるのであります。
外交とは、国民に、地に足が着き、身の丈に合った、
穏やかな自尊心を植えつける仕事でもあります。
外務大臣として、日本人を元気にし、自信をもたせる外交を
心がけ、そのための言葉を幾万言なりとも語ってまいりたい。
そう申し上げて、おしまいにさせていただきます。(以上)
>>そう。言葉で国家のビジョン、方向性を明確にし、
それに向け、国家、国民を引っ張っていく。…それが総理、
政府閣僚の仕事ではないですか?
…最早、前の(鳩山)政権から、そのビジョンを無くし、
日本という船はフラフラの漂流状態。
一刻も早く、国民に、明快なビジョンを示せる政府、総理大臣
に交代していただきたいものです。
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米ワシントンで6月21日に行われた外務・防衛担当閣僚
による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が示した共同発表
は、「外交敗北」の連続だった民主党政権にしてはなかなかの
出来映えだった。
軍事力を伴った海洋活動を活発化させる中国への危機感を
踏まえ、日米両国と価値観を共有するアジア太平洋各国と連携
した対中包囲網の構築を打ち出したからだ。
自民党の国会議員も「対中戦略でかなり踏み込んだ点は評価
できる」と舌を巻く内容だが、菅直人首相が日米同盟のさらなる
深化を打ち出した今回の発表で主導権を発揮した形成はなく、
「首相が口を出さなかったからうまくいった」との皮肉さえ
聞こえてくる。
「より深化し、拡大する日米同盟に向けて 50年間の
パートナーシップの基盤の上に」と題した共同発表のメーンは、
6年ぶりに策定した共通戦略目標にある。
日米が共通で取り組む24項目の課題を列挙し、その中の
1つに「地域の安全保障環境を不安定にし得る軍事上の能力を
追求・獲得しないよう促す」との項目を盛り込んだ。
普通に読むと何を対象にした記述なのか不明な文章だが、
外務省筋は「中国のことを書いた項目だ」と明言する。
共同発表では、宇宙やサイバー空間の脅威への対処や、
「航行の自由を保護し、安全で確実なシーレーンを確保」
とも記した。これも中国への牽制であることは自明の理だ。
さらに注目すべきは、地域の不安定要因となっている中国を
念頭に、以前から安全保障上のつながりが強い日米豪、日米韓
との枠組みに「日米印」の連携強化を加えた点だ。
日米両国と東南アジア諸国連合(ASEAN)との安全保障面
での協力強化も明記した。南シナ海での海洋権益確保のために
軍艦まで派遣する野放図な中国の振る舞いに対し、周辺国が
結束して対処する姿勢を鮮明にしたわけだ。
この話は、どこかで聞いたことがある。平成18年の
安倍晋三政権下で麻生太郎外相が提唱した「価値観外交」であり、
「自由と繁栄の弧」構想そっくりなのだ。
バルト諸国からインド亜大陸や東南アジアを通って東は
北東アジアまで弧を描くようにして民主主義、自由、人権、
法の支配、市場経済といった普遍的な価値を共有する国々との
連携を深める構想で、安倍内閣の重要な外交方針だった。
用語こそ使っていないが、中身は共同発表の趣旨とほぼ同じ
で、安倍首相退陣とともに消えた構想が4年ぶりに
復活したことになる
2プラス2では、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の
移設先を自公政権時代に合意していた同県名護市辺野古に
2本の滑走路を配置したV字形とすることでも正式に合意
したが、回帰は普天間移設だけではなかった。
復活に向けて動いたのが、自公政権下で構想に携わった
外務省幹部たちだった。
共同発表に向けた作業が始まったのは鳩山政権だった
昨年1月。普天間問題の混迷に焦点があたり、外務官僚には
苦難の時代だった。
鳩山政権は移設先を「少なくとも県外」と訴え、実現が
極めて困難な公約を掲げて誕生した。
いたずらに時間を費やしただけでなく、沖縄県側の希望は
失望に変わって態度を硬直化させ、代償は今も尾を引く。
政治主導の暴走を横目に、外務官僚はグローバルな観点
から着々と「自由と繁栄の弧」構想を進め、ようやく日米間
での明文化に成功した。
共同発表の内容は、仮に日本で政権交代が起きても
次の政権に引き継がれるのが原則だ。
それだけ重い合意事項といえる。
菅首相は、鳩山内閣の副総理として普天間問題の混迷を
苦々しく見ていた。その反動から、首相就任後は一貫して
日米同盟重視路線を強調してきた。
就任前から「外交は苦手」と公言してきたこともあり、
外務官僚が自由に活動できる素地はあった。
だが、どんなに立派な目標を定めても、実行しなければ
意味がない。米国は6月25日のハワイでの米中高官協議で、
中国の海洋活動について「緊張の沈静化を求める」と
さっそく言及した。
翻って菅政権はどうか。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船
衝突事件やロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問
といった攻勢にふがいない醜態をさらし、共同発表の実践
は汚名返上の好機だが、すでに退陣を表明した菅首相に
その資格があるはずもない。
それでも松本剛明外相は3日、中国に向けて出発する。
尖閣事件以来初めての閣僚の中国訪問だ。
4日に北京で行われる日中外相会談で2プラス2の成果を
どこまで相手に突きつけることができるか。
アジアの各国も注目している。
2プラス2が政治主導の形骸化が奏功した皮肉な例だと
すれば、東日本大震災の政治主導不在は人災といえるだろう。
6月のある日、初めて岩手、宮城両県の三陸沿岸地域を訪れ
、その思いをさらに強くした。
強烈な異臭とともにビルの5階近くまで積まれたがれきの山
もあった。機材がフル回転し、がれき撤去という復興への槌音
がさぞ響いているのだろうと思いきや、沿岸の被災地での作業
はまばらで、かつてにぎわいをいみせていただろう市街地の
跡地は不思議な静寂に包まれていた。
菅首相は「退陣表明」後の6月9日の国会答弁で
「がれき処理は8月中に生活地域から搬出することを目標に
頑張っている」と述べた。
まさか延命のためにわざとがれき処理を遅らせている
わけでもないだろうが、このままでは半永久的に菅首相存続
なのかとも勘ぐりたくなる。
これだけ大規模な災害では、さすがの官僚集団もまとめる
リーダーがいなければ能力を発揮できない。
こちらは首相不在という政治主導の喪失の影響は大きい
と痛感した。
(4日産経記事より抜粋引用させていただきました)
>>で、【自由と繁栄の弧】とは?
拡がる日本外交の地平 外務大臣 麻生太郎
日本国際問題研究所セミナー講演(外務省HPへリンク)
(前・中略)…いかがでしょう、麻生太郎がまた大風呂敷を、
と思われたとしたら、2つ申し上げて締め括りとさせていただきます。
皆さん、大風呂敷とおっしゃいますが、
ビジョンとはたいがいいつも、大風呂敷であります。
そして日本外交には、ビジョンが必要であります。
なぜとなれば、これが第二の点ですが、日本外交のビジョン
は、われわれ日本の善男善女にとってのビジョンであります。
日本人ひとりひとり、誇りと尊厳をかけるに足るビジョンで
あるのであります。
外交とは、国民に、地に足が着き、身の丈に合った、
穏やかな自尊心を植えつける仕事でもあります。
外務大臣として、日本人を元気にし、自信をもたせる外交を
心がけ、そのための言葉を幾万言なりとも語ってまいりたい。
そう申し上げて、おしまいにさせていただきます。(以上)
>>そう。言葉で国家のビジョン、方向性を明確にし、
それに向け、国家、国民を引っ張っていく。…それが総理、
政府閣僚の仕事ではないですか?
…最早、前の(鳩山)政権から、そのビジョンを無くし、
日本という船はフラフラの漂流状態。
一刻も早く、国民に、明快なビジョンを示せる政府、総理大臣
に交代していただきたいものです。
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