現代版徒然草素描

勝手気ままに感じたままを綴ってみましょう。

オペレーションリサーチ

2015-09-12 16:56:29 | 情報行動科学
学の苦悩
学の顔が一瞬にして青ざめた。「一体、長官はどうしろというのだ。」自問を繰り返すもののこれといってよい明案があるわけではない。「いつも課題を急に突きつけてきて其れを解決しろと言ったってそう簡単なことではないことぐらいわかりそうなものだが、」と思ってみるが、自分のおかれた立場がそうさせていると思っている。
時代の最先端を自認しているジャンボが事もあろう音信不通でしかもハイジャックではないということは一体何がどうなればそういう状況になるのか頭の中で想像してみるもののどうにも思い当たることがないのだ。「エンジントラブルでも起したというのか。」「其れだったら既に墜落しているはずであるが、」「長官は墜落したとは言っていない。」「機体のどこかに異常をきたしているということか。」「考えられる事は飛行コースを著しくそれているということだが、安定飛行はジャイロスコープによってそれるはずはないのだが、どうすればそのようなことが起こるのだ。」「現在でも、軍事上の秘密になっていると思われる操作をするにしても誘導する手立てがないではないか。」確かなことはいえないが、この実験の犠牲になったと思われる航空機の事故が二件程おきている。調べようにもその手立てが無いし、簡単に表に出てくるような情報でもなさそうである。学にしてもそれが遠隔操作できるのかは皆目見当がつかないのである。
一転を凝視しながら学はありとあらゆる可能性を想定してみるのだが、これだということが思い浮かばないのである。
あんまり怖い顔をしていたのか。「お客さん、一体どうされました。」タクシードライバーが聞いてきた。多分、彼には何のことだかわからないが学の深く考えていることが容易ならない自体であることだけは長年客商売をしてきた経験から推測できるのだろう。
かといって、先ほど彼女と別れたときは学もニコニコしながら手を振っていたが、乗車してまもなく電話の内容こそわからないが、携帯を切ったとたんに険しい顔つきに変化した学の状態を見てそんなことを言い出したのだ。
「イヤ、なんでもありません。」そう答えたものの、学にとっては大変な状況である。「会社の仕事上のことですか。」またも運転士が聞いてくる。学の事をどこかの会社員だと思っているらしい。「いや、重大な事故がね。」といいかけてまた考え込んでしまった。
そんな時、学の脳裏にあることが思い浮かんだ、それはもう70年以上も前に彼の曾祖父が経験した忌まわしい過去の記憶である。第2次世界大戦のミッドウェー海戦の空母「飛龍」に乗っていた山口多聞こそかれの曽祖父なのだ。
学は祖母の菊枝から曽祖父の話は耳にたこが出来るくらい聞かされていたので、かの海戦がミスの連続で敗れたことを十分知っていたのだ。
学は早くにお父さんをなくしているので、お母さんはもっぱら仕事に専念して家計を支え、家のことや学の面倒は祖母が担っていたといえる。その祖母も学が大学を卒業すると同時に帰らぬ人になってしまっていた。そういう意味では学はお婆ちゃん子であったといえる。しかし、彼の脳裏には祖母が真剣に学に愛情を注いでくれた幾つものことが鮮明に蘇ってくるのである。
その1つが曽祖父の事であり、ミッドウェー海戦の事である。情報統制の問題、通信兵のミスで敵方に情報がばれていたこと、(MFには水がない、という謀略電信に反応して本国に打電してしまったこと。他のところなら水は確保できているのだろう。)このことでこの作戦がミッドウェーとアリュウシャン作戦であるということが筒抜けとなってしまったこと、同日同時刻にアリュウシャンに正規空母1隻、軽空母1隻【2kdb、第二機動部隊】がいて違う作戦(ダッチハーバー攻略作戦)をしていたこと、【兵力集中の原則から外れている】
そして、相互の作戦の距離が恐らく船の速度から計算しても4日以上いやもっとかかるほど離れていたのである。巡洋艦利根索敵機【利根四号機】が故障して遅れて出発したこと、そのことによってこの索敵機の飛行コースの下に敵機動部隊の主力がいた。投入する基材及び人的資源を極端に落としてしまうと意外な所に落とし穴が出来てしまうという良い教訓であると考えていた。「過ちは安き所より仕る。」と言う教訓を忘れてしまっていたことになる。
スポーツの世界でよく言う様に、「打つべき手をすべて打って結果は天に任せる」という所までは行っていないのではないのかと考えさせられたときがある。【大切なことなので代わりの索敵機を用意するか(と言っても、無線封止されている。)、空母一隻分の艦載機を雷撃機に艦爆撃機と戦闘機をつけて発見可能方向に数度の角度をつけて(航空母艦を基点とした扇形に)実戦体制(爆弾又は魚雷を装着したまま)で索敵をさせる方法が摂られても良いはずであったがこの方法は作戦上も、考慮の線上にも、オペレーションの中にも浮上してこなかったと言うことなのかもしれない。
発見し次第、航空機の間で方位経度を伝達してそこに集結して攻撃を続行すればよい。ゼロ戦の速度(時速550キロくらいは出る。もっと航空燃料がよければもう50キロくらいは速く展開できていたかもしれない。戦隊を整える時間を足しても十分である。)から判断してもおよそ30分もあれば敵航空母艦を攻撃するという次の作戦に移ることができる。】
何より、航空母艦が出てこないということこそ起こりえないことであるという大前提があるにもかかわらず、爆弾装着(ミッドウェー島を攻撃する為には爆弾の方が効果はある。それでも、半分は魚雷を積んだまま待機させるというシナリオもあったはずである。)を命令することが大問題である。希望的な観測、ミッドウェーを占領してからでしか敵の航空母艦は出てこないだろうと判断していたところがある。作戦を追行する前になにが優先されるかという価値の体系化が出来ていなければならないということである。】【実戦形式の索敵に飛び立った一隻の航空母艦は敵の攻撃範囲を離脱して、とは言うものの軽巡洋艦一隻と駆逐艦二隻を従えて主力部隊(ここに戦艦大和、長門、陸奥以下の主力部隊が500キロ以上も後方にいた。この距離にも問題がある。当時の大型低速戦艦の速度18~20ノットで、(ノットは地球の経度1度の長さを示している。)「1852メートル」に18~20ノット数をかけたものがその船の時速となる。それで彼岸の距離を割ると何時間かかるかわかる、単純に計算してもおよそ16時間以上かかってしまう距離である。本当は、一昼夜かかる距離にいた。)の方向へ退避する行動が取れたはずである。】【ゼロ戦の航続距離は長かったので作戦を終了した飛行機を回収して、補給、整備、場合によってパイロットの交代をすることで次の作戦にスムースに移れる。】どの艦の飛行機でも飛んできたものから回収すればよいではないか。【当時、飛行機の所属はその航空母艦に帰属していた。そのために、戦力ダウンを回復するのに最低でも2~3が月はかかっていたようである。スペアーという考え方はとられていなかったものと思われる。】敵の航空機の攻撃範囲の外にいるので自艦の位置は無線で発信し続けることが可能になる。
島を駁撃に行った飛行機でも良いではないか。敵の飛行機の攻撃範囲を脱していれば安心して回収と次の作業がスムースにいく、「何よりも二隻の航空母艦を戦隊で護衛することで二つの部隊とすれば、空母と島を攻撃するものにわれられるではないか。」「空母が発見できなくても見つけ次第直ちに作戦が展開できるではないか。」(兵力集中の原則には外れるが、目標は常に一つで迷いが生じてこない。)「航空母艦同士は無線封止が敷かれているのだから連絡をとることは出来ない。」何処で勉強したのか、あるいは誰かに教わったのか定かではないがよく知っていた。【祖母の言うことはもっと漠然としたものであったが、学の勉強したことを付け加えてわかりやすいように脚色している。】後に学はそのことを勉強して祖母の言っていたことが事実であることを確認している。
もちろん彼の家はそんなに裕福とはいえず、学業は優秀なのだが高校までしか出せなかったので学は防衛大学の道を選んだのである。そして、オペレーション・リサーチを専門として勉強してきた。
「長官、私が官邸に到着するまでに座間基地から603便にスクランブルをかけてください。」学は仕事人の顔になっていた。「座間基地のファルコンを5分以内に180度の方向に6機行きと帰りで30度の範囲を有視界でスクランブルしてください。」と告げた。長官は「よしわかった。そのように手配しておく、皆がまっている早く来てくれ。」と言った。差迫った状況に身をおいているという雰囲気が切実に伝わってきた。603便と交信が取れない以上この選択が最善の方法である。
もちろんアメリカの北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)に検索をお願いすれば30分以内にその所在かわかるのだが、学はそのことを口に出すことはなかった。何故なら、603便の居場所が分かった所で時々刻々と移動し続けているだけではない。ジャンボ機と通信ができなければならない事は容易に理解できていた。「スクランブル機に横に並んでもらい手信号か携帯電話をうまく使うことできれば、こちらの作戦も伝達できるだろう。」「こちらの考えをスクランブル機に伝えジャンボと中継をしてもらおう。」「都合よくファルコンは二人乗りの構造に成っているではないか。」原始的な方法ではあるが確かな索敵の方法を採用することとした。
彼が過去に戦史及び作戦の研究をしていた頃、その教官の野矢が口をすっぱくしていっていた、「ミッドウェー海戦はあくまでも作戦ミスである。」「オペレーションをシステム化ししていなかったことにあるのではないかと考えられる。」「簡単な机上作戦と言う事をやってはいたが、珊瑚海の海戦においても軽空母一隻は失っているではないか、その上、二隻(瑞鶴,翔鶴)は修理しなければならなくなっているというのに、」(当時日本では最適な作戦分析という考え方は無かったのかもしれない。ただ、上官の命を追行すればよいという組織形態に成っていたと思われる。)
「既に大和にはレーダーが装備されていた可能性がある。」というのだ。その点はどの文献にも載っていないので確認しょうがない。だが、開戦前にアメリカの企業から売込みがあったということはどこかの文献で眼にした記憶がある。ゼミの仲間が言っていたような気がするが、しっかり確認するということを怠ってしまった。しかし、大分後になって「防人の歌」を読んでいると主力部隊の何れかの大型低速戦艦(参加していたのは大和、長門,陸奥)が敵艦載機と思われる機影を確認していると書かれているが、大和であろう。想像の域を出ないのだが、敵の艦載機が主力部隊のところまで到達できる能力はないはずである。
当時、アメリカの戦闘機はせいぜい400キロの行動半径しかなかったはずである。ミッドウェーの大型機ということもないはずである。ということは、レーダーがついていたといえなくもない。電探と称しているものはレーダーではなかったのだろうか。この事実も南雲部隊に転送されていないことになる。
大和以下の低速戦艦主力(主力部隊)出撃のために【連合艦隊司令長官山本五十六が出陣しているので】無線封止をしかざるをえなかったといえる。よく考えていただきたい。敵の航空母艦の艦載機並びにミッドウェーの大型機の攻撃範囲の外に居るというのに無線封止する必要はないのである【自分たちだけ無線発信して空母機動部隊が傍受するだけでも情報は伝わるではないか。放送と同じことになるが、・・・。】。
いずれにせよ、レーダーのメリットを認識していなかったといえるし、その使い方を周知していなかったのではないか。(レーダーが無くても敵の空母を呼び出す符号を傍受している。第一機動部隊には転送されていないのだ。戦艦のアンテナと空母のアンテナは高さが違うし、作戦中、空母は艦載機の障害にならないようにアンテナを海面と平行に倒している。空母に乗ったことのない通信兵とその上官が【第一機動部隊には優秀な通信司令がいる。】という先入観でもみ消してしまったかもしれない。)
先のことと、以下のことは人間ならば時たま起す間違いである。双眼鏡というよいものが完成してしまうと次の開発がしばらくの間ストップしてしまうということである。慣れといえばよいのか、習慣を変えるということに対する心理的な抵抗がかかるのだ。新しい発想や概念をしばらくの間拒否してしまうということがしばしば起こるものである。
会社などにおいても、生産とコストと研究開発の間でしばらくの葛藤が繰り返されるといえるのだ。又、学は「日本人はハード(モノづくり)の面は非常に優秀だけれど、ソフトは(その利用の仕方)は不得手だ。」と言っている人の言葉を思い出していた。状況の中で何を選択して、或いは組み合わせることでどのような結果が期待できるかという事はなかなか解からなかったのかも知れないと思っていた(最終成果がイメージできていないのだ。)。イメージしてみるという感性の問題であると同時にオペレーション的な発想である。
最近は各自治体や大学の中にコージネーターと言う仕事に携わっている人たちがいる.彼らに要求される資質はこのことではないかと思われる。何も戦争の中だけではない。日常的な生活においてもそういうことに良く突き当たる事がある。
「戦略的に見てもミッドウーはたいした意味のない島である。当時のミッドウェーは飛行場が小さいのと、島が珊瑚で出来ているので水が少ないし、雨が降ったとしてもすぐ沁みこんでしまうのである。」「大型機の発着には向かないし、せいぜい、B17程度の飛行機ではその航続距離から判断しても、ここからハワイ島を駁撃して折り返してくる飛行機はない。」【日本でもまだ四発のプロペラ機(飛燕)は生産されていないと思われる。】「ただ、空母ホーネットから発進したB25、16機が東京を空襲(ドーリットル空襲)して中国の作戦範囲に到達できればというアメリカの作戦によって帝都を攻撃されたというこだわりと面子をかけた作戦であったのだ。」「実際ホーネットを飛び立ったB-17中国の作戦範囲までは到達できず、日本軍の展開している地域に不時着してしまったのだ。」を思い出していた。
野矢の言うところの机上作戦、今で言うところのオペレーションリサーチの結果を自分の有利なほうに捻じ曲げてあるというのだ。それにあの作戦は「豊臣秀吉(強襲)の戦法を取らなければいけないのに、あくまでも奇襲戦法(信長)を取ったための失敗である。」【実は織田信長の桶狭間における奇襲はさまざまな情報をしっかり掌握していて、地元民に酒や肴を貢がせる振りをして、奇襲と言うに相応しいものであったかは疑問である。兵力の数だけ比較すると奇襲といえるが、旧陸軍や海軍はこのことをしっかり分析できていなかったものと考えられる。】
「自分たちの所在が知られていたとしても兵力を集中して、具体的にはアリュウシャンの作戦を組み込まずに南雲部隊に所属している空母ともう一隻で合計二隻に軽空母一隻をミッドウェー島の西側から攻撃する方法が最適で敵の空母兵力の影響を受けない位置に配置して、島の大型機【この時点でB-29は展開していない。第一ミッドウェーの飛行場ではこの飛行機は離着陸できない。】に対応しながら作戦を追行する手段が必要であった。」そして「南雲部隊【1kdb,第一機動部隊】の三隻の航空母艦(実際のミッドウェー海戦では四隻である。)はもっぱら敵の空母に対応する為に陸用爆弾を装着する必要はなく、敵の航空母艦だけに兵力を集中して作戦行動が取れたはずである。「そうすることによって南雲部隊はミッドウェーの島には何のかかわりもない作戦、具体的には敵の機動部隊にだけ対応できる作戦だけすればよいことになるではないか。」「ミッドウェーの戦闘機の攻撃範囲の外にいることが可能になるではないか。」島は別に編成された空母(アリュウシャンに行かないので南雲部隊の空母一隻少なくして)目的及び目標は一つであり迷いや混乱が起きない。こちらは爆弾を重点的に装着する。南雲部隊は艦駁撃機と雷撃機に護衛戦闘機を何機か配置して艦対戦だけを目的にしなくてはならなかったのだ。」「この時にミッドウェーの大型機に対応する為に一隻分の航空母艦には防空戦闘機を多く載せておく必要があったのだ。何だったら主力部隊に所属している軽空母を南雲機動部隊の150キロ後方まで上げておく必要があったのかもしれない。」「直衛戦闘機を自軍の航空母艦の上空に待機させて防空能力の低い空母を守る必要がある。」と力説していたことを思い出していた。
このことは、学も感じていたことである。実際、当時の航空司令官の何人かは航空母艦を複数にすることでこの課題は解決できると説明していたようだし、誰かの著書で「日本の航空母艦は防空能力が低いのではないかと心配していた。」と書いてあるのを読んだ記憶があるが思い出せずにいる。
また、「空母の配列の仕方(戦隊の組み方。)が違っている。」「特に空母は攻撃された時防空能力が低い上に4隻を同一の戦隊が囲むように配列すると相手の攻撃がたやすくなってしまうことが起きる。」と言っていた。「このことは目標にして攻撃を開始したが、防空戦闘機などに妨害されて目標がずれてもその向こうにもう一隻の空母がいると言うことになりかねない。」このことは祖父母とまったく同じ事を言っていると考えていた。「まあ、最大のミスといえば軍令部や、海軍省が戦艦ばかり作って航空母艦や飛行機を作らなかったことである。今の官僚機構の問題点はこの時代にもあったといえる。」「飛行機は消耗品だという考えはしていなかったのだ。」
この事に関してある日のことである。息抜きのために企画された懇親会の席上のことで、少々のアルコールがメンバーを饒舌にしていた矢先の出来事である。
教官の野矢が「アメリカの空母艦載機の数が合わないのだ。」と言い出した。メンバーの数人が、「先生、其れはどういうことだ。」と聞き返してきた。「戦後、50年以上たっているのに軍事上の秘密になっていることがあるのかもしれない。もう一隻航空母艦がいた可能性がある。」現に四隻の航空母艦がいたとする偵察機の報告があるが、実際は三隻しかいなかったことになっている。偵察機の重複報告と言うことなのか、中継電文のミスによるものなのかははっきりしていない。スプルーアンス、フレッチャーの実戦に関わる任務部隊のほかに飛行機の補給だけを目的とした任務部隊の存在である。
「なぜか伏せられた格好になっているが、艦載機がおよそ50数機多いのだ。ちょうど,空母一隻分に相当する。」「攻撃を終了してひき返して行って燃料や爆弾、魚雷などを装備して再度飛び立ってきたのでは時間的に辻褄が合わないことになってしまう。」刑事事件でよく目にするアリバイ(不存在証明)のような雰囲気になってきた。
その事件にかかわれるか係われないかの議論である。「島にあらかじめ艦載機を置いておいたとは考えられないだろうか。」という出す者もいた。「其れは、暗号解読から逆算しても時間的に無理だろう。」「どの空母がその役割を担ったのかはわからない。」「珊瑚海の海戦で破損して急遽修理してようやく間に合ったヨークタウンあたりが担当したのかも知れない。」と言い出すものもいたが、「ヨークタウンは任務部隊の中にいて直接戦闘にかかわっていたではないか。それ以前には修理の突貫工事をしている。」「後で伊号潜水艦によって沈没しているではないか。」と反論する。
「そうするとヨークタウンは除外しなければならないなぁ。」【サナドガは本国で修理中ということになっていたが、どこを直していたのか一切不明である。飛行甲板とエンジンさえしっかりしていればその役割は遂行できる可能性はある。海軍は長い間、レキシントンと勘違いしていたことになるし(レキシントンはサナトガ型空母である。),珊瑚海の海戦でヨークタウンを沈没させていると誤解していた節がある。】正確な情報がない以上数式に当てはめて見るわけにも行かない事柄であった。
いずれにせよ、情報公開の原則が行き渡っていたアメリカでは珊瑚海で破損したヨークタウンを徹夜で修理してミッドウーに間に合わせてきたといえる。その修理中にもかかわらず物資の積み込み作業が繰り返されたことはアメリカ側の資料やミッドウェーという映画の中で確認できている。二つの作業を同時進行させる方法の良い教訓になる。工業化の程度だけの差ではない国民の力(修理工や後方支援の体制)を結集できたといえる。彼らに火事場の力を発揮させることで目前の課題を解決しようとしたのである。実は、なぜそんなに急がなければならなかったかは日本の先遣部隊、その主力はイ号潜水艦が予定海域に展開する前にミッドウェー近海に展開していなければ航空母艦が出撃しているという情報がもれてしまうことになる。
教官の野矢が「戦艦対戦艦の戦いは真珠湾の時点から過去のものになりつつあったという時代認識に欠けていたということだな。」と言い出せば、そちらに詳しい学生は「日本の戦艦はもともと近海での海戦に対応するようにしか作られていなかったはずだが、・・・。」と言い出すものもいた。「現に真珠湾攻撃に戦艦は参加していないではないか。」実際、真珠湾を攻撃したのはミッドウーに参加した航空母艦に「瑞鶴」「翔鶴」の第5航空戦隊を加えた六隻の航空母艦である。一番搭載機数の多い二隻(両方とも73機搭載可能、飛行機や搭乗員の数が足りなかったのかもしれない。このことは、先の四隻についても同じことが言えることになる。)この作戦から外れてしまっていることになる。「状況分析というか歴史認識が欠けていたといえる。」「どんな素人が考えたって戦艦の砲身をいくら長くしても大砲はせいぜい40キロメートルぐらいの射程しかないのに、飛行機に爆弾なり魚雷をつけていけば500キロメートルぐらいは作戦半径に簡単に組み込める。」(ゼロ戦は軽く作られていて航続距離が長かった。)「この時点でまだ武蔵は完成していないはずである。その三番艦として後に航空母艦に計画変更され悲運の最後をとげた信濃はもっと後のことである。」「山本司令官の見識は間違ってはいなかったのだが、海軍省の首脳部と軍関係者がそのように考えていなかったのだ。」「場合によっては陸軍のほうが勢力的に上位を占めていて予算の振り分けが適切でなかったのかもしれない。」「もっと海軍力をつけなければならなかったが、軍縮条約や国内の状況でそうも行かなかったのだろう。」「軍縮条約をカバーする為にいろいろな工夫(砲弾の先に着色料を入れることで味方のどの艦から発射されたものか識別できるようになっていた。砲弾がある入射角ではいった時に砲弾が水面と平行に進むことで相手の艦船に命中させる精度を上げていた。水深の浅い所でも魚雷攻撃が上手くいくようにする工夫。ゼロ戦の航続距離を伸ばすこと等)をしてあるのだが、それだけではカバーできない人的な側面があったといえる。」「決定的なことは驕りになってしまったことではなかろうか。」日本国内でも多くの人々が日常会話として「次はミッドウェーだな。」とか「ミッドウェーしかなさそうだ。」言う雰囲気になってしまっていた。
続けて「第5航空戦隊の技量をしても珊瑚海の海戦でレキシントンを沈没させ、ヨークターンを撃破したので、第一、ニ航空戦隊(南雲機動部隊に所属するパイロット)は自信過剰になってしまっていたのだ。」妾の子供(第五航空戦隊)たちがあれだけの成果を挙げたのであるから技量的に自分たちは上であるという思い上がりである。ひょっとすると真珠湾攻撃の際,第5航空戦隊は出撃せずに帰ってきていることになる。第二次攻撃まではしている。空母二隻分を一回として二回出撃しているとしたらもう二隻分の艦載機は飛び立っていないことになる。でなければ、妾の子という表現にはならないと判断しているだけのことである。
学も忙しさの中から真珠湾攻撃をしっかり確認していないのだ。「考え方及び思考の半分は物体であり、後の半分は心の形ということが認識できていなかったものと思われる。」この時、学は経営コンサルタントや、実業者が本の中で言っていると同じではないかと感じていた。ハードとソフトの関係や因果律ということかもしれない。原因と結果の間に横たわる、切っても切れない法則が存在する。物にしても過去に誰かが考えたから現在形となって具現しているといえるのではなかろうかと考えていた。企業においても商品及び商品構成や販売戦略、市場調査、ベストな状態の生産ラインと部品の配置の仕方などはこの経験が生かされているのである。【その典型的な事例がトヨタ㈱のカンバン方式で採用している在庫ゼロの考え方であるといえるだろう。】
実際、学も、この時点で現有正規空母の二隻「瑞鶴」「翔鶴」が先の珊瑚海の海戦で破損して修理中であったため、ミッドウー海戦には参加できなかった。何故だか、【「瑞鶴」「翔鶴」はでてこない。】この情報もアメリカ側はつかんでいた。おそらく、先の海戦においての被害状況から判断したものと思われる。近代戦においては、情報がかなりの比率で重要になっていることの証明になる。それらを上手に組み合わせることによってさまざまな課題を解決できることになるといえる。アリュウシャンの作戦は中止してミッドウーの西側からOB支援隊【ここに第7戦隊所属の重巡洋艦4隻がいてミッドウェー島を艦砲射撃した。重巡洋艦と空母は速度の違いから一緒に行動は出来ない。作戦地点で合流するというダイアグラムを取るという方法ならば可能である。その戦術的な配置は二隻の空母は島を攻撃するものとして、軽空母は少し下がった位置、100キロから120キロ位後方から防空戦闘機だけを乗せてもっぱら二隻空母の防衛に当たる(扇形作戦)。ゼロ戦の時速から判断しても、空母を飛び立ち戦隊を整える時間を入れても20数分あれば自軍の二隻の空母の上空及びその前面に展開できる距離である。島の大型機の戦力を壊滅させた後、四隻の重巡洋艦による艦砲射撃を行うというダイアグラムが完成する。】の前に空母機動部隊【2kdb、第二機動部隊】を配置しなければならなかったと常々考えていた。
また後日、学は研究グループの仲間と当時の模型を全て作り、すべてのデーターをパソコンに記憶させ彼岸の戦力を対比してみると野矢の言っていることもまんざら嘘ではないことが判明している。ランチェスターの法則、彼岸の戦力が拮抗している場合(交換比率、E=k1/k2=1である時)には兵力を集中したほうが、有利に働くという原理に当てはめてみても、また、その2次法則にしても、ミッドウェーの島の兵力をどのくらいに見積もってもかの戦いは、勝っていなければならない作戦であったはずだがという疑問が今でも消えずにいる。
もっと簡単に考えてみると、野球ではよほどのミスが起きない限りヒットの本数の多いほうが勝つことになっている。極時たま、この法則が通用しない現象が起きるが、もっと極端なことを言い出せばヒットゼロでも勝つことがある。いずれの場合でも確率から判断すればそんなには多くない。あっても、一年に数十試合しかないはずである。其れをもっと単純な数式に当てはめれば、10本のヒットを打ったチームと5本しか打てなかったチームではルートの中に10-5を入れ、各々を2乗した差の平方根を開いた確率で勝利するということになる。具体的には100-25=75となり、その平方根を開いた確率でヒットを多く売ったチームが勝利するということになる。
かの戦いを強襲としてこちらの存在をさらけ出しても、こちらの目的が筒抜けになっていても、任務を追行する作戦でなければならなかったのである。それにしても、各々の部隊の関連性が作戦追行のするためのベストな配置にはなっていないことが手に取るようにわかってしまう。オペレーションのダイアグラムが殆ど出来ていないに等しいものではなかったのだろうか。「どうも、場当たり的に配置した作戦ではなかったのか。」と言う疑問を持っていた。
 
【ミッドウェー・アリューシャン行動計画表と飛龍(上)並びに蒼龍、大和の写真】
 注【正規空母】当時の航空母艦で艦載機を60機以上乗せることが出来る空母のことで大体三万トン前後になる。中には二万トンを越えるものでも対応できる。(アリュウシャンに行った第四航空戦隊の隼鷹は正規空母のはずであるが、艦載機を24機しか乗せていなかった。飛行機並びに熟練パイロットが不足していたと考えられる。)軽空母とは約その半分ぐらいである。
  【ダイアグラム】オペレーションの中で利用される時間などの管理法で、その典型的なものは鉄道会社の列車運行表である。
  【ランチェスター】は英国の独創的な科学技術者でそのアイデアは今日空気力学の中に残っているのみではなく、二次法則はオペレーションリサーチの最初の考えに至るものまである。 m2-En2=C(E=k1/k2=1)
                                              2   2
    m2は2乗の意味、n2も同様 Eは装備の交換比率を表している。この場合は装備品の能力が同じであると想定しているが、常に敵国同士がこの条件に合致することはないと考えられる。この数式の他に時間(t)をいれたものもあるが、その戦いが何時間で結果が出ると計算できるものである。紙面の関係で割愛する。
  【参考文献、「非まじめ」のすすめ 森政弘著 講談社刊】
  【参考文献、日本の危機 糸川英夫著 。】
  【参考文献、ランチェスターの法則、小林竜一著 OR概論共立出版数学講座】
  【参考文献、知恵比べ(海ノ口城の攻防)「序に変えて」として投稿してある。】
  【参考文献、防人の歌、亀井宏著 光文社刊】
  【参考文献、ミッドウェー、AJバーカー 産経新聞社出版局】
  【参考文献、ミッドウー海戦、防衛庁防衛研修所、朝雲新聞社刊】

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