歴史とドラマをめぐる冒険

大河ドラマ・歴史小説・歴史の本などを中心に、色々書きます。
ただの歴史ファンです。

「麒麟がくる」「光秀のスマホ」外伝・「信玄がやってくる」

2020-12-10 | 麒麟がくる
好き勝手な文章で、実際の「麒麟がくる」とは関係ありません。

1572年10月、信玄は本格的に西に向かう。徳川家康と衝突する「三方ヶ原の戦い」は目前であった。驚いた十兵衛は急遽岐阜にいる信長を訪ねるのであった。

十兵衛が部屋にはいると、信長はだらしなく口を開いて寝ている。十兵衛はその枕を蹴飛ばした。

信長「わっ、なんだ」
十兵衛「殿、寝相が悪いですな、枕が飛んでいきましたぞ」
信長「蹴っただろ」
十兵衛「蹴ってません。じっちゃんの名にかけて蹴ってません」
信長「誰だよ、明智のじっちゃんって。それより何だよ」
十兵衛「いや、信玄が西に向かったと聞いたので、殿が泣いているんじゃないかと」
信長「なんで泣くのだよ。西に向かったって、せいぜい三河だろ。それ以上は西に来ないよ」
十兵衛「まあそうでしょうな。兵站が続きませんしね」
信長「上洛するならもっと事前準備が必要なんだよ。俺が上洛した時は一年前から、伊勢をいじったり、六角を説得したり、そりゃ下準備が大変だったんだぜ」
十兵衛「でもなにが起きるか分からないのが乱世ですぞ」
信長「そりゃそうなんだけどね。あっ。三河くんが援軍よこせっていうから、佐久間たち3000人を派遣したよ」
十兵衛「3000人なんて、何の足しになるんです。人が悪いなー。自分は助けてもらうくせに徳川は助けない。極悪非道だな。」
信長「いいんだよ。三河決戦なんかする気はないから。万が一信玄が馬鹿で三河から織田領に入ったとするよね。その時に備えて織田兵は失えないわけよ。だから適当に逃げて来いと言っておいた。8000人の家康君が裏切らない程度に見張っていればいいのだよ。家康君は籠城すればいい。三方ヶ原に打ってでたりしないよう願っているよ」
十兵衛「家康君は本気で戦うと言ってましたよ。」
信長「それは三河くんの勝手だよ。織田とは関係ない話。三河くんと信玄の国境争いだから。籠城すればいいけど、あいついきなりキレるから平野決戦とかやりそうだな。そしたら織田3000人は逃げる。8000の徳川は2万5千の武田の前に鎧袖一触だろうな」
十兵衛「がいしゅういっしょく。言葉が難しいぞ。でも信長大包囲網がひかれたと言ってる人もいますよ」
信長「マジか。だったらどうして10月なんだよ。冬になるぜ。冬になったら朝倉は越前に引き上げるぜ。本気で包囲する気なら10月に動いたりしないでしょ」
十兵衛「でも三方ヶ原あたりで信玄が大勝利して、美濃尾張に迫ったらどうするんですか」
信長「来ないよ。でも来たら徹底的な防御戦だよ。籠城嫌いだから、柵の中からとか、徹底的に鉄砲を撃ちかける。で、逃げる。それを繰り返す。兵站は伸びているわ。兵は疲れているわ。和睦を申し出れば簡単に甲斐にもどるでしょ。兵が疲れ果て、食料も続かないのだよ。どうやって戦うのだ?」
十兵衛「そりゃそうですね。岐阜城に籠城したらコメは豊富で兵力は3万。それを2万5千の武田軍で一気に壊滅させるなんて、現実的にはありえませんしね。でも武田に寝返る国衆が増えたらちょっと問題ですね」
信長「それでも浅井包囲の秀吉軍は残せるよ。浅井くんは頑張るだろうけど、朝倉は越前に引き上げる。冬なんだから当然そうなる。信玄はポーズで怒るだろうけど、むしろほっとすると思うね。ほっとして帰るよ。」
十兵衛「そもそも包囲網と言っても、確固たる中心人物がいないのだからバラバラですしね」
信長「そうなんだよ。日本最強の武田軍とか言ってるけど、盛りすぎでしょ。それより不安なのは畿内の信玄祭りだよ」
十兵衛「信玄がやってくると騒いで、挙兵する」
信長「そうだよ。そういう人の代表が義昭くんだね。」
十兵衛「どうするんです」
信長「外聞があるから、最後の最後まで和睦を申し出るよ。信長は幕府を大切にしたという形だけ残せればいいんだ。でも義昭くんは受けないでしょ。そしたら叩くよ。追放するだけ。殺さないから安心してね」
十兵衛「松永さんも立つと思いますよ」
信長「あいつは何がしたいんだよ。でもね、あいつも一回目は許すよ。二回やったらアウトだよ。」


信玄西上は「信玄の言っていること、手紙を簡単に信じていいのか」という難点があります。論理的に考えてもよくわからない点が多いので、こういう適当な文章を書いて、頭を整理してみようと思った次第です。

長篠の戦いの本当の凄さ

2020-12-10 | 織田信長
長篠の戦い、3段打ちについては、つまり3隊に分けた一斉射撃については「ほぼ否定」されています。

鉄砲の数は最低1000丁です。3000丁だった可能性もあります。

信長の本当の凄さは「それだけの鉄砲を調達した」「なまり玉を調達した」「火薬も調達した」点です。海外貿易を抑えたことによってそれが可能となりました。鉄砲は国産できましたが、「なまり」「火薬」は主に輸入であったからです。

終わり、、、、でもいいのですが、せっかくなので蛇足を書きます。

長篠の戦いの場合「3段打ち技法で、絶え間なく撃ったなんてことはない。そもそも防衛陣形であった。勝頼が突っ込んだのは偶然で、防御陣形をとっていたら、たまたま突撃してくれて、予想もしなかった成果が得られただけだ。信長の意図ではない。偶然だ。」

とこんな風に信長を捉える意見もあります。

「ちょっと待てください」です。

防御陣形は間違いありません。柵の中に閉じこもっていたわけです。しかし「たまたま突撃してくれた」にしても「多くの鉄砲と、なにより鉛玉、火薬がなければ」、この作戦は成功しないわけです。武田軍にも鉄砲はありましたが、玉と火薬を調達できないから、すぐ撃ち尽くしてしまったわけです。

「それだけの鉄砲を調達した」「なまり玉を調達した」「火薬も調達した」

堺を抑えることでそれは可能になりました。その点はきちんと評価すべきだと思うのです。信長を過大評価すべきではないけど、経済への着目はきちんと評価しないといけないと思います。

大河「黄金の日々」の素晴らしさ・凄さ

2020-12-08 | 黄金の日々
大河黄金の日日、日々ではなく日日が正しいようです。あまりのインパクトにずっとビデオを見ることを回避してきた作品です。信長狙撃の実行犯である杉谷善住防ののこぎり引きの処刑のシーンがずっと「トラウマ」でした。トラウマとは違うかな、とにかく「見たくなかった」ことは確かです。衝撃的過ぎました。

放送されていたころ、私はまだ高1ぐらいだったでしょうか。主人公のルソン助左衛門と美緒の30年以上の「プラトニックな関係」を美しいと思っていました。そして石川五エ門が夏目雅子さんを「かどわかす」ことを「悪だ」と思っていました。

微妙に違うのです。美緒は助左衛門、市川染五郎さんに、ずっと「私を奪って連れ去ってほしい」と願っています。実際、繰り返し、それを口にします。夏目さんをかどわかした石川五右衛門を「地獄に落ちればいい」と言いますが、一方で夏目さんを「うらやましい」と思っています。夏目さんは五エ門に殺されますが、死に際、死ぬことも含めて「幸福だった」と言います。そんなの理解できるか!というところです。いや理解したくなかったのでしょう。学生だったから。そういう情念みたいな世界が怖かった。今みると、明確にそう描かれています。

「これが理解できるか!」という描き方なのですね。色々忖度して八方美人的な描き方をしたりしない。「これが芸術だ、分かるものだけついてこい」という自負を感じます。

一方で、史実の描き方も緻密です。ところどころ史実の変更はあるものの、特に信長の事績に関しては「全て描かれている」と言ってもいいほどです。信長の最大の特徴を「経済重視」として、「戦争とは経済力の戦争でもある」とした点でも、まるで現代を先取りしている感があります。三好三人衆が「名前いり」で出てくる大河はたぶん未だにこれだけだと思います。義昭がどうやって都落ちしたか。毛利と帰京交渉があったが、義昭が信長に人質を要求したため決裂した、、、とか細かく全部描かれています。

時代を「中世の断末魔と近世の産声が交錯した時代」ととらえ、その考えはブレることなく全編を貫いているので、見ていて作家の狙いがはっきりと理解できます。凄い作品です。これこそ大河だと感じます。

なお脚本は市川森一さんです。すごい才能だと思います。