数日前、TV でこの展覧会のことを知り「何これ?」と引っ掛かっていました。
今週で終わってしまうと知り、昨日行ってきました。
私などには想像もできない生い立ちのHenry Darger 。
だから、私がどうのこうのと言うことはできませんが…
彼が夢想した「非現実の王国で」という物語の
これでもかというほどの残虐なシーンの挿絵の数々に
1人きりの狭い部屋でこんな絵を描き続けるこの人の精神状態は
一体どんなものだろう?と思わずにはいられませんでした。
彼が嫌い、そのために苦境に陥ることになった「クレイジー」というニックネームも
あながち的はずれではないのじゃないかとも思えるほど。
そう思いながらも魅かれてしまう自分に戸惑ってもいました。
どうして?
何度も何度も絵の前を行ったり来たり…
全体の調和を崩さない色調。
果敢に戦うヴィヴィアン・ガールズの無邪気さ。
数は少ないけど活き活きと描かれた花々。
これから大きな天気の変化(禍い)が起こることを暗示したり
人々の安堵した気持ちを表すようなユーモラスな雲が浮かぶ空。
こういうものが物語を悲惨なものに終わらせない力になっているのかもと思ったり…
「調子はどう?」と聞かれると必ず「明日は風がやむかもしれません」と
答えたという彼。
めったに人と会話をすることはなかったけれど
その少ない会話の内容はいつも天気のことだったという彼。
生前、誰の目にも触れることなく
自分が亡き後は全部焼却して欲しいと自分の描いた物語を闇に葬ることを願った彼。
それを見ることは彼に対しての裏切りなのかもしれないけれど
そんな居心地の悪さを感じながらも、見られてよかった。
作者にも作品にもつきまとう謎はこれからもわからないままでしょう。
人間が持つ狂気をあぶり出す力に理屈抜きに圧倒され魅了され
きっと忘れられない展覧会の1つになるだろうと思います。