トランプ大統領誕生で、日本はどうするか

(1)日米関係のリバランス
米大統領選挙で、11月8日、ドナルド・トランプ氏が勝利しました。来年1月20日には、トランプ大統領が誕生します。今年6月にEU離脱を決めた英国の国民投票と同様に、グローバリズム=強欲資本主義に反対する民主主義の投票結果だと思います。これをポピュリズム(大衆迎合主義)と言う人もいますが、グローバリズムの終焉は歴史的必然です。

トランプ氏のスローガン「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」は、1980年のレーガン大統領と同じで、トランプ氏はレーガン大統領を目標にしているようです。

トランプ氏のもう一つのスローガン「アメリカファースト」(アメリカ第一主義、アメリカの利益が最優先)が、これまでの日米同盟・日米関係を直撃しています。「日米安保条約は不公平だ/日本が駐留米軍経費を全額負担しなければ在日米軍は撤退する/日本が核武装してもよい」「日本が牛肉に38%の関税をかけるなら、日本の自動車に38%の関税をかける」などと、選挙中に発言しました。トランプ流の「アメリカファースト」は建前なしの実利のみ、氏の人生哲学そのものを表す発言です。

トランプ氏は、オバマ大統領が推進してきたTPPからの撤退を公約しています。トランプ政権では、TPPによって新たな段階に入ろうとした安全保障と経済の日米同盟・日米関係が、見直されることは必至です。日米関係のリバランス(再均衡)が必要となるのです。

安全保障では、米ロ関係・日ロ関係の進展が予想されるので、対北朝鮮・対中国が問題となりますが、対北朝鮮では、6ケ国協議の枠組みで、日米韓中ロで、北朝鮮の暴発を抑止していくしかないと思います。日本の原発即ゼロも、安全保障政策の1つになります。

中国に対しては、TPPの考え方に表れているように、日米同盟を基軸に中国包囲網を形成するのではなく、RCEP(アールセップ。東アジア地域包括的経済連携/ASEAN+6(日中韓印豪NZ))の考え方で、中国を含めた地域的集団安全保障体制を構想すべきです。その枠組みで、航行の自由など国際法のルールを遵守し、中国がこれに違反したら、全体で経済制裁する仕組みです。その上で、アメリカ、ロシア等も加わったAPECに枠組みを拡大していくことについて、日米間で合意すべきです。

トランプ氏は、実業家として波乱万丈とはいえ成功した人物です。その行動原理は「ディール(取り引き)」ということのようです。日本がトランプ次期大統領の公約である、米国内のインフラ整備、製造業の回復に、積極的に協力することで、日本の主張への理解も求めて、まさにwinwinの関係をつくりあげていくことが、日米関係のリバランスではないでしょうか。


(2)「ドル・ドル基金」で、トランプ公約「アメリカ製造業回復」に協力を
トランプ次期大統領の勝因と指摘されているのが、ラストベルト(Rust Belt)と呼ばれる中西部地域、ミシガン・オハイオ・ペンシルベニア・ウィスコンシン各州等の白人労働者の支持です。ラストとは金属のさびのことで、使われなくなった工場や機械を指し、国外移転や国際競争によって衰退した自動車・鉄鋼などの重工業・製造業の中心だったこれらの地域が、ラストベルトと呼ばれる地域です。

さらに、この地域は、鉄鋼業や鉄道を発達させた豊富な石炭産出地帯ですが、オバマ大統領の環境政策(米国内のCO2削減の具体策=クリーンパワープラン)による厳しい石炭火力規制で、大きなダメージを受ける地域でもあるのです。

私は、トランプ次期大統領の公約である、ラストベルト地域の「製造業回復」に、日本が協力すべきだと思います。TPP撤退後は、トランプ大統領が、日本に対して、厳しい二国間交渉(日米FTAを含む)を仕掛けてくることが予想されますが、従来の対日要求に対応するのではなく、積極的に日本から、winwinの原則で仕掛けていくべきだと思います。

トヨタや新日鉄住金などが、ラストベルトに工場を建設したり、最新型高効率火力発電所(トランプ流ならIGCC・IGFC・CCSなど)や新幹線の建設等を、日本の民間企業の投資だけで実行することは、難しいと思います。そこで、国際財政投融資のアメリカ版として、私が以前から主張している「ドル・ドル基金」を提案したいと思います。

現在、日本政府が保有している米国債は約120兆円ですが、毎年米国から2兆円超の利息収入を上げるだけでは、もったいないし、持続可能性にも問題があると思います。そこで、日本政府保有の米国債を担保として、ニューヨーク連銀からドル資金を借り入れて、50兆円規模の「ドル・ドル基金」をつくり、米国内での財政投融資資金に充当するのです。塩漬け状態にあるNY連銀の日本国保有の米国債の有効活用にもなり、日米winwinのシナリオではないでしょうか。

日米安全保障条約は、第2条で、日米の「経済的協力を促進する」と明記しています。日本が、アメリカの製造業回復に全面的に協力することによって、日本の食料自給率・自給力の向上、食と健康の安全・安心、著作権法の現状維持・戦時加算撤廃等については、アメリカの協力・譲歩を求めるのが、winwinであり、「ディール(取り引き)」だと思います。


(3)沖縄基地問題、トランプ次期大統領と「ディール」を
トランプ次期大統領は、選挙期間中に、日本が駐留米軍経費負担を全額負担しなければ、在日米軍の撤退もあり得ると発言しました。大統領就任後に、どういう方針となるか不明ですが、少なくともこれまでの日米両政府のように、普天間基地移設問題について、「辺野古新基地建設が唯一の解決策」ということにはならないのではないでしょうか。

翁長沖縄県知事は、トランプ次期大統領に祝電を送り、その中で「大統領就任後はアメリカと沖縄との関係について話し合う機会をつくっていただき、双方にとって良い結果となるよう、強力なリーダーシップを発揮されることを期待しております」と訴えたそうです。

米国の安全保障の専門家の中にも、沖縄は北朝鮮や中国から近すぎてミサイルの標的となりやすい、重要なのは嘉手納基地であって、普天間や辺野古の重要性は低い、海兵隊の訓練基地としては沖縄や日本は使い勝手が悪い等の意見が、既に出ています。

沖縄には、海兵隊のローテーション基地のみ残して(キャンプ・ハンセン)、残りはグアム、ハワイ、本土に引き上げる構想にも、合理性があります。その際、グアムに近いテニアン島に、辺野古新基地建設と同程度の費用(数千億円)を日本政府が負担して、海兵隊の新訓練基地を建設する構想をトランプ次期大統領に伝えるべきだと思います。それがアメリカにとって利益になると判断すれば、トランプ次期大統領は方針転換を決断するかもしれません。もちろん、先の見えない安倍政権は、そんな提案はしないでしょうから、次期衆議院総選挙で政権交代することが非常に重要です。現状では自身の任期中に何も前進しない沖縄の現状よりも「マシ」だとトランプ大統領は判断するかもしれません。

「アメリカファースト」のトランプ次期大統領は、今後は、バイの交渉でTPP以上の高いハードルを日本に突き付けてくるかもしれません。日本が「ディール(取り引き)」の材料をそろえておくことは重要です。日本が積極的に互いがwinwinとなる方策を提示できなければ、いつまでも日本は米国追従路線から脱却することはできません。そんなことを、私は望みません。

 

外務省HP「日米安全保障条約」

はたともこブログ「WEBB上院議員への手紙」

 

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