巨大なクレーターの町「すぜけうす」。中央にゲシャという海がある。主人公(私)は国境の高原を越えこの町に入った。海の向こうへと旅立つために。この海は岸辺から湯気が噴出しているのでうかつには近寄ることはできない。
湯気の近くの丘には穴を掘って周りを固めた船と呼ばれる体の洗浄場所がある。そんな小高い丘の上の船は近隣の村や町からの洗浄客でいつもにぎわっている。
キレイ好きなこの国の住人達。
私はその船の汚れを落とす仕事につく。噴出す高温の煙の向こうにゲシャ海が時々見える。
私の独り言に「そうだな」と相槌を打ったのがきっかけでできた友人ユジャ。私と同じく海の向こうへ行くためにここで船を洗っているのだという。
例えば、ユジャはこの街に縛られ続けて生きてきた。
クレーターを形成したインパクトは外界との遮断を意味している。他所の街は、交易から得られる細々とした産業を持っていて、ささやかな知識欲を満足させる情報が入ってくる。(しかし、それも私から見れば大したことのないゴシップばかりだが…)が、いいか悪いか…この街では、噴出す湯気が産業として特化された為、次第に閉鎖的風潮が蔓延した。
噴出す湯気は、外貨をもたらす代わりに住民の脳を溶かしだした。人々は田畑を捨て、噴出す湯気に付加価値をつける行為に走り出したわけだから…。意味のない慣習だけが保存され、以前より住みにくくなったことに人々はまるで気付いていない。
ユジャはこの街を出たことはないが、ある日、直感的に澱んだ空気を吸えなくなったらしい。いつからか胸一杯吸えなくなったと言う。
私はこれに同情するものではない。それが何処であろうと、そこには確かな生活があって、皆それぞれが、それを精一杯生きているのだと思う。そして、彼の場合も、漏れなくそれに当てはまる。
私とユジャは目的が一致するだけだ。ユジャが私から得るものがあるなら、私それには対価を求めない…(逆の場合もあるし)それだけのルールをもって、私はユジャを友達と決めた。
始業と終業のベルの音に耳が慣れ始めた頃、私は自分のことをユジャに話すようになっていた。
ヴッチの場合
ヴッチは尖塔の上に立ち、吹き上がる蒸気の向こうに浮かぶ山脈を眺めている。尖塔の下に放射状に広がる街に目をやる仕草はまるで自分が自分であることを確認する作業の様に見える。
ヴッチという名は親が名付けたものではなく、本当の名はもっと長い、別のものだ。ヴッチは名付けられた名を嫌悪し、その背後にそびえる無味無臭の運命を嫌悪した。
ある日、自分に新しい運命を与える意味で、ヴッチという新しい名前をつけた。
ヴッチの家系は元々尖塔を管理する灯台守のような仕事に従事してきた。しかし、近年になって、隣国の圧制から逃れて海岸線伝いに入国してくる密入国者を摘発することを、燈台守の仕事に追加し、課せられた。密入国者は隣国の政府に高い金で買い取られることになっていたので、その仕事の成果は上がり、約5年間で巨万の富を得た。想像を絶する数の密入国者たちは、想像を絶する成金を一人作り上げたわけだ。
その結果、尖塔の周りの小高い丘には、城壁が建てられ、城壁の内部には不自由を感じることのない機能が備えられた。城壁は一市民に手によって、不干渉(独立国家)の象徴になった。
この国の説明をここで加えたい。ここでは、国民と国家は契約によって強く結び付けられている。
国家は個人に対し、不自由(勤労、納税、徴兵、法律の厳守etc…)を課す、が、これには段階があり、ある高い水準の不自由を克服した場合、それを遥かに上回る自由(税金面での優遇、徴兵の免除、法的優遇)を手に入れられる。国家に対する貢献度は数値化されていて、ある一定の高い貢献度を達成した場合、その家系は余程のことがない限りは、自由(栄華)を保障される仕組みだ。(*ヴッチの家のように税金を沢山納めるのが一番手っ取り早い方法ではある、それ以外では戦場で英雄になるしかない…。)
そのレベルに遥か及ばず、もがき続ける大衆庶民が過度に重い税金を支払うことで、国家を支えているようにも見える。が、彼らには『夢を見る自由』が特別に与えられていることは言うまでもない。夢を見る自由を、最も効果的に、暗に契約条項に組み込む辺りは、評価すべきことかもしれない。(にわかには、信じられないことだが…)
ヴッチはその辺りの経緯を知らない。ただ、幼少時に皮膚で感じていたデコボコ感が、今感じられないということだけは分かる。自分に襲いかかる不充足感は何処から来るのか?充足されていないものが何なのかについては、残念ながらヴッチの頭では遠く及ばない。
ただ、これから先、平坦な時間だけが過ぎて行くような予感がする。その予感は、薄気味悪い温度で、常に背筋に垂れ下がっている。
ヴッチはスカートを捲り上げ、尖塔の階段を駆け下りて行った…。それは尖塔の入り口を通過し、更に丘をも駆け下る勢いを持っていた。
保安官の憂鬱
蒸気、常軌…保安官は自分のジョークに苦笑いした。「明日、部下に話したところで、分かっては貰えないだろうだろうな」と呟き、椅子に座り直す。
静か過ぎるこの街には犯罪というものがない。人口10万人に対して、警官は保安官の自分を含めて5人しかいない。恐らく、犯罪に向かう気力を削いでしまう経済システムの恩恵だろうな、脱獄を防ぐ刑務所のようにエレガントで巧妙な手際だ、と以前から気付いていていたことを頭の中で繰り返した。まぁ、保安官の自分の仕事がないというのも考えものだ。消耗するものと言えばゴム印を押すインクだけだ。銃火器なんぞは、何処にしまってあるか、知っている者は残っているのか?
しかし、彼の中でカウントダウンの鐘は鳴り続けている。
この街では一年に2件のペースで、ある奇妙な事件が起こる。紙袋を頭部に被った異常者(?)による、通り魔(?)事件である。が、自分が赴任してから、8ヶ月が経とうとしているが、まだ一度も起きていない。
奇妙と言うのは、凶器が特殊であるからだ。凶器と言うのは、火炎放射器に似た、言うなれば蒸気放射器で、ポンプのようなものがその大部分を占める。過去に一度も検挙されていない以上、被害者の証言に頼る他ないのだが、何処をどう切り取っても奇妙な事件に変わりはない。
過去の事件では常に、保安官が狙われてきている。前任の保安官は迂闊にも、右手で蒸気を受けてしまったため、5本あった指はその数を減らし、ゴム印を押す作業すら困難になった。大抵の被害者は火傷の跡を一つ作るだけで、年に2回ほど20人程度の住民が、次の日から病院に通うことになるだけだ。
保安官は権力の執行部隊の代表でもあるので、犯人が何かしらメッセージを残してもいいようなものだが、過去にそういったことは報告されていない。金品を奪われた、などの報告が上がってくるわけでもなく、被害者の身分、貴賎に法則はない。令嬢も乾物屋も対等にリストに挙げられている。本当に、唯唯、無作為に選ばれた何の罪もない人が病院に通うことになるだけ…。無責任だが、「特殊な宗教儀式?!」と、片付けてしまいたい気も、ある。
「常軌を逸した、蒸気による犯行」これは、カウントダウンを受け入れなければならない彼にしか思い付かないジョークであり、何時の間にか、今か今かと待つようになっている頭によぎるコトバだ。
自分のジョークを反芻し、煙草に火を付けたが、余り美味しくない。風邪でも引いたかと思い、煙草を消し風邪薬を取り出し、倍量を口に入れ、それをウィスキーで流し込んだ。
その瞬間、彼は背後に得体の知れない気配を感じた。(待っていた…、望んではいないが…仕方ない。)
彼は冷静に、胸の辺りで受けよう思い、ゆっくりと振り向いた、が、そこには、誰も居なかった。
吸い込む蒸気が脱水を促す話
噴出す煙の向こうにゲシャ海が時々見える丘に小さな飲み屋「せぜへけ」という店があり、そこにプレジャという女が雇われていた。
プレジャの仕事は皿洗いや食料の調達、酒の運搬であった。
プレジャは誰もが目を引く美貌の持ち主だが幼いころから働き詰めていたので自分を着飾ることも新品の服も持っていなかった。
それにプレジャには右腕がなかった。
プレジャが7歳になろうとする頃、両親と祖母、弟とでこの国から逃げることを決意した。
目指すはゲシャ海の向こうの国・・・。
逃げ道はこの船と呼ばれる体の洗浄場所を超えて岸辺から湯気を避けて歩いて行くしか方法は無かった。
しかし計画は失敗だった。
歩いていくうちに、汗が吹き出て喉の渇きがひどくなった。道も湯気で見えない。
2日間、歩き続けると祖母は力尽きそのまま噴出す煙の中から出てくることは無かった。
それからも父は荷物を持ち母は弟の手を引いていた。
プレジャは必死に後を追ったが両親は後ろを振り返えらず、むしろ早足で進んでいった。
弟は泣きながらプレジャの名前を呼んだが両親には聞こえない。
両親の異変に気がついたが、幼いプレジャにはどうすることも出来なかった。
両親はここ何日間の高温の湯気に神経が侵されてしまい正常の判断が出来なくなっていた。
そのうちにプレジャは足が絡まってしまい、転んだ拍子に右腕を湯気の中に入れてしまい、右腕をなくしてしまった…。
気がついた時には町の病院に逃げないよう縛られていた。そこで両親、弟は死んだと聞かされた。
それからというもののプレジャは表に出るの極端に嫌がるようになった。が「せぜへけ」で働くには意味があった。
客が多く集まり、たわいも無い話が飛び交う場所・・。
あの時いなくなった弟の情報を探す為に。
プレジャは信じている。「あの時弟はしっかり私の名前を呼んだ。狂ってはいなかった。きっとどこかで生きていると・・・。」
悪夢では、ない。
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『ZERO』の夢を見た。そういえば、気付いた時には、『ZERO』は、既に、僕の中に居た。彼は全く僕を気にも留めずに、いつも通り無軌道で身勝手な様相を呈している。機嫌がいいのか、悪いのかさえ、全く分からない。何故だか分からないけど、前後感だけは存在していて、あれが『ZERO』なら、彼をただ見ている自分は『1』と言う、気がする。…まぁ、僕だけのルール。僕は彼を見て、いつも『閉じ込められた、ねずみ花火』を連想する。彼の役割は分からないし、そもそも、そんなものは彼には、決して、相応しくない。
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目覚めると、部屋の隅に何か見慣れぬものが、立て掛けてあった。その何かは、外の街灯よって浮かび上がり、錆びた重い光を放っている。
本編は、直に始めようと思っています。『すぜけうすサンマ豊漁記』!!今後とも宜しくお願いします。
もっと続きが読みたい!
え?わし?・・・・。
ワシはさておきO裂はどうでる?
といったような周辺事情はさておき、ばばにあ様一期舎ビデオの録画ありがとうございました。
ひっつみを囲む会ですが、金曜の予定は皆さんいかがでしょう?土曜は作者不在のためできまへんが。
かってに丁稚が予定してますが、てんちょから明日都合聴いて見ます。
プレジャの仕事は皿洗いや食料の調達、酒の運搬であった。
プレジャは誰もが目を引く美貌の持ち主だが幼いころから働き詰めていたので自分を着飾ることも新品の服も持っていなかった。
それにプレジャには右腕がなかった。
プレジャが7歳になろうとする頃、両親と祖母、弟とでこの国から逃げることを決意した。
目指すはゲシャ海の向こうの国・・・。
逃げ道はこの船と呼ばれる体の洗浄場所を超えて岸辺から湯気を避けて歩いて行くしか方法は無かった。
しかし計画は失敗だった。
歩いていくうちに、汗が吹き出て喉の渇きがひどくなった。道も湯気で見えない。
2日間、歩き続けると祖母は力尽きそのまま噴出す煙の中から出てくることは無かった。
それからも父は荷物を持ち母は弟の手を引いていた。
プレジャは必死に後を追ったが両親は後ろを振り返えらず、むしろ早足で進んでいった。
弟は泣きながらプレジャの名前を呼んだが両親には聞こえない。
両親の異変に気がついたが、幼いプレジャにはどうすることも出来なかった。
両親はここ何日間の高温の湯気に神経が侵されてしまい正常の判断が出来なくなっていた。
そのうちにプレジャは足が絡まってしまい転んだ拍子に右腕を湯気の中に入れてしまい、右腕をなくしてしまった・・・。
気がついた時には町の病院に逃げないよう縛られていた。そこで両親、弟は死んだと聞かされた。
それからというもののプレジャは表に出るの極端に嫌がるようになった。が「せぜへけ」で働くには意味があった。
客が多く集まり、たわいも無い話が飛び交う場所・・。
あの時いなくなった弟の情報を探す為に。
プレジャは信じている。「あの時弟はしっかり私の名前を呼んだ。狂ってはいなかった。きっとどこかで生きていると・・・。」
以後は誰か助けて・・・。なんだかよくあるパターンかしら
ショートにしたいのか、長編にするのかは次だろうね、次!それは、頼むよ。指針、御所がどうとかさ。
僕がオチは考えるからさ。まぁ、適当に。