あらすじ:
ゲシャ海に面した国『すぜけうす』…。そこで色んな事が起こっちゃうの、そんな当たり前な国が『すぜけうす』…なんだけど。そこを訪れた異国の若者が主役と言えば主役。みんながゴチャゴチャし過ぎていて、みんながみんな困っている。そこに暮らす人々を巻き込む大騒動や、退屈な支配された町で起こる不可解な事件…等々!?
一体…、明日はどっちにあるのですか?!
そんな感じ。
すぜけうすサンマ豊漁記① すぜけうすサンマ豊漁記②
すぜけうすサンマ豊漁記③ すぜけうすサンマ豊漁記④
すぜけうすサンマ豊漁記⑤ すぜけうすサンマ豊漁記⑥
すぜけうすサンマ豊漁記⑦ 裏・すぜけうすサンマ豊漁記(外伝および周辺情報)
羊の話
周りが騒がしい。土色の背景に舞う同色の土ぼこり、喧騒をの中で私は。ぐるりと囲んでいる土色の四角い建築物。その建築物に冗談で付けたようなドームの屋根、仲間に群がる黒い塊は耳障りな羽音を発している、喧騒の中で私は。乾いた音の周りを行き交う干上がった靴、喧騒の中で私は。
見慣れた風景を見ている私は太い縄を掛けられ身を横たえている。四肢の自由を簡単にに奪われ、口に上には、ゴムを履いたよく見知ったものが全体重を乗せ立っている。注意深く、私の感触を確かめながら細かく重心をとっている。叫び声を発する気などないのに。叫び声がここで意味を持ったことなど一度だってないのに。遠く離れた一方の目は土ぼこりの中に半ば埋もれている。もう一方の目で見慣れた青空とよく知った喧騒をただぼんやりと、丸く見ている。
少し前、縄を掛けられる直前、鈍い光の不快感に2,3歩後ずさったことを思い出す。臨終に際して、少し前のこと思い出す。その時、何となくだが不快感を嫌ってしまった。決してその刃物に怯えたわけではなく、一瞬の不快感にただ反応してしまった。その2,3歩は私を混乱させたが、今ではもう落ち着いている。
視界に映る丸い世界の隅に立ち尽くすものがいる。見事に汚れきってはいるが、此処の色ではない。平行に向けられた彼の視線は間もなく私の首筋に当てられる刃物を追っている。未だに私を前に、立ち止まった姿勢を崩さない。その好奇の目は私の運命に向けられているのか?だとしたら、死に際してこれほど愉快なことはない。よく見ていろ、運命に従わぬものよ。
しかし、私は運命に従うものではない。運命の前に身体を横たえているのではない。
不快な臭いも、仲間の死体の数々も、香辛料の香りも、山のように積まれた果樹も、喧騒やサイレンも、馬車も煙を吐く馬車も、土色の背景も含めた、今…丸く見えるものの全てが私の運命の一部であるのだ。いや、私の運命ではない。私の運命は血の決断の一部であるから。私は血の決断に従っているにすぎない。絶対的な何かの前に身を横たえる。膨大な記憶の蓄積に支配されるように、何かではなく、曖昧な全てを含めた曖昧な何かの前に身を横たえている。私にはお前を蔑むに充分な血の決断がある。お前の格好や、汚れた髪や、大事そうに抱える動機や、穴の開いた靴や、血の決断を持たないその運命諸々を、蔑むに充分な血の決断を持っている。過去に侵されたことのない、未来永劫侵されないであろう聖域を持っている。大事に抱えるその動機や磨り減った靴や背中にぶら下がる黒い塊などでは、私には遠く及ばないことを知るがいい。まだ暖かい私の血が溝に流れていく単純で力強い成り行きを見るがいい。完結しこれからも続いて行くであろうこの血の流れる音を…。
閉じゆく丸い世界の隅で立ち尽くし、閉ざされても尚立ち尽くし、大事に抱える大事にするだけの何かを、それを抱えるだけの自分を、恥じるがいい…。
ゲシャ海に面した国『すぜけうす』…。そこで色んな事が起こっちゃうの、そんな当たり前な国が『すぜけうす』…なんだけど。そこを訪れた異国の若者が主役と言えば主役。みんながゴチャゴチャし過ぎていて、みんながみんな困っている。そこに暮らす人々を巻き込む大騒動や、退屈な支配された町で起こる不可解な事件…等々!?
一体…、明日はどっちにあるのですか?!
そんな感じ。
すぜけうすサンマ豊漁記① すぜけうすサンマ豊漁記②
すぜけうすサンマ豊漁記③ すぜけうすサンマ豊漁記④
すぜけうすサンマ豊漁記⑤ すぜけうすサンマ豊漁記⑥
すぜけうすサンマ豊漁記⑦ 裏・すぜけうすサンマ豊漁記(外伝および周辺情報)
羊の話
周りが騒がしい。土色の背景に舞う同色の土ぼこり、喧騒をの中で私は。ぐるりと囲んでいる土色の四角い建築物。その建築物に冗談で付けたようなドームの屋根、仲間に群がる黒い塊は耳障りな羽音を発している、喧騒の中で私は。乾いた音の周りを行き交う干上がった靴、喧騒の中で私は。
見慣れた風景を見ている私は太い縄を掛けられ身を横たえている。四肢の自由を簡単にに奪われ、口に上には、ゴムを履いたよく見知ったものが全体重を乗せ立っている。注意深く、私の感触を確かめながら細かく重心をとっている。叫び声を発する気などないのに。叫び声がここで意味を持ったことなど一度だってないのに。遠く離れた一方の目は土ぼこりの中に半ば埋もれている。もう一方の目で見慣れた青空とよく知った喧騒をただぼんやりと、丸く見ている。
少し前、縄を掛けられる直前、鈍い光の不快感に2,3歩後ずさったことを思い出す。臨終に際して、少し前のこと思い出す。その時、何となくだが不快感を嫌ってしまった。決してその刃物に怯えたわけではなく、一瞬の不快感にただ反応してしまった。その2,3歩は私を混乱させたが、今ではもう落ち着いている。
視界に映る丸い世界の隅に立ち尽くすものがいる。見事に汚れきってはいるが、此処の色ではない。平行に向けられた彼の視線は間もなく私の首筋に当てられる刃物を追っている。未だに私を前に、立ち止まった姿勢を崩さない。その好奇の目は私の運命に向けられているのか?だとしたら、死に際してこれほど愉快なことはない。よく見ていろ、運命に従わぬものよ。
しかし、私は運命に従うものではない。運命の前に身体を横たえているのではない。
不快な臭いも、仲間の死体の数々も、香辛料の香りも、山のように積まれた果樹も、喧騒やサイレンも、馬車も煙を吐く馬車も、土色の背景も含めた、今…丸く見えるものの全てが私の運命の一部であるのだ。いや、私の運命ではない。私の運命は血の決断の一部であるから。私は血の決断に従っているにすぎない。絶対的な何かの前に身を横たえる。膨大な記憶の蓄積に支配されるように、何かではなく、曖昧な全てを含めた曖昧な何かの前に身を横たえている。私にはお前を蔑むに充分な血の決断がある。お前の格好や、汚れた髪や、大事そうに抱える動機や、穴の開いた靴や、血の決断を持たないその運命諸々を、蔑むに充分な血の決断を持っている。過去に侵されたことのない、未来永劫侵されないであろう聖域を持っている。大事に抱えるその動機や磨り減った靴や背中にぶら下がる黒い塊などでは、私には遠く及ばないことを知るがいい。まだ暖かい私の血が溝に流れていく単純で力強い成り行きを見るがいい。完結しこれからも続いて行くであろうこの血の流れる音を…。
閉じゆく丸い世界の隅で立ち尽くし、閉ざされても尚立ち尽くし、大事に抱える大事にするだけの何かを、それを抱えるだけの自分を、恥じるがいい…。
羊のやつは、オラを見つめる。殺さないでけろ、痛くしないでけろ、お前に呪いを、お前にも、痛みを。
そなえられた供物に目をやる。その1割が自分の懐に入る惨めさ。得体の知れない何かに捧げる祈りなんて、自分とは無縁のものだ。
だから「TAKE=ぺんた=」を叩く。自分を痛めつけるように。ひたすら叩く。叫ぶように、唸るように。呻くように。謝罪じゃない。祈りでもない。ただ自分の行為を忘れるために無心でたたく。
腐った羊頭にハエが群がる。スモークした羊肉を子供たちが喜んでむさぼる光景がだぶる。何も口にできない。何も口に出したくない。昔読んだ探検ものの本に登場する醜く前近代的な偽りの種族の祭りも。嗚咽と嘔吐、意味不明な音と声だけ。
TAKEを叩く。無心で叩く。音を響かせる。なめした皮の緩みを無視する。皮がたるむ、音が鈍る。それでも手を休めない、両の太ももの力を入れて。目を閉じ、あごを突き出し、高らかに何がしか叫ぶ。
湯気が立つ。オラの体に。この街に。犠牲になった羊の群れに。
遠い海からも湯気が見える。サンマが来る。大挙してくる。閉じた瞼の奥の、もっと奥の方で見える。そして実体としてあるオラの前にある海の向こう。サンマがやってくる。
・"・■、。☆○…▽”’※~*・★∵…
待望の続編。第2部には「ニュウ」を使いたい。N里登場も。お願い、編集長!