東京都中央卸売市場の豊洲新市場建設担当者たちは、端から豊洲の土壌に強い不安を抱き続けていたに違いない。あの土地は食べ物を扱う市場としては「不適格」だと。
豊洲新市場は100年続く市場だという。いかに東京ガス時代の土を2メートル削り取り、砕石を敷き詰め、その上に2メートルプラス2.5メートルの盛り土をしても、10年、20年もすれば、きれいな盛り土に、あってはならないベンゼンやトルエン、シアン化合物、六価クロム、ヒ素が地下水とともに浸透し、再び汚してしまうのではないか。
地下水も、それらに含まれるそういった毒物も、一定のところに留まらないのである。それらは動く。ましてや日本は地震国である。震度3程度でも地下でそれらは動く。震度5で液状化し、噴出する恐れもある。きれいな盛り土をし、土壌汚染対策工事を施したとしても、数十年も経てば地下の危険物は染み出してくるのではないか、という強い不安である。
しかし絶対命題は「何が何でも豊洲新市場への移転」である。それは築地の土地を売却し、アジア有数のカジノや超高層ホテル、超高層マンションを誘致・開発したい利権集団たちに、そそのかされ、せがまれた都議や、国会議員、権力者たちがいるからだろう。さこへオリンピック誘致の成功と、オリンピックのためのインフラ建設をを、これ幸いと結びつけた利権集団たちに、そそのかされ、せがまれた都議や、国会議員、権力者たちがいるからだろう。
石原都知事時代に東京ガスの豊洲の土地に目をつけ、東京ガスに売却を要請した担当トッフは、都知事本局長の前川耀男氏(※)であった。彼のもとで、都と東京ガスの間で合意がなされたと発表され、その後、前川氏は東京ガスに執行役員として天下った。利益相反する相手側への天下りである。
(※ 前川氏は2014年春に練馬区長選に出馬し、自公の推薦を受けて当選した。現在2期目である。)
そこへ2011年3月11日の大震災と震度5強の揺れで豊洲の用地は液状化し噴砂した。このとき猛毒が検出されたと思われる。土壌・建設担当者はショックだったに違いない。それは豊洲の用地は食の市場としては不適格であるということだ。しかし「築地市場の豊洲新市場移転」は利権集団たちから命じられた絶対命題である。まず、液状化と毒の噴出を隠さなければならない。
20日後の31日に、東京都は東京ガスと、東京ガス豊洲開発から豊洲用地を10.5ヘクタール分を蒼惶と購入した。瑕疵担保特約のない異例の土地購入であった。
さらに同日、東京都は日建設計に建物部分の仕様書を示し、蒼惶設計の契約を結んだ。仕様書には建物下のモニタリング空間も要検討と添えられていたという。
6月に日建設計から都に提出された最初の設計図には、建物下は空洞になっている。わずか三ヶ月で巨大施設の設計図はできない。つまり日建設計とは1年以上前から仮発注あるいは不正な闇発注をしていたのであろう。
とにかく日本中の目が東北の震災と津波、原発事故という未曾有の激甚災害に向いているうちに、「蒼惶と」市場としての不適格を隠蔽するように契約を急いだのだろう。
しかも、後々その決定過程や、不適正な様々な決定がバレた時の、責任の曖昧さを幾重にも緩衝材のように挟み込み、さらに曖昧に分散し、縦割り、横の情報共有なし等の言い訳も想定し、故意の操作もしてきたのだろう。
私には二年間の土壌検査の結果もデータも改竄、捏造していたとしか思えない。もうそれだけ信頼性はないのである。
おそらく、この豊洲新市場も、オリンピック予算が当初の7千億が3兆を超えるという話も、まことに大日本帝國的、日本的な社会の縮図で、山本七平や丸山真男らが指摘した通りの、責任の所在がはっきりしない、誰も責任をとらないシステム、無責任の体系そのものなのであろう。
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