私が17歳の時に起こった「多発性硬化症」の最初の兆候は、高校の先生の言うことが口パクで急に理解できなくなったことだった。家庭内での大きなストレスが原因だと思う。
これはのちにK大学病院の教授に、尋ねて分かったことだ。
それまでは小学校ではオール5で何でも上手くいき、中学校ではずっと1番だった私にとってショックなことだった。頭が悪くなったのだ。
希望する大学にも落ち、不甲斐ない自分に失望し、やけになって生きていたような気がする。
それ以来、自分が自分でなくなったようで、ずっと自分探しをしていた。
女の子は少々頭が悪くても可愛ければいいのよ、と自分で自分を偽ってみたりした。
のちにK大学病院に入院していた時、クリスマス会があって進学校のS高校の合唱部の演奏があった。
彼らの希望に満ちたきらきらした目を見ているうちに、私はこんな時期に病気の兆候が現れたと思うと涙が止まらなかった 。