20代の女性がいました。
チッチッチッチ
「うう~ん。眠れない」
秒針の音がうるさく感じて目が覚めてしまいました。
何年か前に買った時計で今までは気にならなかったのに急に気になりました。
「はぁ・・・」
彼女は数日前に彼と別れたのでした。
些細な言い争いが原因で先に謝ればよかったのですが売り言葉に買い言葉で口汚い罵りあいになり
最終的に分かれることになってしまったのです。
寂しいけども彼が悪いのであって別れた事に後悔はしていないと自分に言い聞かせる日々です。
「目が覚めちゃった。夜風に当たれば眠くなるかな?」
ヒュウ
夜風に当たりたくなって、カーテンを開けるとぽっかりとまんまるのお月が浮かんでいました。
「そういえば十五夜だったっけ?」
柔らかい光が部屋の中を照らします。
「なんだかやさしい光・・・」
彼女は普段、見ないので久しぶりに見る月にうっとりと見とれているのでした。
太陽や蛍光灯とは違った淡い輝きが彼女の心は潤い、癒してくれました。
「あれ?どうしたんだろ?私・・・」
でも、何故か不意に彼女の頬に雫がこぼれたのでした。