丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

2008年06月09日 | お仕事
 担当している利用者さんが亡くなった。九十歳を越えて、年齢的には不足はないと言われるようなお歳だった。
 しかし人生に悔いはないかと聞かれると、きっと彼は悔いがあったろうと思う。認知症が相当進行していて、昔の話も最近の話も彼には意味のないものになっていたが、彼が昔中国で犯した罪についての記憶と悔恨だけは最後まで彼の中に残っていた。
 戦争中の事だから、誰も彼を責めることはできない。実際、戦犯として裁かれる事もなかったのだろう。しかし彼の心の中は最後まで罪悪感で埋め尽くされていた。
 いい記憶は全部消えてしまったのに……。残った記憶が悔恨の想いだけというのはなんとも残酷で悲しい話だ。

 彼が召されてほどなくして、秋葉原の事件が起こった。「生きていくのが嫌になった」そんな理由で大量に人を殺す。
 この落差は一体なんなのか。

 彼の眠りが安らかならん事を祈ります……。






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2 コメント

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想い (カミュ)
2008-06-09 19:40:59
戦犯として裁かれなくても、その方の中にある人間性がその方自身を最後まで苛んだんでしょうね。記憶の伝承が歴史になると考えれば、カミュとしては辛いと思いますが、どんどん語って欲しいですね。命。秋葉原の不条理な事件。言葉に筆舌にし難いです。なんと横暴な不条理がこの世にはあることやら。この問題にカミュは小説で取り組んでいるんだと思っています。
だからアルベール・カミュが好きなんですね。まあそんなところです。命、伝えるもの、これもまた文学の考える側面ですね。
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おはようございます (弥勒)
2008-06-10 06:35:05
道徳という科目が、学校の授業から消えてしまって
何かが狂ってしまったとしか、いいようがありません。

ゆとり教育って、何やったんやろう・・・


命の重さ、ひとへの心配り、そういった人としての
基本ができていないひとが増えていますね。


まず自分の命を大切にすること、そして他人に迷惑を
かけていないか、いつも認識すること・・・

昨年ベストセラーになった「女性の品格」って、実は
祖母や母が普段から口を酸っぱくして、耳たこになるくらい聞かされたこと、なんですよね。


今度は「男性の品格」でっせ、姐さん。


それを何気なく、におわせるライトノベル、一発
たのんまっせ。
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