丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

月は囁く……

2008年11月13日 | 季節
障子の破れ目から
白い光が零れてくる

夜中だというのに
この部屋はなんと明るいのか

薄い障子を隔てて
静かな冷たい光を投げかけて
眠りの底に 
じっと沈んでいた私を
引き上げる

障子を開けると
曇天の隙間から
覗いている白い満月

「窓を開けて」

かすかに誰かが囁いた

窓から見える見慣れた街は
すっかり時間を止められて
一切が静寂に支配されている

冬の匂いのする空気は
痛いくらいに冴えていて
もう虫の音色すら混じっていない

そこにあるのは
月の白い囁き
ただそれだけ


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