翌朝少し早いめに牧子は家を出た。病院にたどり着くと母がちょうど手術室に向かう前だった。点滴をされながらストレッチャーに載せられた母を見ると、急に不安が増した。それを顔に出さないように明るい表情を作って、母に手を振った。
母が連れて行かれた後、年配の看護師に軽く肩をたたかれる。
「大丈夫よ、心配ないから。」
よほどわざとらしい笑顔だったのだろう。雅博のように役者にはとてもなれそうになかった。
母がいない間に、牧子はベッドの隣にある小灯台に着替えを移していった。それが終わると、売店に向かい、洗面道具などこまごました物を買い揃える。暇つぶしの雑誌でも買おうかと平積みされた雑誌類を眺めると、例の写真週刊誌が目に付いた。牧子は眉をひそめた。週末の顛末が思い出される。一連の事は思い出したくなかった。結局、雑誌を買う意欲を無くし、必要な物だけを買うと病室に上がった。
買ったものをまた、小灯台に収めていくとあっという間に小灯台は満タンとなった。やる事がなくなったので、仕方なくパイプ椅子に腰を下ろし大きな溜息を一つつくと、窓の外に目をやった。
母のベッドは四人部屋の窓際だった。昨日はそんなところに気が回らなかったが、この病棟は4階なので外の景色がよく見えた。
病院の周りは意外に緑がたくさんあった。緑の木々もあれば、もう既に赤や黄色に色づく木々も混じっている。病院の敷地の隣には大きな池が見えた。池には水鳥が軌跡を残しながら水面を滑っていた。
窓は事故防止のためか大きく開かないようになっていたが、空気を入れ替えられる程度は押し開ける事が出来る。そっと窓を開けると少し冷たい空気がすうっと吹き込んできた。見晴らしはいいが窓際だけに朝夕は少し寒いかもしれない。そう思い、窓を閉める。悪くない景色だ。母も自分も少しは気がまぎれるだろう・・・。
昼を過ぎて母が病室に戻ってきた。麻酔の効いている間は平気そうな顔をしていたが、だんだん顔をしかめながら痛みを訴えるようになってきた。夕食が運ばれてくる頃にはピークだったようで、ほとんど夕食には手をつけなかった。
「ちょっとでも食べておいたら?痛み止めも飲めないよ。明日からリハビリも始まるとか言ってたよ、看護師さん。最近は早くから動かすのね。」
「牧子、代わりに食べて。」
「それはないでしょ。」
めちゃくちゃな事をいうものだ。母はそういいながら少しだけ食事に箸をつけた。
母の様子が気にかかったが、消灯時間に病院を出た。こんな生活が当分続くのかと思うと少し気が重くなった。
母の回復は順調と言えた。翌日の午前中はまだ痛みを訴えていたが食事もちゃんと食べたようだった。午後には病室に理学療法士が訪れ簡単なリハビリに取り組んでいた。鎖骨には金具が入っているので緩やかになら動かしても支障はないらしい。入院自体は一週間ほどになりそうだった。
水曜日になると牧子も少し精神的に余裕が出てきて、これまでよりも遅い時間に家を出た。母の顔を見たのは昼食前だった。
ベッドの上での食事は嫌だという母のため、詰め所前のホールに食事を持って移動した。母の食欲は旺盛で、二日前の様子が嘘のようだった。
「ちゃんと食べないと骨がひっつかないじゃない。牛乳とか小魚とか、買ってきてよ。」
「・・・食べ過ぎるとコレステロール上がるんじゃないの?」
二人の会話が聞こえたのか、詰め所でカルテを書いていた若いナースが吹き出した。
母の食事が終わってから、牧子は最上階の食堂に一人向かった。エレベーターを降りると大きな窓が目の前に広がっていた。
母の病室から見るよりも更に開けた眺望だ。秋の空の蒼さが目にしみる。下を見ると病室から見えていた池の形がよくわかった。
目の前を不意に大きな鳥が横切った。鳥は池に向かっていき、水の上に降りていった。どこかから渡ってきた鴨だろうか。もうそんな季節なのか・・・と改めて感じる。緑の少ない都会に長くいると、季節の移り変わりにもだんだん無頓着になっているようだった。
牧子は硝子に額をつけ、池の上に目をこらした。たくさんの水鳥が見えた。皆どこからかやってきて、春が来るとまた何処かへ飛び立っていく。今ここに来ている鳥達はやはり来年の冬にここに帰ってくるのだろうか。
夏のツバメ達もそうだ。いつの間にか街から姿を消していた。今頃どこか暖かい国で飛び交っているのだろう。また次の夏には日本に帰ってくるけれど、同じ鳥が帰ってきているのだろうか。そんな事がふと気になる。専門家ならわかるのだろうが、牧子にそんな術はない。牧子はすっかり鳥達に心奪われていた。
どのくらいそうしていたのか・・・。
「何かおもしろいものでもありますか?」
不意に声を掛けられ、びっくりした。いつの間にか隣に人が立っていたのに少しも気がつかなかった。その人物を見上げて更に驚く。
「雅博!」
大阪にいるはずの雅博が牧子の隣に立っていた。いつものように優しい屈託の無い笑顔を浮かべて。
「なんで?仕事はどうしたの?!」
「今日、休演日なんだ。今朝の始発の新幹線でこっちに帰ってきた。すぐに帰らなきゃいけないけど、どうしても気になって。」
なにか言葉を返したかった。色々な言葉が一度にこみ上げ、結局何も出てこない。胸が痛かった。
牧子はそっと手を伸ばし、雅博のセーターの袖を握り締めた。そして額を胸に押し付ける。雅博の手が優しく肩にかかった。
「すぐに来れなくて悪かったね。」
牧子は無言で首を横に振った。ここしばらくの胸のつかえがゆっくりと溶けていくようだった。これほど幸せな気持ちになったことはなかった。このまま全てが止まってしまえばいい。心からそう願った。
母の足のギプスがとれ、鎖骨の二度目の手術が済んだのは暦が変わってしばらくした頃だった。最初の一ヶ月ほどは牧子は実家に留まって母の手伝いをしていたが、母は「寝たきりじゃないんだから、大丈夫よ!!」と言い張るので、それ以後は家に帰り、仕事の休みごとに帰省し母の様子を見た。年末は少し早めに休みを取り実家に帰った。久しぶりにゆっくりと年末年始を母と過ごした。
雅博は相変わらず忙しく家にいない事が多かったが、牧子は自分でも不思議なほど落ち着いていた。今までの混乱した気持ちはなんだったのかと首を傾げたくなるほどだ。憑き物がおちるとはこういう気持ちなのだろう。
年明けに二人で外出をした。久しぶりのデートらしいデートだ。雅博が出演した映画が封切られたのでそれを観に行った。
「招待券もあるのに。」
と、雅博は言ってくれたのだが牧子はちゃんとお金を払って観たいと思ったのだ。
「興行成績に貢献します。ま、微々たるものだけどね。」
牧子はそういって笑った。
二人で映画を観、食事をし、ぶらぶらと街を散策する。いつかの週刊誌の事もあったので、最初は少し不安もあったのだが、雅博は相変わらず街に出ると風景に溶け込んでしまい、普通の青年そのものでほとんど人目を引くことが無かった。時々、振り返る人がいないでもないのだがそれ以上の事はなかった。
「それっていいのか悪いのか・・・。」
「いいんだよ、それで。」
首をかしげる牧子の手を取り、自分のコートのポケットに入れる。
「こんな事も出来るし。」
少し照れたような笑顔だった。
宝飾店の前でふと牧子は足を止めた。有名なブランドの店などではなく、若い子が普段身につけるようなカジュアルな店だ。
「指輪?買おうか?」
雅博がいたずらっ子のような表情で覗き込む。牧子は笑いながら首を振った。
「そうじゃなくて、ピアス見たいの。」
二人は中に入った。雅博はピアスにはあまり興味が無いらしく、指輪やネックレスといった物を見ている。その光景があまりにも似合わないので思わず牧子は笑ってしまった。
牧子はピアスの陳列を見て回った。普段使うようなちょっとした石のついたピアスを二つほど手にした。
ふと、一角に目が留まった。ピアスではなく、小さな銀色のイヤカフ。小さな羽根が彫りこまれている。上品なデザインだった。牧子はそのイヤカフに吸い寄せられるように手を伸ばした。
店を出ると二人はカフェに入った。屋外のテラスにいくつかテーブルが有るお洒落な店だった。二人は外の席についた。
穏やかな陽の光が照り、思ったよりも暖かい。夕方までにはまだ時間が少しあった。
「何買ったの?」
雅博が聞いたので、牧子はバッグから小さな紙袋を出し中身を出した。小さなピアスが二組とイヤカフが出てきた。
「これは?」
雅博がイヤカフを指差す。牧子は一つ摘むと、雅博の耳に手を伸ばした。
「僕の?」
「穴開いてないでしょ。・・・こっちも。」
耳の縁に銀色のイヤカフをつけ、もう片方の耳にも同じようにつける。
髪に隠れて目立たないが、少し印象が変わった。
「う~ん、こんなの初めてつけた・・・。似合ってるの?ほんとに?」
雅博は笑いながらうなずく牧子からコンパクトの鏡を見せられ、半信半疑で覗き込む。
「どうなんだ、これって。」
悩む雅博の耳に光るイヤカフを牧子は目を細めながら見つめた。
病院の窓から毎日のように眺めた池の風景を思い出す。水面から羽ばたきながら飛び立つ鳥の姿と目の前の愛しい青年の姿が重なった。
渡り鳥の足には時々小さな足環がつけられている。研究者が調査をするためにつけたモノだそうだ。ここを飛び立った鳥がどこに飛んでいくのか見守るために。そしてちゃんと帰ってきたかを見届けるために。
そう。このイヤカフは私の祈りであり、おまじない。
貴方がちゃんと行きたい処に辿り着きますように。
私の元に無事に帰ってきますように。
そして
いつも私とどこかで繋がっていますように。
牧子の思いを包み込むような穏やかな冬の日差しがゆっくりと傾いていった。
終
母が連れて行かれた後、年配の看護師に軽く肩をたたかれる。
「大丈夫よ、心配ないから。」
よほどわざとらしい笑顔だったのだろう。雅博のように役者にはとてもなれそうになかった。
母がいない間に、牧子はベッドの隣にある小灯台に着替えを移していった。それが終わると、売店に向かい、洗面道具などこまごました物を買い揃える。暇つぶしの雑誌でも買おうかと平積みされた雑誌類を眺めると、例の写真週刊誌が目に付いた。牧子は眉をひそめた。週末の顛末が思い出される。一連の事は思い出したくなかった。結局、雑誌を買う意欲を無くし、必要な物だけを買うと病室に上がった。
買ったものをまた、小灯台に収めていくとあっという間に小灯台は満タンとなった。やる事がなくなったので、仕方なくパイプ椅子に腰を下ろし大きな溜息を一つつくと、窓の外に目をやった。
母のベッドは四人部屋の窓際だった。昨日はそんなところに気が回らなかったが、この病棟は4階なので外の景色がよく見えた。
病院の周りは意外に緑がたくさんあった。緑の木々もあれば、もう既に赤や黄色に色づく木々も混じっている。病院の敷地の隣には大きな池が見えた。池には水鳥が軌跡を残しながら水面を滑っていた。
窓は事故防止のためか大きく開かないようになっていたが、空気を入れ替えられる程度は押し開ける事が出来る。そっと窓を開けると少し冷たい空気がすうっと吹き込んできた。見晴らしはいいが窓際だけに朝夕は少し寒いかもしれない。そう思い、窓を閉める。悪くない景色だ。母も自分も少しは気がまぎれるだろう・・・。
昼を過ぎて母が病室に戻ってきた。麻酔の効いている間は平気そうな顔をしていたが、だんだん顔をしかめながら痛みを訴えるようになってきた。夕食が運ばれてくる頃にはピークだったようで、ほとんど夕食には手をつけなかった。
「ちょっとでも食べておいたら?痛み止めも飲めないよ。明日からリハビリも始まるとか言ってたよ、看護師さん。最近は早くから動かすのね。」
「牧子、代わりに食べて。」
「それはないでしょ。」
めちゃくちゃな事をいうものだ。母はそういいながら少しだけ食事に箸をつけた。
母の様子が気にかかったが、消灯時間に病院を出た。こんな生活が当分続くのかと思うと少し気が重くなった。
母の回復は順調と言えた。翌日の午前中はまだ痛みを訴えていたが食事もちゃんと食べたようだった。午後には病室に理学療法士が訪れ簡単なリハビリに取り組んでいた。鎖骨には金具が入っているので緩やかになら動かしても支障はないらしい。入院自体は一週間ほどになりそうだった。
水曜日になると牧子も少し精神的に余裕が出てきて、これまでよりも遅い時間に家を出た。母の顔を見たのは昼食前だった。
ベッドの上での食事は嫌だという母のため、詰め所前のホールに食事を持って移動した。母の食欲は旺盛で、二日前の様子が嘘のようだった。
「ちゃんと食べないと骨がひっつかないじゃない。牛乳とか小魚とか、買ってきてよ。」
「・・・食べ過ぎるとコレステロール上がるんじゃないの?」
二人の会話が聞こえたのか、詰め所でカルテを書いていた若いナースが吹き出した。
母の食事が終わってから、牧子は最上階の食堂に一人向かった。エレベーターを降りると大きな窓が目の前に広がっていた。
母の病室から見るよりも更に開けた眺望だ。秋の空の蒼さが目にしみる。下を見ると病室から見えていた池の形がよくわかった。
目の前を不意に大きな鳥が横切った。鳥は池に向かっていき、水の上に降りていった。どこかから渡ってきた鴨だろうか。もうそんな季節なのか・・・と改めて感じる。緑の少ない都会に長くいると、季節の移り変わりにもだんだん無頓着になっているようだった。
牧子は硝子に額をつけ、池の上に目をこらした。たくさんの水鳥が見えた。皆どこからかやってきて、春が来るとまた何処かへ飛び立っていく。今ここに来ている鳥達はやはり来年の冬にここに帰ってくるのだろうか。
夏のツバメ達もそうだ。いつの間にか街から姿を消していた。今頃どこか暖かい国で飛び交っているのだろう。また次の夏には日本に帰ってくるけれど、同じ鳥が帰ってきているのだろうか。そんな事がふと気になる。専門家ならわかるのだろうが、牧子にそんな術はない。牧子はすっかり鳥達に心奪われていた。
どのくらいそうしていたのか・・・。
「何かおもしろいものでもありますか?」
不意に声を掛けられ、びっくりした。いつの間にか隣に人が立っていたのに少しも気がつかなかった。その人物を見上げて更に驚く。
「雅博!」
大阪にいるはずの雅博が牧子の隣に立っていた。いつものように優しい屈託の無い笑顔を浮かべて。
「なんで?仕事はどうしたの?!」
「今日、休演日なんだ。今朝の始発の新幹線でこっちに帰ってきた。すぐに帰らなきゃいけないけど、どうしても気になって。」
なにか言葉を返したかった。色々な言葉が一度にこみ上げ、結局何も出てこない。胸が痛かった。
牧子はそっと手を伸ばし、雅博のセーターの袖を握り締めた。そして額を胸に押し付ける。雅博の手が優しく肩にかかった。
「すぐに来れなくて悪かったね。」
牧子は無言で首を横に振った。ここしばらくの胸のつかえがゆっくりと溶けていくようだった。これほど幸せな気持ちになったことはなかった。このまま全てが止まってしまえばいい。心からそう願った。
母の足のギプスがとれ、鎖骨の二度目の手術が済んだのは暦が変わってしばらくした頃だった。最初の一ヶ月ほどは牧子は実家に留まって母の手伝いをしていたが、母は「寝たきりじゃないんだから、大丈夫よ!!」と言い張るので、それ以後は家に帰り、仕事の休みごとに帰省し母の様子を見た。年末は少し早めに休みを取り実家に帰った。久しぶりにゆっくりと年末年始を母と過ごした。
雅博は相変わらず忙しく家にいない事が多かったが、牧子は自分でも不思議なほど落ち着いていた。今までの混乱した気持ちはなんだったのかと首を傾げたくなるほどだ。憑き物がおちるとはこういう気持ちなのだろう。
年明けに二人で外出をした。久しぶりのデートらしいデートだ。雅博が出演した映画が封切られたのでそれを観に行った。
「招待券もあるのに。」
と、雅博は言ってくれたのだが牧子はちゃんとお金を払って観たいと思ったのだ。
「興行成績に貢献します。ま、微々たるものだけどね。」
牧子はそういって笑った。
二人で映画を観、食事をし、ぶらぶらと街を散策する。いつかの週刊誌の事もあったので、最初は少し不安もあったのだが、雅博は相変わらず街に出ると風景に溶け込んでしまい、普通の青年そのものでほとんど人目を引くことが無かった。時々、振り返る人がいないでもないのだがそれ以上の事はなかった。
「それっていいのか悪いのか・・・。」
「いいんだよ、それで。」
首をかしげる牧子の手を取り、自分のコートのポケットに入れる。
「こんな事も出来るし。」
少し照れたような笑顔だった。
宝飾店の前でふと牧子は足を止めた。有名なブランドの店などではなく、若い子が普段身につけるようなカジュアルな店だ。
「指輪?買おうか?」
雅博がいたずらっ子のような表情で覗き込む。牧子は笑いながら首を振った。
「そうじゃなくて、ピアス見たいの。」
二人は中に入った。雅博はピアスにはあまり興味が無いらしく、指輪やネックレスといった物を見ている。その光景があまりにも似合わないので思わず牧子は笑ってしまった。
牧子はピアスの陳列を見て回った。普段使うようなちょっとした石のついたピアスを二つほど手にした。
ふと、一角に目が留まった。ピアスではなく、小さな銀色のイヤカフ。小さな羽根が彫りこまれている。上品なデザインだった。牧子はそのイヤカフに吸い寄せられるように手を伸ばした。
店を出ると二人はカフェに入った。屋外のテラスにいくつかテーブルが有るお洒落な店だった。二人は外の席についた。
穏やかな陽の光が照り、思ったよりも暖かい。夕方までにはまだ時間が少しあった。
「何買ったの?」
雅博が聞いたので、牧子はバッグから小さな紙袋を出し中身を出した。小さなピアスが二組とイヤカフが出てきた。
「これは?」
雅博がイヤカフを指差す。牧子は一つ摘むと、雅博の耳に手を伸ばした。
「僕の?」
「穴開いてないでしょ。・・・こっちも。」
耳の縁に銀色のイヤカフをつけ、もう片方の耳にも同じようにつける。
髪に隠れて目立たないが、少し印象が変わった。
「う~ん、こんなの初めてつけた・・・。似合ってるの?ほんとに?」
雅博は笑いながらうなずく牧子からコンパクトの鏡を見せられ、半信半疑で覗き込む。
「どうなんだ、これって。」
悩む雅博の耳に光るイヤカフを牧子は目を細めながら見つめた。
病院の窓から毎日のように眺めた池の風景を思い出す。水面から羽ばたきながら飛び立つ鳥の姿と目の前の愛しい青年の姿が重なった。
渡り鳥の足には時々小さな足環がつけられている。研究者が調査をするためにつけたモノだそうだ。ここを飛び立った鳥がどこに飛んでいくのか見守るために。そしてちゃんと帰ってきたかを見届けるために。
そう。このイヤカフは私の祈りであり、おまじない。
貴方がちゃんと行きたい処に辿り着きますように。
私の元に無事に帰ってきますように。
そして
いつも私とどこかで繋がっていますように。
牧子の思いを包み込むような穏やかな冬の日差しがゆっくりと傾いていった。
終
でも本当に役者「堺雅人」の歴史の始まりから繋がっている、応援されているファンの方って本当にたくさんいらっしゃるでしょうね。「心の中」では「牧子」さん・・みたいなファンの方って堺さんには、多い気がします。私も新参者ファンです。それこそ堺さんの「始まり」から応援されている方達には何ていうのか・・・「勝てない?」変な言い方ですけれど・・・でも「堺さんを見つけることが出来た!!」そして「ささやかながら応援する」事ができているおばさんになれて良かった!!!(笑)と思っています。またどんどん書いて下さいね。楽しみにしています。ちえぞーさんのように才能のある方がうらやましいです。堺さんもですけれど、何かができて、「形」に残せる人が本当に羨ましいです。感想を纏められなくて長々とすみませんでした。
萌えて頂けましたでしょうか(笑)。雅博→堺雅人に変換してもらえていたならば、私の企ては大成功!です。ついでに牧子にご自分を投影してもらえていたら結構萌え萌えかな?・・・などと企んでおりました(爆)。
才能などともったいないお言葉で・・・。自分が楽しめて、他の人も楽しめたらそれで満足というレベルですので・・・。極めて自己満足のみの趣味ですが、またお付き合いいただけたら光栄です~。
takkyさんの御贔屓はちなみにどなたでございましょうか?私は堺さんの他に渡辺謙とか中村吉衛門とか、時代劇の似合う日本男児が好みなのですよ。やっぱり男は丁髷と褌だ~!!