AKB48が3月26日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで行ったライブ『AKB48 春の単独コンサート~ジキソー未だ修行中!~』で、「AKB48 春の人事異動」を発表した。
同ライブ中にも、チーム8初の選抜メンバーによる新ユニットが結成されることや、40thシングル『僕たちは戦わない』の表題曲センターを島崎遥香が務めることなどが明かされたが、「AKB48 春の人事異動」ではさらに大きな発表が行われた。まずは乃木坂46の生駒里奈とSKE48の松井玲奈による“交換留学”が解除されること、 AKB48の北原里英がNGT48に移籍してキャプテンを務めるほか、AKB48の柏木由紀がNMB48との兼任を離れ、NGT48との兼任に。そのほか各チームのキャプテンや兼任解除メンバー、異動メンバーが発表されたあと、最後にはAKB48の川栄李奈が襲撃事件の影響で握手会に参加できないことや女優への道を目指すことを理由に、グループを卒業する旨がアナウンスされた。
さまざまな動きがあった今回の人事異動だが、この背景からどういったことが読み取れるだろうか? 『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者であり、AKB48グループに詳しいライターの香月孝史氏は、まずは川栄の卒業発表とチーム編成についてこう分析する。
「川栄は次世代を背負って立つメンバーとして期待されていたため、卒業発表の衝撃 は大きいです。しかし、AKB48に在籍する限りは、握手会というイベントは必須になってくるため、『いつ復帰するの?』という目で見られることには耐えがたいものもあったでしょう。昨年はドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)に出演するなどして女優としての場を与えられていたため、これからの彼女に期待したいです。チーム編成に関しては、チーム4が高橋朱里をキャプテンに置き、副キャプテンには岡田奈々が就任したことで、創設時の“若手のみである程度回していく”というテーマに準じたものになった。兼任では田島芽瑠さん以外のてんとうchu!メンバーが入るなど、層も厚くなり、見どころは多そうですね。一方、チームKに関しては、峯岸みなみさんのキャプテン就任は収まりの良い決断だと思いますが、他のチームと見比べたときに、まだチームカラーがハッキリ見えず、未知数な部分がかなりあります」
続けて、北原と柏木がそれぞれ新グループNGT48に移ることについて、同氏は劇場公演の重要性から明るい話題だと語る。
「姉妹グループに主要メンバーを移籍させるのは、偶発的とはいえHKT48における指原莉乃という大成功例があります。彼女が道を作ったことにより、ファンも今回の北 原移籍をポジティブに受け取ることができるようになった。北原は元来AKB48のなかで立ち位置も固まってきている人ですし、グループにそのまま居て新鮮な面を見せるのは難しいかもしれないので、今回の移籍によって彼女がまた新たな一面を見せるかもしれないという楽しみがありますね。また、48グループはどこも劇場公演を軸にしていくというコンセプトはブレないので、劇場公演での評価が高い柏木さんと北原さんの2人が土台作りの段階から関わるということは、グループにとっていいスタートダッシュを切れる材料となるでしょう」
また、姉妹グループ所属の兼任メンバー解除や、生駒と松井の交換留学終了については、運営の判断の変化を感じるという。
「乃木坂46とAKB48グループは、本来交わらないものとして一線を引いていたなか、 2014年の『大組閣』で交換留学が発表され、激震が起こりました。当初は賛否両論ありましたが、生駒がAKB48から外の空気をグループに持ち込んだり、松井がパフォー マンス面でグループを引っ張ったりと、乃木坂46に対する影響は大きかったですし、 2014年から2015年初頭の大躍進も、この施策がハマっていたことが大きいでしょう。一方で姉妹グループ同士の兼任解除については、HKT48は村重杏奈(NMB48兼任)と田中菜津美(SKE48兼任)が、NMB48は山田菜々(SKE48兼任)と渡辺美優紀(SKE48兼任)が、SKE48は木本花音(HKT48兼任)と高柳明音(NMB48兼任)が解除されました。地方グループ同士の兼任は、それなりに効果を生んだとは思うのですが、運営としてはテスト的な側面も強かったのだと思います。姉妹グループ同士が磨き合うという意味では、兼任も一つの手ではあったと判断したでしょうが、1年経過して『それぞれが独立していたほうがクリアになる』という判断に変わったのでしょう。また、 ここまで姉妹グループが成長を遂げ、それぞれが戦えるようになったことも大きいです」
島崎のセンターに関しては、グループの序列的にも妥当であり、渡辺麻友の役者としての活動を考慮した結果だと推察する。
「ここまでWセンターが続いていたなかで、島崎が単独センターとして抜擢されましたが、AKB48の若手では一番センターに近かった人間のため、特に大きな衝撃は無いでしょう。前回の総選挙シングルでセンターを務めた渡辺麻友は、主演ドラマ『戦 う!書店ガール』がスタートすることもあり、センターとしてというよりは、色んなベクトルで活躍してもらうことを選んだのだと思います。これは先日総選挙への不出馬を表明した松井玲奈も同じで、AKB48卒業後のキャリアのために、順位や立ち位置に縛られず、一人の人間としての評価を高めていくフェーズだということの象徴でしょう。すでに卒業しているメンバーからも見受けられますが、元AKBという冠をいかに外すかが全メンバーにとって大事になっているし、グループに居ながら独立していくというやり方を、松井さんは綺麗な形で体現しつつあるのではないでしょうか」
2015年は、それぞれが切磋琢磨しながら新グループ設立へと向かい、ベテランメンバーは次のステップへの準備を進める一年となりそうだ。