daiozen (大王膳)

強くあらねばなりませぬ… 護るためにはどうしても!

家長制度(2)

2014年09月14日 | 宮沢賢治-鑑賞
(意訳)

炉の油が燻ぶる向うがわ、この家の主の席が設けられている、

大黒柱を切り取ったかと思う逞しい膝がどっしり揃えられている。

夜の闇のなかを先程、この家の息子たちが音も立てず帰ってきた。

肩幅の広いガッチリした身体に蓑をつけた息子たち、

汗で寒天みたいに黒光りした四~五匹のデッカイ馬を連れていた、

かれらは馬を厩に入れて何やらマジナイみたいにしていた、

それから気配を消して土間で飯を食べていたが、

厩の辺りの藁や草のなかに転がるように寝てしまった。



ウッカリ気に入らないことを言おうものなら、

たちまち息子の誰でも私を片手で表の闇に引きずり出せるだろう。

そのような巨体がいくつもモノも言わずに眠っている、

いや、たぶん眠っているのだ。



黒い油煙を上げる灯火の下、女性が一人、食べ物を用意している。

それはまるで鬼にさらわれて、洗濯でもさせられているよう、

女性はどうやら私のための食事をこしらえているようなのです、

それなら要らないとさっき断わったのですよ…。



とつぜん、ガタリと音が響いた。

重い陶器の皿か何かが滑って床に落ちたのだ。

主人は黙って立って、女性のほうへ歩いて行った。

それから三秒ばかり、しんと静まって、

主人はもとの席へ戻ってきてどしりと座った。

どうやら、女性はぶたれたようでした…。

音を立てないように撲ったのです…。

その証拠に土間の人の気配は消えて死人のように静まって、

主人の目玉は古びた金貨のようにして鈍く光っている、



それで私は辛くて悲しくて身の置き所もなくて堪らない。



原典 ⇒ 「家長制度」です。


わたしは思うのです。



借金の形(かた)に取られたか、売られてきたか、

いずれにしても、この女性にはマトモに食べ物もあてがわれない、

食べ物をマトモに食べてさえいれば、皿を落とすこともない、

誰よりも朝は早く起きて、誰よりも夜は遅く寝ているに違いない、

そして朝早くから眠りに就けるまで一日中休みなく働いている、

誰よりも粗末な物を、誰よりも少なく食べて、一番よく働く女性、



このような様子を見て、ある人たちは言うでしょう。

この主人は人間じゃない、人間の皮をかぶった鬼だ、畜生だと、

憎い、憎い、憎いと呪うかもしれない、

やっつけろ、あいつらをやっつけろと叫ぶかもしれない、



また、ある人たちは言うでしょう。

弱い者は損だ、真面目に暮すのはバカバカしい、賢く生きようぜ、

お金は汚く稼いでキレイに使って楽しく生きたら好い、

人に使われるのは損、お金は儲けた人の勝ち、上手く稼ごう、



多くの世間の親たちは子供に言うでしょう。

「勉強しなけりゃ、この女の人みたいになるよ」って…。



そしてこれらの人たちは「自分の考えしかない」と思っている。

もしかして、あなたの考えもこれらに属していませんか?

多くの政治家も、多くの権威・権力も、同じような考えをしてる。



 あなたもやはり、似たお考えでしょうか?

 もっと良いお考えを、お持ちでしょうか?


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