マエストロ岩城さん、どこかのホールで舞台に一歩踏み出したとき、右腕をムンズと掴まれて、引き戻されたらしい。「何するんだヨ?!」 驚くマエストロ岩城さんに、ステージマネージャーが言った。「マエストロ。コ、これは困るんでサー」
あはは、驚いたことにマエストロ岩城さんは、ヘアブラシを掴んで出て行こうとしていたんだって!
ヘアブラシをもぎ取られて、そのまんま指揮棒なしで一曲目を指揮したんだそうな!
どうも、今から演奏する曲を髪を梳かしながらも頭の中でさらっていたらしい。ついには櫛を指揮棒のかわりに振っていたのかも。そして、持ち出したってわけだ。
かくもゆかいなお話が続くから、指揮者のエッセイは読みたくなる。文章上手は芥川也寸志さんも名文家だったなあ。
女性で、指揮者として現在、本物の恒常的な活動を続けているのは、松尾葉子さんひとりである。とマエストロ岩城さんが書いている。オオ、松尾葉子さん!!
平成12年の12月16日に高槻市コンサート協会の主催で、ベートーベン作曲・合唱『第九』の演奏会があった。アタシはソプラノで参加した。そのときに指揮をしたのが、松尾葉子さんではないか。演奏は、関西フィルハーモニー管弦楽団だった。1982年フランスのブザンソン指揮者コンクールで、女性としては史上初めて、また日本人としては小澤征爾に次いで二人目の優勝という壮挙により、一躍注目を集めた才媛であるそうな。とても自信に満ち溢れた、力強い指揮ぶりであり、すっかり安心して気持をゆだねられた。懐かしーい。
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『指揮のおけいこ』 岩城宏之 著