白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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形と効率

2017年10月30日 23時45分08秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、申眞諝八段と柯潔九段の対局に現れた場面をご紹介します。



1図(テーマ図)
申眞諝八段の黒番です。
コウ争いの最中、白△と切られました。
これは白AとBの2つの切りを見合いにしたものですが、黒はどう受けますか?





2図(変化図)
Aの傷を黒1と守れば、白2、4です。
黒△が捕まっては、もちろん黒がいけません。





3図(変化図)
ではAの方を黒1と守るぐらいかと思えますが、すると白2~6と黒△を取る手が大きいです。
地だけの問題ではなく、黒×全体に2眼無くなります。





4図(実戦)
ということで、実戦は黒△と四角を作りました!
元々空き三角の愚形でしたが、これはさらに酷い形です。
死活問題で4目中手を狙う際には時々現れますが、守りのために打ったケースは殆ど見たことがありません。

しかし、実際のところこの手により白Aには黒Bで取れますし、白C、黒D、白Eにも黒Fで大丈夫です。
一手で両方を凌ぐことに成功しています。


一般的に、石の形の良し悪しを判断する場合には見た目の美しさを基準にしています。
美しい形は良い手になることが多いので、それらを覚えておくことは死活の力と同じぐらい大切です。
ですが、時には見た目の形が悪くても、その状況に応じた効率の良い形を打つべき時もあります。
本局はその好例でしたね。