白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

碁聖戦第2局

2017年07月19日 21時17分01秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
新作「やさしく語る 布石の原則」の表紙カバー(仮)ができました。



発売まではまだ時間があるので、これから変更される点もあるかもしれませんが、大体こんな感じになります。
「やさしく語る 碁の本質」の続編であることがすぐに分かるデザインですね。
実際に本になる日が待ち遠しいです。

さて、本日は第42期碁聖戦挑戦手合五番勝負【主催:新聞囲碁連盟】第2局が行われました。
棋譜や解説は幽玄の間でご覧頂くとして、当ブログでは私が注目した場面をご紹介しましょう。



1図(実戦)
白1と大股に開き、黒2の打ち込みには軽やかに白3とボウシ!
黒Aのハザマが空いていますが、白△を捨てる作戦なので許される手です。
黒Aには白Bと三々に入り、白△を取っても小さな地しかできません。

この打ち方は、まるで置碁の白のようで面白いですね。
最近研究されている手だそうですが、Masterの影響と思われます。
(Master対棋士・第10局)





2図(変化図)
ここからは対局者ならではの厳しさ、と感じた場面をご紹介して行きます。
36手目では、私ならノータイムで白1です。
他の手はほとんど浮かびません。
この手だと黒AやBから捌かれて戦いが終わる可能性がありますが、それはそれで仕方ないと感じます。

実戦の打ち方は、黒に対して厳しい代わりに、挟んだ石への負担も大きいです。
右側に黒の壁が控えているので、私は白が怖いと感じます。
力に自信のある山下九段らしい選択ですね。





3図(実戦)
42手目では、白1から切断を狙えば堅実です。
私の第一感でしたが、これはいかにもヌルいですね。
実戦の打ち方には有無を言わさぬ力強さがありました。
しかし、井山碁聖が冷静に受け流し、形勢は黒が打ちやすくなったでしょうか?





4図(実戦)
71手目の黒1には、白2と押さえる一手! というのが形の常識です。
しかし、実戦は山下九段が物凄い手を繰り出して行きました。

私も盤の前に座っていれば、白2と押さえない手を考えるかもしれません。
しかし、実際にはもっと前からこの場面を想定していた筈です。
私なら、こんな手は上手く行きそうもないな、と考えるのをやめてしまいそうですが、流石にタイトルを争う棋士は踏み込みますね。

勝負という面から見れば、本局は井山碁聖の完勝でしたね。
形勢の悪い碁も簡単には勝たせない山下九段ですが、本局はあまり粘れませんでした。
力の出しにくい碁形になってしまったようです。
第3局には修正して臨むでしょうから、好勝負を期待しましょう!