白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

AIの弱点

2017年07月18日 22時00分00秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
幽玄の間での若手棋士とDeepZenGoの対局は、もうすぐ累計100局に達しそうですね。
過去の棋譜は、
ソフト右上の保存棋譜ボタン→大会サーバーの棋譜タブを選択→「ハンドルネームで検索」にチェックを入れ、「DeepZenGo」と入力→検索開始
という手順でご覧頂けます。



上記の手順で、このように一覧表示されます。
太字で表示されているのが勝者です。


さて、本日はDeepZenGoと伊田篤史八段の対局で驚いた場面をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
伊田八段の黒番です。
DeepZenGoが白1、3と出切って仕掛けました。
白△を捨てた代わりに、外側で優位を築こうとしています。
いかにもDeepZenGoらしい打ち方と感じます。

大きな戦いはDeepZenGoの得意分野です。
こうなると人間には分が悪いのではないかと思いました。
しかし、1つ落とし穴が・・・。





2図(実戦)
黒1に対して、白は下辺を生きなければいけないのですが、白2、4とは!
何の変哲も無い手に見えるかもしれませんが、私はビックリして思わず声が出ました。





3図(実戦)
黒2、4から絞られ、5目中手です。
プロはもちろん、アマ高段者レベルでも瞬間的に見える死活なのですが・・・。
当然ながらこの碁は黒勝ちになりました。





4図(変化図)
ハネツギでなく、白1、3のハネカケツギなら問題無く生きていました。
これも簡単な手ですね。


多くの囲碁AIには、大局観に優れ、部分に弱いという特徴があります。
これは一般的なイメージと違いますし、当初私も勘違いしていたところですね。

そして、この部分に弱いというのは、囲碁に限らずAIの大きな課題になるような気もします。
囲碁は部分でいくら損をしても最後に勝てば良いですが、実社会では細かいミスが許されないこともありますからね。
AIが大局的な判断をして、人間が部分的判断を補助する、そんな未来を想像しています。