以下引用 NHK KEWS WEB 5月25日 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160525/k10010534801000.html
東京・立川市に住む耳が聞こえない登山家の男性が、3度の挑戦の末、今月21日に世界最高峰の山、エベレストの登頂に成功しました。
東京・立川市に住む登山家の田村聡さん(51)は、生まれつき耳がほとんど聞こえませんが、山好きの父親の影響で13歳から登山を始めました。
登山の訓練を共にした仲間によりますと、田村さんは音や耳で雪崩などを確認できないため、国内各地の高山で訓練を重ねて体全体で温度の変化や振動などを把握する能力を磨き、42歳のときには初めて8000メートルを超える山の登頂に成功しました。
その田村さんが念願としてきたのが世界最高峰の山、エベレストの登頂です。初挑戦となったおととしには、強風に阻まれ標高7950メートルの地点で撤退を余儀なくされたのに続き、去年は、登山途中にネパールの大地震が発生して再び中止となりました。
田村さんを支援しているグループによりますと、3回目となる今回は、今月18日から登り始め、日本時間の今月21日午前10時半にエベレストの登頂に成功したという連絡が本人から入ったということです。今回も酸素ボンベが壊れるトラブルが起きましたが、持っていたペットボトルで補強するなどしてようやく成功したということです。
父親の雅由さん(84)は「挑戦することが生きがいのような息子で、よくやったと言いたい」と話していました。田村さんと一緒に訓練し支援してきた狩野功さんは「本当にうれしい。耳の聞こえない人にエベレストは無理だというイメージを払拭(ふっしょく)する快挙で、帰ってきたら抱き合いたいです」と話していました。
出身のろう学校でも喜びの声
田村さんが通った東京・立川市のろう学校にも登頂成功の知らせが届き、後輩たちからは、諦めずに挑戦する姿に喜びや称賛の声が上がっています。
現在51歳の登山家の田村聡さんは、かつて東京・立川市にある立川ろう学校に通っていました。今回の挑戦を前にしたことし3月には、田村さんが母校を訪問して後輩たちに「応援してほしい」と話していたということです。
24日、学校には田村さんからエベレスト登頂を成功させたという知らせが、写真と共にメールで送られてきたということで、学校では早速印刷して掲示板に貼り付けていました。メールを読んだ高等部1年の女子生徒は、「すごくうれしかったです。諦めずに挑戦を続けた田村さんに自分も勇気づけられた。私も将来ダンサーになる夢に挑戦したい」と話していました。
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耳のハンディ越え最高峰に 立川の田村さん エベレスト登頂
以下引用 東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016052502000133.html
東京都立川市在住で聴覚障害のある登山家田村聡(さとし)さん(51)が世界最高峰のエベレスト(8848メートル)登頂に成功した。同市が24日に発表した。
登頂は、日本時間二十一日午前十時半ごろ。市によると、田村さんは耳の聞こえない人によるエベレスト登頂は世界初と説明しているという。全日本ろうあ連盟は、海外のケースは把握できないが、日本人では初とみられるとしている。
田村さんは生まれつき聴力がほとんどないが、十三歳から登山を始め、北アルプスの山々を登るなどして経験を重ねてきた。エベレストは三度目の挑戦。三月から高地トレーニングをしていたという。
市は、田村さんから寄せられた「アタック時に酸素マスクのトラブルがあり、酸素供給不足で、苦しい登頂でしたが、一生懸命全力を尽くしました。ただただ生きて下山することに精一杯(せいいっぱい)でした」などのメッセージを公表した。田村さんは六月初旬に帰国する予定。
田村さんは今回のエベレスト登頂のため、インターネットの「クラウドファンディング」で資金を募集。そのページで、挑戦の理由について「いまだ障害者に対する偏見や差別が色濃く残る世の中が変わることを信じて、健常者も障害者もみな平等だと世界に強く訴えます」と記していた。
同ページによると、田村さんは山好きの父と叔父の影響で登山を始め、北アルプスの山々を登った。高校生だった一九八〇年、日本の登山隊が北壁からエベレストに初登頂した新聞記事に衝撃を受け、エベレスト登頂を目標にした。
周囲から「耳が聞こえないんだから危険だ。やめた方がいい」と言われたこともあったが、登山を続け、山スキーの技術も磨いた。四十二歳の二〇〇七年、初の八千メートル級としてヒマラヤのチョ・オユー登山に成功。エベレスト登頂には一四年と一五年に挑戦したが、いずれも失敗していた。