因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

リーディング・フェスタ2012 戯曲に乾杯!より新人戯曲賞最終候補作プレヴュー・リーディング

2012-12-09 | 舞台番外編

 公式サイトはこちら 座・高円寺2 9日のみ
 日本劇作家協会主宰の第18回劇作家協会新人戯曲賞の最終候補に残った6作品、広田淳一『うれしい悲鳴』、石原燃『人の香り』、鈴木アツト『Global Baby Factory』、長谷川彩『メガネとマスク』、原田ゆう『見上げると魚と目が合うか?』、宮園瑠衣子『偽りのない町』のリーディング。夜は7人の劇作家による公開審査会が行われ、最優秀賞が決定する。

 プレヴュー・リーディングと銘打った今日は、冒頭にファシリテイターの楢原拓と、制作進行の丸尾聡が客席に挨拶、公演の流れを説明する。ひとつひとつの作品をすべて読むのではなく、冒頭の20分までときっちり決めて読むのだそう。考えてみれば60分の戯曲だとしても、6本よめばとんでもなく時間がかかってしまう。いたしかたない方法であろう。舞台には椅子が10脚ならび、楢原が作・演出をつとめるチャリT企画所属の俳優を中心とした今日の読み手が登場する。下手のテーブルに楢原が控えて、20分たったところでベルを鳴らし、次の作品にうつる。
 流れに滞りはなく、じゅうぶんな稽古もとれなかったと想像したが、俳優さんはステージデレクションと呼ばれるト書き担当の方を含めてきちんとしたリーディングを聴かせてくださる。
 舞台美術も小道具いっさいなし、俳優も座ったままで戯曲を読む。これ以上ないというほどシンプルなリーディングであった。

 すでに最終候補の6作品がまとめられた劇作家協会編「優秀新人戯曲賞2013」が発売されており、観劇前に購入したのだが当日までにすべてを読み切ることができなかった。しかしながら多くの応募作品から選ばれた戯曲はどれも違う持ち味があって読み応えがある。冒頭20分までのリーディングはいかにも惜しいと歯噛みする思いであった。たとえば登場人物が話しはじめる前に長いト書きがある作品は「もったいない」とじりじりし、また人物の出と入りや描写のしかたが比較的リーディングに適した作品は場面が想像しやすい。はじまって早々に作品の核を提示するものもあれば、20分の段階で本題にはいらないまま終わってしまったものもある。もったいないなぁ。
 全編を読んでいる作品に対しては、いま俳優に読まれているところからの展開を予想しながら聴けることに対し、読み切れなかった作品になると集中力を保ちにくかったことは確かである。じゅうぶんに予習してリーディングを聴くにしても、まっさらな気持ちではじめて聴くにしても、聴き手のあり方は楽しくもなかなかむずかしい。
 今日のリーディングを聴いた観客の感想や意見は審査に反映されるものではなく、またその必要もないと思うが、やはり20分でベルが鳴って終わるのは残念だ。願わくは2日間くらいの日程を組んで、最終候補作品をすべてきちんと聴く機会を設けていただきたい。

*9日夜の公開審査会において、最優秀作品は原田ゆう『見上げる魚と目が合うか?』に決まった由。審査の詳細は、後日公式サイトに掲載されるとのことだ。

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