因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ブラジル『さよなら また逢う日まで』

2008-05-18 | 舞台
*ブラジリィー・アン・山田脚本、演出 公式サイトはこちら こまばアゴラ劇場 20日まで
「今日はブラジルに行く」そう言っても家族は驚かなくなった。海外旅行ではなくて、ブラジルという劇団のお芝居に行くことを家族もよく知っている。驚くほどわずかな期間で、ブラジルは自分にとって重要な位置を占めるカンパニーに、ブラジリィー・アン・山田氏は常に気になる劇作家になったのである。(1,2,3)
☆本作はサスペンス、ミステリー、ホラー、ハードボイルド、いろいろな要素があります。未見の方はここから先、お読みにならないほうが☆

 廃屋のような建物の一室に男女が集まる。彼らは強盗グループであり、犯行に失敗して刑に服した仲間の一人が出所し、4年ぶりに一仕事しようと呼びかけた。皆わけありの人物ばかりで背景も過去も謎もあり、それらが互いに複雑に絡み合うさまが、決して説明台詞ではなく、テンポの早いやりとりで客席にばんばん飛んでくる。いかにも信用できない様子の者がいる一方で、予想もつかなかった展開になるので一時も気が抜けない。

 これは自分だけなのかもしれないが、今回特に「登場人物の名前がなかなか覚えられない」という現象が起こった。ブラジル所属の俳優はもちろん客演陣も非常に強烈で、役名よりも俳優名が先行してしまうせい、あるいは役名が記号的なのか?本作を見た人と感想を話し合ってみたとする。おそらく役名がすっすと出てこず、辰巳さんの役がとか、あのすごい長身の女の人(こいけけいこ/リュカ)が…となるのではなかろうか。そのせいか物語後半になるといよいよ人物関係もわからなくなり、「え、長谷川って誰だっけ?」などと混乱してしまうのであった。

 自分がブラジルに、ブラジリィー・アン・山田に何を求めているのか、わからなくなった。これが下北沢なら夜の喧騒にいつのまにか気が紛れるだろうが、駒場の町は静かである。否応でも自分の心の奥を覗き込むように考えてしまう。後味の悪い話も結構好きなのだけれど、人が死なない、殺されない、けれどほんとうに恐ろしい物語がみたくなった。

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