因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

演劇集団円「橋爪功と仲間たち 朗読の宴 50席ニ満タナイ劇空間ニ広ガル朗読ノ小宇宙」

2025-01-11 | 舞台
*公式サイトはこちら 1月11日(土)14時の回のみ 三鷹スタジオ円 
 筒井康隆作「関節話法」
 橋爪功の舞台の観劇は1982年初夏、当時西新宿・成子坂にあったステージ円での『アトリエ』が最初であった。すでに多くのテレビドラマや映画に出演しており、「ほんものの橋爪功」だと実感した記憶がある。当blogに観劇記録があるのは新国立劇場『ゴドーを待ちながら』(2011年4月)、橋爪功×シーラッハ『犯罪|罪悪』(2013年12月)、第5回したまち演劇祭in台東 したまちばなしー物語が生まれるところー『おとこのはなし』(2014年9月)、演劇集団円トライアルリーディング公演『虫たちの日』(2020年9月)・・・ほんとうはもっと観ているはずだが・・・。

 公演名の通り、橋爪功と劇団員による朗読公演で、昨年4月から毎月1回限り(休みの月もあり)開催されている。このたびはじめての観劇となった。JR三鷹駅南口から中央通りを徒歩数分、壁に「三鷹駅前第2市街住宅」と書かれた古い建物の2階が「三鷹スタジオ円」である。

 題名は「間接話法」ではなく「関節話法」。からだの関節を鳴らす癖のある男性が、関節を鳴らして会話する星に大使として派遣されるというSF小説である。「関節を鳴らして会話する」という小説家のワンアイディアに、主人公が七転八倒する様相がこれでもかと活写される。

 橋爪功は譜面台を持って登場、台本を置いて読み始める。およそ1時間立ったまま、時おり台を持って少し歩いたり、台本を手に持ったりなどの動きもあるが、小道具は無し。登場時や場面の要所でよくよく考え抜かれた音楽、音響、照明は途中で客席が明るくなる(パーティ会場の客席との見立てか?)ほかはほとんど素明かりのままだ。観客はただひたすら語る橋爪功に見入り聞き入り、荒唐無稽な短編の世界にあっけにとられ、後半はほぼ笑い通し、最後のひと言でふと得も言われぬ寂寥感に襲われるのである。

 改めて橋爪功は不思議な俳優である。前述のように数十年に渡って多くのテレビドラマに出演しており、最近も「6秒間の軌跡~花火師・望月宙太郎の憂鬱」シリーズ、「プライベートバンカーズ」が放映されている。御年83歳、出演が引きも切らない売れっ子である。しかし都度印象が新しく、ありきたりにならない。手練れだが、造形を準備する手つきが見えず、「自然に見せよう」という意図のない自然体というのか、演技派、性格俳優等々どの呼び方にもあてはまらない。まさに余人を以て代えがたい俳優であると思う。

 今回の『関節話法』でも複数の役柄を演じるが、作り過ぎない。小説家の無茶ぶりをおもしろがっているようにすら見える。客席に何かひと言あるかと思ったが、ご本人はほんとうに朗読本編のみで退場され少し淋しかったが、これもさっぱりして良い。2月はお休みとのこと。3月以降も出来るだけ足を運ぼう。2025年の観劇はじめはまことに渋く、シュールであった。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2025年1月の観劇と俳句の予定 | トップ | 因幡屋ぶろぐへようこそ! »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

舞台」カテゴリの最新記事