*公式サイトはこちら 浅草公会堂 26日終了
今年から座組が大きく変わり、大きな役、難しい役に挑戦する若手俳優の心意気がよりいっそう強く清々しい舞台となった。【昼の部】【夜の部】両方の覚書を少々。
今年から座組が大きく変わり、大きな役、難しい役に挑戦する若手俳優の心意気がよりいっそう強く清々しい舞台となった。【昼の部】【夜の部】両方の覚書を少々。
浅草歌舞伎恒例の楽しみのひとつ。担当する俳優は紋付き袴に素顔・・・と思っていたら、この日の中村鶴松は鬘も化粧もしっかり整えて登場。すぐ次の「絵本太功記」のお役を控えているためである。第一声は折り目正しく型通りだが、そのあとは開演前の客席をリラックスさせ、楽しい話で大いに盛り上げる。俳優それぞれに工夫があって、共演俳優の裏話や、別の日の【夜の部】担当の尾上左近は、ある俳優に自分のちょっと恥ずかしい話をこの場でネタにされたことへの仕返し(むろん冗談めかして)として相手の話をするなど、新しい趣向?である。今年はさらに、口上が締めくくられると、別の俳優が演目の解説を行うという試みがなされた。市川染五郎はメモや原稿を持つことなく、物語のあらすじ、登場人物の特徴、見どころや観劇のアドバイスまでまことにわかりやすい。ユーモアも交えるあたりもぬかりなく、立派なものだ。お年玉ご挨拶に俳優2名が付くことや、「絵本太閤記」の配役の一部がダブルキャストになっていること等々、なかなか厳しいと想像するが、若さは心身の切り替えも速いのだろう、ぬかりなく進めているようだ。
☆「絵本太閤記 尼ケ崎閑居の場」
【昼の部】武智十兵衛光秀役、19歳の市川染五郎の堂々たる演技。幕間では「おじいさん(白鷗)に似ている」との声しきり。前述の解説や「徹子の部屋」では、どちらかと言うと声も小さく控えめに話す印象だったが、演じるときの張りのある美しい声と明晰な台詞に驚いた。【夜の部】では旅僧実は真柴筑前守久吉を巧みに演じ、空恐ろしささえ。昼夜の配役がいささか混乱しており、同じ場でも家ごとに演じ方が異なるというところまでとても把握できず、大いなる課題になった。
☆「棒しばり」中村鷹之資の次郎冠者に、市川染五郎の太郎冠者、中村橋之助の曽根松兵衛の配役。現代の視点でみれば、いくら酒飲みだからとはいえ部下を後ろ手に縛ったり、腕を棒に縛りつけるなどハラスメントを通り越して暴力なのだが、そこまでされても何とかして酒を飲もうと工夫する冠者二人の奮闘ぶりが面白く、楽しい一幕だ。ベテラン俳優でも観劇しているはずなのだが、自分には今回の「棒しばり」が最も心に残るものとなった。
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