*公式サイトはこちら 歌舞伎座 26日終了
☆「熊谷陣屋」・・・尾上松緑の熊谷直実。これから何度も観ることになるだろう。源義経役の俳優の声や台詞には少々困惑した。
☆「二人椀久」・・・尾上右近の椀久に中村壱太郎の松山太夫は幻想的というより瑞々しく精気に溢れ、それだけにいっそう切なく悲しい。舞踊劇だが何と狂おしい愛の物語であることか。
☆「大富豪同心」・・・中村隼人主演でNHKドラマ化された幡大介の小説が歌舞伎座に新作として披露された。武闘派の侠客荒海ノ三右衛門役の松本幸四郎が初演出をつとめる。朝日新聞の劇評では「隼人が切って嵌めたような主役を演じる」とあったが、ほんとうにその通り。江戸の豪商の末孫で、同心株を買い与えられて同心となったが放蕩三昧の八巻卯之吉と、将軍の実弟で志高い剣豪の幸千代という対照的な人物の二役を、実に楽し気に、軽やかに演じている。互いが相手になりすます趣向なのでますます面白い。さらに、前幕で精魂尽き果てる椀久を踊り切ったかに見えた尾上右近が、25分の幕間後には陽気な太鼓持ちの銀八として大活躍。何とよく働く俳優であること。この心身の切り替えの速さは若さと鍛錬ゆえか。これからどうなるのか?と身を乗り出したところで「続く」となるのには正直驚いたが、華やかなグランドフィナーレ風の終幕は、隼人が演じた役の数々をまことに格好よく見せて客席に大いに盛り上がった。この若さで歌舞伎座のお正月公演の締めの舞台で堂々の主役。中村隼人、恐るべし。古典をしっかりと学んでいるからこその新作であり、歌舞伎俳優の柔軟で強靭な心身のありようを実感した。物堅く見せて実は酒豪の大井御前をたっぷりと見せた市川笑三郎、主従の板挟みを必死で切り抜けようとする沢田彦太郎の中村亀鶴、そして箔屋寿太郎役は現役最長老、御年94歳の市川寿猿。病が癒えて無事に復帰したことを台詞に盛り込んだ場面に、客席は大きな拍手で祝福した。
終演後はもう2月の拵えに
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます