*倉持裕 作・演出 下北沢ザ・スズナリ
なかなかいっぺんで言えない「ペンギンプルペイルパイルズ」初体験。
カーニバルの喧噪に包まれた異国の街。安ホテルの一室が舞台である。
部屋にいるのは入国早々彼女とけんか別れした男(小林高鹿)と、この旅行で紹介された彼女の病弱な弟(吉川純広)と、知り合ったばかりの世界旅行中の男(宮崎吐夢・大人計画)である。そのうち象のパレードで踏みつぶされそうになって助けられた日本人会社員男性(玉置孝匡)もやってくるし、隣の部屋では「生き女神」の同窓会が行われており、そこには「元生き女神」の日本人女性(ぼくもとさきこ)がいたりする。
互いにほとんど初対面のもの同士が、初対面にしてはいささか乱暴でずけずけしたやりとりをかわす。
彼女と喧嘩したり病気だったり、後ろめたい過去を抱えていたり、人物たちの背景や心のうちはなかなかに複雑。
おもしろいのはそれらすべてが明らかにされるわけではないところだ。
劇中、喧嘩別れした彼女が部屋に戻ってくるらしい場面がある。
彼氏が激怒して彼女を中に入れないため、実際の姿は見えない。
さらに終幕、もう一度部屋に戻ってきた彼女の影だけが、部屋の壁に大きく不気味に映る。
彼女が中に入ってきたら、この物語はどうなっていくのか。
それがまったく読めないところが、逆に爽快であった。
物語ぜんたいに影を落としている存在ではあるが、彼女こそがこの不満足な旅の鍵を握っているわけでもないのだろう。
はじめての劇団は距離の取り方が難しく、周囲のお客さんほどは笑えなかった。
安心して笑えたのはカーテンコールのあと、退場する俳優たちが出口に殺到して、押すな押すなの雰囲気になるところであった。これも演出なのだろうが。
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