因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

2009年 因幡屋演劇賞

2009-12-31 | お知らせ

 一年があっという間に駆け抜けていきました。感謝と喜びをもって2009年の因幡屋演劇賞は次の皆さまに贈ります。劇評サイトwonderland掲載の「振り返るわたしの2009年」も合わせてどうぞ・・・。

*elePHANTMoon公演 マキタカズオミ作・演出『成れの果て』
 もしかすると今年最大の収穫は、この劇団との出会いであったかもしれない。後味の悪いことが、これほど快感になろうとは。
*ミナモザ公演 瀬戸山美咲作・演出『エモーショナルレイバー』
 劇作家の歩幅はゆっくりだったり小さかったり、その人によって異なる。瀬戸山美咲の歩みは目立たないが着実である。それを実感できたことが嬉しかった。
*こまつ座&ホリプロ公演 井上ひさし作 栗山民也演出 小曽根真音楽『組曲虐殺』
 行くことはないだろうと思っていたのに、チケットを申し込んだ気持ちもよく覚えておらず、しかし終演後のしみじみと温かな幸福感は忘れられない。再演があったら是非家族を誘おう。
*パラドックス定数公演 野木萌葱作・演出
  『インテレクチュアル・マスターベーション』 『東京裁判』
 この劇団に対する思い入れは急速に強まった。硬派で力強い舞台に釘付けである。
『成れの果て』 、世界名作小劇場公演『ー初恋』(土田英生作 黒澤世莉演出)、箱庭円舞曲公演『極めて美しいお世辞』 (古川貴義脚本・演出)に出演した津留崎夏子
 

 これから戯曲と演出家のいい出会いが続けば、この方は大化けするのではないか。小柄で地味な印象、個性がぎらつくわけではなく、技巧が目立つタイプでもないけれど、戯曲の世界にごく自然に身を委ね、演じる人物に確かな血肉を与えている。列挙した3本の作品で演じた役は一見平凡にみえて、その実、深い闇や傷を抱えている。デヴィッド・ハロワーの『雌鶏の中のナイフ』の「若い女」を津留崎夏子が演じる情景を思い浮かべただけでぞくぞくする。そのほかにもチェーホフの『ワーニャ叔父さん』のソーニャ、『三人姉妹』なら座組みによって三姉妹誰でも出来るのではないか。久保田万太郎の『ふりだした雪』のおすみも・・・と妄想は尽きない。

 昨年より観劇本数が減ったにも関わらず、ブログに劇評を書けなかった舞台が十数本ありました。割合としては高いでしょう。反省点のひとつです。何がなんでも書く!と自分を追い詰める必要はありませんが、ひとことでもいいから、みたものに対して、そのときに自分がみつけた言葉で表現することを心掛けていれば、別の舞台を考えるときの手掛かりになるかもしれません。それが一週間後か十年後かはわかりませんが、舞台をみること、考えること、そして書くことは、明日あさってで答のでるものではないのだなと実感しています。

「幻を書き記せ。
 走りながらでも読めるように
 板の上にはっきりと記せ。」 旧約聖書 ハバクク書第2章2節

 因幡屋通信を読んでくださった方、因幡屋ぶろぐにお運びくださった方、皆さまに御礼申し上げます。今年一年ありがとうございました。来年も素敵な舞台との出会いがありますように。

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1 コメント

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素晴らしいブログを読ませていただきありがとうご... (神奈川で出会った中川)
2010-01-16 19:00:47
素晴らしいブログを読ませていただきありがとうございます。
これからも更新頑張ってください。
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