因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

グリング第17回公演『吸血鬼』

2009-03-16 | 舞台
*青木豪作・演出 公式サイトはこちら こどもの城 青山円形劇場 11日で終了  青木豪作品の記事はこちら→1,2,3,4,5,6 7,8
 実を言うと、青山円形劇場でお芝居を楽しめたことが案外少ない。円形劇場の作りを充分に活かした作品になかなか出会えないことと、「こどもの城」の雰囲気が自分にとって違和感があるためだ。子どもたちが元気に遊び、それを見守る親御さんたちの様子をみるのは好きなのだが、建物に入った瞬間に壁の色や照明の具合、ロビーの天井の低さやスタッフの制服姿、芝居が終わって出た途端に目に入るさまざまなものに、ぎくしゃくした気持ちになってしまう。グリングの最新作の上演が円形劇場とあって期待とともに不安も少し。
 舞台正面に2階建てアパートが作られており、その前の円形部分がバーや公園などさまざまな場所に変化し、俳優は客席内の通路から出入りする。ここでまず「具体的なものがたくさん盛り込まれた日常的な話」という青木豪作品に対する既成概念が壊される。東電OL事件をベースにしながら、時空間が行き来したり数人の俳優が複数の役柄を演じたり、円形劇場の空間を活かそうとした試みがいくつもある。気心の知れた常連の客演陣は充実しているし、特に今回はナイロン100℃のみのすけが、虚実ないまぜの物語の潤滑油的役割を果たしている。モノローグがあること、昔の恋人が身を持ち崩した過去を検証しながら、実は死んだのは男性のほうだったのかもしれないという二重構造も、自分がこれまで体験した青木豪作品にはなかった要素である。しかし自分は充分な満足を得られず、観劇後時間が経つにつれて小さな不満がいくつも募ってくる。自分は青木が外部公演で脚本や脚色を担当した作品の中で『エデンの東』、『ガラスの仮面』、『IZO』など、大劇場での商業演劇をまったく見ておらず、そこで得たものが本拠地での作品にどんな影響を与えているかを実感できないことも、満足を得られない理由のひとつかもしれない。困惑しつつ、同道の友人と宮益坂を下る。なぜだろう、いったいどこがどうだからか、どうすればよかったのか。
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