因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

関根信一講演『Gay Spirits』

2009-11-19 | 舞台番外編

*東京工業大学外国語研究教育センター・留学生センター共催 公式サイトはこちら  同大蔵前会館1F ロイアルブルーホール

 劇団フライングステージ主宰の関根信一による一人芝居仕立ての講演会で、後半は谷岡健彦氏と溝口彰子氏を交えた座談会。出来得る限り急いだけれども約20分の遅刻。黒いドレスに白い羽織ものの関根信一がたっぷりと語っており、客席の明かりもそのままで、でも違和感ない雰囲気に安堵して席に着く。

 舞台のオーディションの後なのか、演出家志望の若者を相手に、ゲイである俳優(女優といったほうがよいのか)が自分の半生を語っているらしい。自分が入室したときは、彼が中学生のとき、日生劇場で劇団四季の『コーラスライン』をみたときの思い出であった。俳優になろうと決心し、その後新劇系の俳優養成所に入ったもののそこに残れず、紆余曲折を経て今日に至るまでの話は、たぶん関根自身の人生そのままなのだと思われる。

 フライングステージの舞台をみるようになってから4年と少しになる。何度か書いたことであるが、この劇団と関根信一の存在を知ってから、自分の演劇生活は激変した。今夜の一人芝居の中で、何年ごろ彼が何をしていたかという台詞に、知らず知らず自分の時間を重ね合わせていた。ゲイはあくまでお芝居の世界の中の存在であり、フライングステージも関根信一の名前も知らず、せっせと新劇系の舞台に通っていた。いや、それはそれでいいのだけれど、出会うまでに随分時間がかかった。

 人はそれぞれ自分の時計を持っている。時計の針の速さを自分の力量や判断で変えられるときもあるが、どうにもならないこともある。結局自分自身では予測もつかない何かの導きによって進む道や出会いが与えられるのだと思う。関根信一がゲイであること、自分を表現する方法として演劇を得たこと、そしてその姿を客席からみる自分。互いのさまざまな経験を経たのちに、同じ空間、同じ時間を共有している今夜が、とても貴重なものに感じられる。深く豊かな時間であった。

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