因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

因幡屋2月のなにか

2011-02-01 | お知らせ

 1月はJACROWの『冬に舞う蚊(モスキート)』を皮切りに、モナカ興業の『理解』、ミナモザの『エモーショナルレイバー』と、心がぎしぎし痛むような力作に出会えました。さて今月は?
*青☆組vol.4 『雨と猫といくつかの嘘』 第15回日本劇作家協会新人戯曲賞入賞作品。
*新国立劇場日韓合同公演 『焼肉ドラゴン』
*ル テアトル銀座 二月花形歌舞伎(1)
ブラジル 『怪物』 (1,2,3,4,5)
THE SHANPOO HAT 第26回公演『沼袋十人斬り』
*青年団若手自主公演vol.47 『不機嫌な子猫ちゃん』 田川啓介の新作。(1,2,3,4,5,6) 
二兎社30周年記念 『シングルマザーズ』 (1,2,3,4)

 亡父の蔵書から芥川比呂志の『決められた以外のせりふ』を拝借したのはいつだっただろう。ほんの数ページ読んだだけでそのままにしてしまい、父と本の内容について話すことはなかった。その後数回の引っ越しを経てついこのあいだ自分の書棚の奥から見つけ出した。おそらく二十数年ぶりになる。白い皮張りで、箱に入った美しい装丁だ。汚れもページ焼けもない本に、自分はおかまいなしにアンダーラインをひき、書き込みを入れて読んでゆく。
 「父と戯曲」と題したエッセイ(1947年12月新思潮初出)を興味深く読んだ。比呂志の父芥川龍之介はほとんど戯曲を書かなかった。新劇俳優の息子は、「父の戯曲はいつも失敗に終わったのではないだろうか」と推察し、「戯曲は、その内的な法則、地観劇空間的拘束の中に置かれた人間の心理的姿勢とその変化とが描き出す律動の一貫によってのみ存在する」ものであり、真の戯曲と読む戯曲がここで分かれること、戯曲は厳格で不自由であり、作家の心情のきまぐれな転換や思いがけない発展を許さぬものであり、優れて劇的な小説を書いている父が戯曲に失敗したのは不思議ではないことを、理路整然と考察する。父が亡くなったのは比呂志がまだ8歳のときであり、小説家と俳優として話すことは叶わなかった。比呂志はこのエッセイを、「父には恐らく、戯曲の方法を手に入れる前に、しなければならないことがあったのである」と結んでいる。冷静で筋道の通った文章に、ほんの少し柔らかさと優しさが滲んで温かな余韻を残す。
 因幡屋2月のなにかは、先月に引き続いて芥川比呂志さんからいただきました。

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