東宝
サイレン スペシャル・エディション
「サイレン FORBIDDEN SIREN」は、
PS2用のホラーゲーム「サイレン」をベースに
サイコサスペンスとして映画化した作品である。
監督は、人気ドラマ「ケイゾク」「トリック」等を手掛けた堤幸彦。
【ストーリー概要】
持病を持つ弟の転地療養のため、
父と共に夜美島に引っ越してきた由貴(市川由衣)は、
隣家の住民(西田尚美)から
「サイレンが鳴ったら外に出てはいけない」と謎の警告を受ける。
島民の視線に不気味さを感じる由貴にとって、
弟の主治医である南田(田中直樹)だけが頼りだった。
次第に募っていく不安の中、ついにサイレンの音が鳴り響く。
初めに断っておくと、これは「ホラー映画」ではなく、
あくまでも「サイコサスペンス」なのであって、
ゲーム版「サイレン」のような恐さを期待してはいけない、ということだ。
それにしても、「サイコサスペンス」と銘打つ作品は
何故こうもシナリオが完全にパターン化してしまうのか。
多■■格や妄■だけで全てを片付けてしまうパターンは
いい加減止めるべきだろう。
伏線の張り方から種明かしまで全てがおざなりで、
やっつけ仕事にも程がある。
全体的には出来損ないの「箪笥」のようなシナリオで、
そこに「シャイニング」っぽいトリックや、
「着信アリ」(劇場版の1作目)、
「ハイド・アンド・シーク」のような要素をプラスして
一丁上がり、という感じだ。
チラシには「サイレンを取り巻く3つの謎」だの、
1590年のアメリカでどーしたこーしたなど、
さも「何か」が潜んでいるかのように煽っているが、
結局ほとんど本編と絡んで来ないままに終わってしまう。
29年前の島民消失事件さえ踏まえておけば、
それで全部説明がついてしまうのだ。
「サイレンが鳴ったら外に出てはいけない」という言葉の種明かしも
「そりゃないぜ」と溜息の漏れる強引なこじつけで、
脚本の不出来で言えば、
現在公開中の「フライトプラン」すら上回るチープさだ。
堤監督も、ゲームが原作という部分に縛られ過ぎたのか、
脚本の不出来に匙を投げたのかは分からないが
既存の作品の演出を寄せ集めて軽く撮ってみた、という印象を受ける。
市川由衣はともかく、森本レオや田中直樹のキャスティングには
口出し出来なかったのだろうか。
恐怖に戦くはずのシーンで試写室が(笑いで)沸くのは、
ミスキャスト以外の何ものでもなかろう。
また、この映画は360度の立体音響をウリにしているが、
ただ単に五月蝿いだけで、びっくりはするものの、
恐怖感のアップにはなっていない。
技術的な効果をあれこれ研究する前に、
メロディラインや挿入するタイミング等に気を配るべきだったように思うが。
ゲーム版との関連性は、夜美島という舞台とわらべ唄が同じで、
あとはゲームと同じカットが意図的に挿入されているぐらいか。
映画とゲームがお互いに補完し合うような関係にはなっていないので、
ゲーム版だけ遊べばOKという気がする。
(PS2用ソフト「サイレン2」は、前作よりずっと出来が良くなっている)
「ドッグヴィル」という映画のパンフレットに、
ゲーム版「サイレン」のディレクターである
外山圭一郎氏がコメントを寄せている。
私がこのコメントの中で印象に残っている言葉に
「澱んだ平穏の醜悪さ」
というのがあるのだが、
映画版からは、そういった物は一切感じなかった。
ここにはただ、作為的な「異常」があるだけだ。
●ゲーム版「SIREN2」の紹介記事はこちら。
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タイトル:サイレン FORBIDDEN SIREN
配給:東宝
公開日:2006年2月11日
監督:堤幸彦
出演者:市川由衣、森本レオ、田中直樹、阿部寛、松尾スズキ、他
公式サイト:http://www.siren-movie.com/
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