忍之閻魔帳

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今敏監督、本日で没後10年|【追記】「千年女優」は2024年にリバイバル上映決定

2023年12月15日 | 忍之日記


▼今敏監督、本日で没後10年【追記】「千年女優」は2024年にリバイバル上映決定

*本記事は2020年08月24日の「今敏監督、本日で没後10年」に、2023年12月15日に追記したものです。

【関連記事】【訃報】今敏監督、急逝(2010年8月25日)

数多いらっしゃるアニメーション監督の中で、
私が最も敬愛していた今敏監督が亡くなった。
1963年10月生まれ、まだ46歳。
一度だけお会いした時の笑顔は、今でも脳裏に焼き付いている。
デビューを飾った「パーフェクトブルー」から「妄想代理人」まで
監督の創り出す幻想的な世界は、作品を重ねるごとにどんどん厚みを増していった。

幻想的な絵と音楽で視聴覚を刺激しつつ、下町の人情劇のような
温かみのあるストーリーも紡ぐことが出来る希有な方だった。
最も好きな作品である「東京ゴッドファーザーズ」では、
私達が生きているこの世界こそがファンタジーなんだよ、と言われているような気がした。
「あちら」と「こちら」は完全に隔離されたものではなく、あくまでも地続きであると。

「パプリカ」に続く最新作「夢見る機械」の完成も心待ちにしていたので、残念でならない。
残されたスタッフでなんとしても完成に漕ぎ着けて欲しいという気持ちと、
船頭おらずして何が出来るものかという気持ちが混在し、今はどちらとも言えない。

人は二度死ぬと言う。
一度目は命の火が燃え尽きた時、二度目は、人々の記憶から完全に忘れ去られた時。
私は、今敏という映画監督と、彼の遺した作品をきっと忘れない。
心よりご冥福をお祈りいたします。



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大きな哀しみと喪失感を抱きながらブログを書いたあの日から
早いものでもう10年が経った。
生きておられたとしてもまだ56歳。
アニメーション監督としては最高に脂が乗っている時期だったろう。

最後に公開された「さようなら」は何度読み返したかわからない。
あの長文の日記は、構成からオチのつけ方までまるで1本の作品のようだった。
命の期限を知りながら書いたとは思えない
今監督らしい知的でウィットに溢れた文章に何度も何度も泣かされた。
もし自分が同じ病に襲われた時に、果たしてここまで冷静に
「自分のいなくなった世界」を想定し
緻密なエンディングノートを書き遺すことが出来るだろうかと自問した。

資金的な問題にぶち当たり「夢見る機械」の制作続行は困難となり
未完のコミック「OPUS」のアニメ化プロジェクトも、
平沢進氏がメインテーマの依頼を受けたとツイートしてから後、大きな進展は聞かない。
監督の頭の中にしまったままで天に昇った数々のアイディアが
今後完全な形で世に出ることはないだろう。
NetflixやAmazonプライムなど、サブスクリプション全盛の今であれば
監督の独創的なアイディアを形にするための環境はずっと整いやすかったはず。

あっという間の10年。
10年前に追悼記事を書いていた私は、果たして10年後にどこで何をしているだろう。
監督の生きられなかった10年間で、何か遺せたろうかと考えてしまう。
やりたいことを山ほど抱えて早逝した監督と、平々凡々に過ごした私の10年を振り返ると
人生はつくづく不公平だと思うが、せっかく生かされているのだから、生きなくては。



【2023年12月15日追記】

没後10年が経過した頃から、世界的にも注目を集める今監督の作品が
劇場でリバイバル上映されるプロジェクトが動き始めている。
第1弾の「パーフェクトブルー / PERFECT BLUE」は2023年9月に、
第2弾の「千年女優」は2024年1月19日より、全国109館にて2週間限定で劇場公開予定。
「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」「ルパン三世 カリオストロの城」など
私の青春を彩った作品が次々にリバイバル上映される動きがあるが
今監督の作品に関しては、単純な懐かしさだけでなく「もう新作が見られない」という気持ちが
セットで湧いてきて切なくなってしまう。

「千年女優」は淀屋橋の朝日生命ホールで行われた試写会で観たのが最初だった。
イベントには今監督の舞台挨拶がついていて、作品についてのメッセージやこぼれ話をたくさん披露してくれた。
「あなたが引き受けてくださらないとこの作品は完成しない」と
熱烈なラブコールを送って平沢進氏と口説き落としたというエピソードや
「僕は兄(ギタリストの今剛)が音楽をやっているので、映画作りでも音楽がとても重要で
『千年女優』も平沢さんの音楽なしでは未完成も同じ」と語っていたことを昨日のことのように鮮明に覚えている。
試写会の前に、光栄にもお話をさせていただける機会に恵まれ、
作品はもちろん、穏やかで真っ直ぐなお人柄にすっかり魅了されてしまったのだった。
現在世界で日本のアニメが大活躍しているが、今監督の「千年女優」や「パプリカ」は
そのきっかけを作った作品のひとつであり、これからも長く愛され続けるに違いない。

以下は今監督作品の簡単な紹介。




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今敏の記念すべき(長編)監督デビュー作。
人気女性アイドルを襲う連続殺人事件を扱ったサイコサスペンス。
デビュー作にしては出来過ぎなほど良く出来ているが、後半になってストーリーが失速してしまうのが残念。
しかし今監督のスタイルは、既にこの作品で確立されている。


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海外で今監督の名が知れ渡るきっかけにもなった2作目。
試写会では「騙し絵のような世界をアニメーションで作れないかに挑戦した」と仰っていた。
次から次へと変化する映像マジックは、まさにデジタルな騙し絵。
長い人生を「好きな人に会いたい」一心で駆け抜ける姿に胸を打たれる。

何と言っても音楽が良い。
サントラがインディーズレーベルだったため探しまくり
普段は足を踏み入れない、アニメイトを訪問して購入したのも懐かしい。
平沢進と出会ったことが、この映画の最大の収穫であろう。
本作以降、平沢氏は今監督作品の常連となった。
ちなみに「夢見る機械」も元は平沢氏の楽曲のタイトル。


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「千年女優」で指摘されたストーリー部分の弱さを反省したのか、
人情劇ファンタジーとも言うべき新機軸を打ち出して来た3作目。
科学の進歩によって「非現実的」という烙印を押された「奇跡」を
今一度信じてみようではないか、というポジティブなメッセージにいたく感動。
季節をクリスマスから年明けに設定しているのも上手い。
音楽は、「MOTHER」シリーズなどで知られる鈴木慶一。
こちらもサントラを購入した。
私的には、今監督の作品で一番のお気に入り。
「歓喜の歌」や「ラブアクチュアリー」と並び、年末になると無性に観たくなるエバーグリーンな作品。
未見の方はとにかく一度観て欲しい。


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2004年にWOWWOWで放送された、今監督初の連続アニメ。
連続アニメとは思えないクオリティの映像と、
世間を騒がせた多くの事件を彷彿させるシナリオ構成が抜群に上手い。
放送中から観ていたのだが、次回が待ち切れないほど楽しみにしていた。
音楽が平沢進に戻ったことも大正解。


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ストーリーは「妄想代理人」、夢の世界の演出は「千年女優」といった印象の4作目。
人間の脳内をテーマに、極彩色の映像が猛スピードで展開する今監督らしい作品。
「千年女優」の特徴であった騙し絵的な場面転換はますます磨きがかけられ、
夢と現実を行き来するストーリーを掻き乱す、絶妙な効果を生んでいる。

林原めぐみと古谷徹という、声を聞いただけで代表作が何本も思い付く
アニメ界を代表する声優を起用する一方で、今監督と筒井康隆氏も声優として登場。
お二人ともお世辞にも上手いとは言えないのだが、
スクリーンの向こう側に観客がさらわれないための舫い綱の役割を果たしている。
映画サイトで良く見掛ける「なんだか良く分からなかったけど面白かった」は、
本作に対する最大級の賛辞であり、今監督にしてみれば、「してやったり」といったところだろう。
平沢進の音楽は今回も出色、サントラCDも即買いした。



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