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日銀の次の利上げは、相当先になると「おっとり」構えていたマーケットが、利上げの「初期微動」が聞こえてきたと5日の東京市場で反応し始めた。長期金利は一時、2011年4月以来となる1.295%に上昇。ドル/円はいったん153.17円付近までドル安・円高が進行し、日経平均株価は前日比マイナスの水準で推移している。
足元で市場が本命視している利上げ時期は7月(織り込み度合い76%)とみられ、週明け3日の9月(その時の織り込み度合いは90%)から前倒しされている。4日に日銀の植田和男総裁が「現在はデフレでなくインフレの状態にあるという認識に変わりはない」と発言し、5日に赤沢亮正経済再生担当相が植田総裁の認識と「特に齟齬(そご)はない」と述べ、市場のムードが変化したという。6日には田村直樹審議委員の講演と会見が予定されており、次の利上げのタイミングやターミナルレート(利上げの最終到達点)について、どのような見解を示すのか市場の関心が急速に高まっている。
<植田総裁・赤沢再生相のインフレに関する発言、市場の注目に>
複数の市場関係者によると、4日に植田日銀総裁が「インフレの状態にある」と述べた際に、市場の注目度は上がったものの、4日午後に米国が中国に対して10%の関税をかけると正式に決め、植田総裁の発言に対するインパクトが薄れ、長期金利上昇や円高に結びつく動きが出なかったという。
ところが、5日になって前日にインフレかどうかの明言を避けていた赤沢経済再生相が、植田総裁の認識と「特に齟齬(そご)はない」と衆院予算委で述べたことで、市場は日銀の利上げの可能性に関して敏感になった。
というのも昨年12月の段階で赤沢経済再生相は利上げに慎重姿勢を示し、日銀も政策維持を決めていたが、今年1月14日に赤沢経済再生相は、日銀の利上げ検討と政府がデフレ脱却を目指すことに「矛盾することはない」と発言して方針を転換。その後、日銀が利上げを決めたという経緯があったからだ。
<12月の毎勤統計も長期金利上昇の材料に>
また、厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計調査(速報)で1人当たりの現金給与総額が前年同月比プラス4.8%と、市場予想の同3.7%を上回ったことで日銀の利上げ判断の材料の1つになるとの思惑も広がったという。
ただ、賞与など特別に支払われた給与が同6.8%と大きく伸びたことが影響しており、日銀が重視している共通事業所の所定内給与(一般)は同2.8%と前月の同2.7%からほぼ横ばいとなっている。
<早川氏、1.5%まで利上げの可能性と発言>
市場はこの日、長期金利上昇・円高で反応しているが、次の3月に開催される金融政策決定会合での利上げの可能性はゼロのままで、3月会合が「ライブ」との認識にはいたっていない。
とはいえ、その次の4月30日・5月1日の会合は20%、6月会合が44%と織り込み度合いは週初に比べてじわじわと上がっている。
また、早川英男・元日銀理事がブルームバーグとのインタビューで、早ければ来年中にも日銀が政策金利を1.5%程度に引き上げる可能性があるとの見方を示したことも、市場の日銀利上げに関する注目や警戒感を高めたという。市場の中には、日銀の利上げが0.75%程度で打ち止めになるとの観測が根強く、特にトランプ米大統領の関税引き上げで世界景気や日本経済にマイナスの影響が出れば、1%までの利上げは難しいとの見方が広がっていた。
早川氏が次回利上げの時期について、7月がオーソドックスな考え方だとし、年末に再び利上げを行う可能性があり、政策金利は来年にも1.5%程度に上がるとの見解を示したことで、市場の注目点の1つとしてターミナルレートの存在がクローズアップされてきたという。
<昨年9月に1%までの利上げに言及した田村審議委員>
そこで、にわかに注目度が上がってきたのが、6日に長野県松本市で予定されている田村審議委員の講演と会見だ。田村審議委員は昨年9月の講演で、経済・物価情勢が見通し通りに推移すれば、政策金利を2026年度までの見通し期間後半にかけて「少なくとも1%程度まで引き上げておく」ということが適切だとの認識を示していた。
今回の講演と会見で、ターミナルレートについてどのような見解を示すのか、多くの市場関係者が注目し始めている。また、次の利上げ時期やその要件などで新たな見解を示せば、マーケットが反応する地合いになっていると言っていいだろう。
<日米首脳の共同会見、為替の質問で注目されるトランプ大統領の発言>
5日の外為市場では、シティグループのストラテジストが作成したリポートが注目され、その中で7日の日米首脳会談に関連してトランプ米大統領が日本に関税を課すと警告する「リスクはほとんどない」としつつ、円安は両国間の「潜在的な問題」だと指摘していたことが注目されていたという。
一部の市場参加者は、シティのリポートで円高方向への懸念が意識され、153円前半までの円高になったとの見方を示した。
もし、日米首脳会談後に共同会見が設定され、そこで為替について質問が出た場合、トランプ大統領が持論のドル高是正の見方を持ち出し、円高が望ましいと述べた場合には、大きな影響がマーケットに出ると予想される。日米首脳の共同会見がある場合は、トランプ大統領の「不規則」とも見える発言に注意が必要になる。
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