一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

補正成立に必須な国民民主の協力、石破首相は財源問題をどのように決着させるのか

2024-11-11 13:17:30 | 経済

 自民党の石破茂総裁が11日、衆参両院で首相に指名され、103代首相として第2次石破内閣を同日中に発足させる。30年ぶりの少数与党としてスタートを切ることになるが、懸念された自民党内の造反は衆院ではみられず、石破首相は第一関門を突破した。次の関門は2024年度補正予算案を成立させることになるが、国民民主党の賛成が不可欠になる。

 ここでは、同党の主張するいわゆる「103万円の壁」の引き上げやガソリン税の減税が補正予算賛成の条件になるとみられるが、財源問題をどうするのかという部分が残っており、自民・公明の連立与党と国民民主との協議の行方によっては、東京市場の価格変動につながる展開も予想される。

 

 <衆院決選投票、84票の無効票の意味>

 11日午後の衆院本会議では首相指名選挙が行われ、30年ぶりとなった決選投票の結果、石破氏が221票、立憲民主党の野田佳彦代表が160票となり、石破氏が首相に指名された。参院でも石破氏が首相に指名され、同日夜までに第2次石破内閣が発足する。

 石破氏が再度、首相に指名された最大の要因は、野党第1党の立憲民主が野党をまとめきれず、自公勢力を上回る議員数の結集に失敗したことだ。それは、決選投票に進んだ2人以外に投票した無効票が84票に達しことに示されている。

 

 <バラバラ野党、まとまれば不信任案可決という現実>

 だが、少数与党であることにはなく、野党が何らかの問題で結束して内閣不信任案を提出する場合は、衆院解散か総辞職の選択を迫られることになる。

 石破首相はそうした事態に陥らないよう、政策ごとに野党と協議し、一部野党の賛成を得て予算案や法律案の衆院通過を図るしか、当面、政権を存続させる手立てがない。

 したがって国民民主の主張する「103万円の壁」の引き上げとガソリン税の減税は、24年度補正予算案の成立には不可欠の要素となっている。

 

 <浮上した財源問題、178万円への引き上げで7.6兆円の減収>

 国民民主の玉木雄一郎代表は、その点を熟知して自民、公明が妥協するとみて強気の姿勢を継続してきた。だが、ここにきて2つの問題が浮上していると指摘したい。

 1つ目は、財源の問題だ。基礎控除と所得税控除の合算額である103万円を国民民主の主張通りに178万円まで引き上げた場合、政府は国と地方を合わせて約7.6兆円が減収になると試算している。一部の国内メディアによると、玉木氏は財源確保は「政府・与党の責任」と発言しているという。

 剰余金やその他のやり繰りで一定程度の財源を確保できたとしても、最終的に赤字国債の発行につながるようなことになるなら、その対応が妥当なのか、という議論が生じることになる。自民党の小野寺五典・政調会長は10日のNHK番組で「主に地方に多くのしわ寄せがいく。与党で出せと言われても難しい」「どういう落としどころにできるか、現実的な議論をこれからさせてもらいたい」と語った。

 与党多数なら、この段階で国民民主の主張は「お蔵入り」となるところだが、だったら「補正予算に賛成しない」と国民民主が反対に回ると、補正予算案の成立は不可能となり、石破内閣は一気に危機に直面することになる。

 それを回避するために、自民、公明、国民民主の3党間で「100%か0%か」という選択ではなく、妥協が図られる可能性が高いと筆者は予想する。

 

 <玉木氏のスキャンダル、強硬姿勢に固執の可能性も>

 ところが、ここで問題になってきたのが、玉木氏をめぐる不倫報道だ。同氏は11日の同党両院議員総会で不倫問題について陳謝し、政策を遂行するため代表にとどまりたいと述べて了承された。

 これが第2の問題と言える。というのも、党代表のスキャンダル発覚で国民民主の交渉力が低下したとの見方がある一方で、ここで安易に妥協するとスキャンダルが影響したからだと世論から「白い目」でみられ、支持率が大幅に低下する可能性があり、自公との交渉でかえって強硬姿勢に固執するのではないか、との声も永田町では浮上しているという。

 

 <赤字国債発行でも市場が反応しない理由、国債の前倒し発行の存在>

 いずれにしても自公両党は補正予算案の成立に向けて、国民民主の主張を大幅に受け入れて「新たな多数派」を形成することが必須の課題となっている。

 国民民主はガソリン価格高騰抑制のためのガソリン税軽減を目的とした「トリガー条項」の凍結解除も求めているが、国と地方で1.5兆円の減収要因になると政府は試算している。

 財源確保のために最終的には赤字国債の発行に踏み切る可能性もあると筆者は予想するが、実は円債市場の参加者はこの問題にあまり関心がないという実情があるようだ。

 というのも、財務省は年度間の国債発行の平準化等のため、翌年度に発行する予定の借換債の一部を前倒して発行しており、数兆円規模の赤字国債発行になったとしても前倒し発行分で吸収され、年間にマーケットで発行される国債規模に変化が生じずに対応することができる、と多くの市場関係者がみているためだ。

 同時にこうした手法が債務膨張に警戒警報を発するマーケットの機能を低下させ、与党からの歳出膨張圧力を受け入れやすくしている面があることも否めない。

 

 「103万円の壁」の引き上げやガソリン税減税をめぐる自民・公明・国民民主の3党協議の行方は、これからの政府債務の増大の可能性を秘めているということも、国民はしっかりと監視するべきだと考える。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 11日の自民・国民党首会談で... | トップ | お知らせ:12-17日は休信し... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事