おとなりの馬路村にある「うまじのパン屋」については、3年前に紹介したことがある。
→『うまじのパン屋』(2017.07.11)
総人口724人(2020年8月1日推計)、県内34市町村のなかで2番目に人口が少ない村に、パン専門のいわゆる「パン屋さん」が存在するということだけでもすばらしいのだが、さらに、この店のよさを象徴するようなできごとがあったので紹介したい。
日曜日の朝、「うまじのパン屋」のフェイスブックページに、上の画像とともにこんな告知が掲載された。
******
‼️重大なお知らせ‼️
本日
パン
失敗
しました❗️
リカバリー出来ないので
臨時休業とさせて頂きます。
大変申し訳ございません🙇
次の営業日は
7日水曜日です。
本当に申し訳ございません🙇🙇♀️🙇♂️🐕
******
見るなり思わず目をみはり、そのあとすぐ、「ほー」と感心してしまった。
失敗をみとめ、さらにそれを晒す。
それがどの程度の「失敗」なのか、店主の自己判断なのだから、この告知からは読みとれない。
それはさておき、こんな場合、「ふつう」ならどうするだろう。
「諸事情により臨時休業します」とかなんとかと取りつくろい、休業に至った核心部分は隠すのではないだろうか。
わたしなら、たぶんそうする。
そうせずに、あえてミスを公表するということについては、賛否両論あるだろう。
「プロにあるまじき行為」だと批判する人もいるだろう。
わたしのようにパチパチと拍手をする人は、ひょっとしたら少ないのかもしれない。
おかれている立場によっては、このように失敗を公表することが許されない場合もあるかもしれない。
少なくともわたしは、失敗を晒すことによって失うものを考え、どうにかこうにか取り繕うという道を選択する方の人間だ。
たぶん、だから、だろう。
そんなこんなを勘案してもなお、わたしはすばらしいと思う。
その投稿を確認したあと、
「それを晒すいさぎよさが素敵ですね」
とコメントを入れたわたしに対する店主(たぶん)の返信はこうだった。
「お客様との信頼関係にヒビが入るのも嫌なんです」
小さな村の小さなパン屋のこの行動に、「今という時代」の情報発信にとって必要なエッセンスがあると言ったら大仰にすぎるだろうか。
と自問したあと、
「うん、大げさだな」
と自答し、とりあえず、失敗をみとめて晒すそのいさぎよさを称え、隣村の方角に向かって拍手した。