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佐藤勝著『いま生きる「資本論」』新潮社(丸善&ジュンク堂書店・梅田店)

2014年10月19日 | Book(本、書籍)DVD
10/19(日)大阪・梅田にある「丸善&ジュンク堂書店・梅田店」に行った。佐藤勝著『いま生きる「資本論」(¥1,404)』(新潮社)を購入した。

【内容(「BOOK」データベースより)】
本書は、「『資本論』は革命の書ではない」と喝破する佐藤優の、世界の解体新書であり、人生の指南書である。爆笑と知的興奮に包まれた超人気講座「一からわかる『資本論』」の完全活字化

【著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)】
佐藤/優
作家、元外務省主任分析官。1960年生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、本省国際情報局分析第一課において、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年背任と偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部に逮捕され、05年執行猶予付き有罪判決を受ける。09年最高裁で有罪が確定し、外務省を失職。05年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。06年『自壊する帝国』で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

【登録情報】
単行本: 251ページ
出版社: 新潮社 (2014/7/31)
言語: 日本語
ISBN-10: 410475207X
ISBN-13: 978-4104752072
発売日: 2014/7/31
商品パッケージの寸法: 19 x 13.4 x 2.2 cm

★amazon『いま生きる「資本論」』

★丸善&ジュンク堂書店・梅田店:http://www.junkudo.co.jp/tenpo/shop-MJumeda.html
住所:〒530-0013大阪府大阪市北区茶屋町7-20 チャスカ茶屋町 地下1階~7階、電話:06-6292-7383/FAX:06-6292-7385、営業時間:10時~22時、定休日:7月・8月無休、取扱商品・サービス:和書・洋書・コミック・文具(ナガサワ文具センター:2F)


■Jandy's 書評・・・佐藤勝著『いま生きる「資本論」』(新潮社)

この本の著者である佐藤氏は、ソ連が社会主義だと言っている。結論から言うと、ソ連は社会主義でも共産主義でもない。トロツキーの言うような過渡期世界の「労働者国家」でもない。 「国家資本主義」である、資本主義の初期段階にみられる、国家が介入した「本源的蓄積」の体制である。

20世紀のソ連、東欧諸国、中国・北朝鮮等が社会主義・共産主義だと勘違いしている人は多い。特に右翼(体制派、保守派、民族派、国粋主義者等)や御用学者や、それに洗脳された一般の人々に伝えたい。今まで一度も社会主義・共産主義は実現されていない。ましてや「社会主義国」「共産主義国」という言葉自体が間違っている。社会主義・共産主義には支配機構としての「国家」は存在しない。

この21世紀までの歴史の中で、一度も社会主義・共産主義が実現したことはない。ロシア革命は一日にして、ボルシェヴィキによって裏切られた。レーニン~スターニンによって革命は変質し、強権主義、官僚主義、全体主義、そして粛清が横行した。ソ連崩壊後にレーニンの秘密文書「殺人指令文書」が多数公開(判明した文書だけでも27通)されたのは周知の通りだ(以前より『レーニン全集』にも一部公開されていたが)。
注:レーニンの大量殺人総合データと殺人指令27通:http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/leninsatujin.htm

 マルクスの言った「プロレタリアート独裁」は、ボルシェヴィキ(レーニン)による「一党独裁」に、「一党独裁」はスターリンによる「個人独裁」に変貌した。

 ボルシェヴィキ(レーニン)による強権主義「一党独裁」の最後の抵抗であった1923年3月の「クロンシュタットの反乱」は、ボルシェヴィキ(レーニン、トロツキー、スターリン等)により、反革命(白軍)とのレッテルを貼られ、弾圧された。クロンシュタットの反乱軍は、1917年10月ロシア革命を闘った水兵を中心とした反乱軍であり、その主張はプロレタリア直接民主主義要求だった。

 20世紀のソ連(現在15ケ国※1)、東欧諸国(7ケ国※2)、中国、北朝鮮等東アジア(6ケ国※3)、中米(1ケ国※4)、中東(2ケ国※5)、アフリカ(4ケ国※6)=計21ケ国は、「スターリン主義官僚国家」であり、経済的には「国家資本主義」である。企業の国有化が社会主義ではない。企業が国家に取って変わったにすぎない。ブルジョアジーが共産党幹部に変わったにすぎない。

 この21ケ国(現在35ケ国)を支配する共産党の幹部は様々な特権を享受していた。1989年に東ヨーロッパの国々で共産党政権が崩壊、1991年にはソ連でも共産党体制が倒され、「社会主義国」と自称する国は、中国、北朝鮮、キューバ、ベトナムの4カ国だけとなった。しかし民間企業の設立の自由化を進め、中央計画経済もやめてしまった現在、ソ連型の社会体制を残す国は、北朝鮮1カ国のみとなっているが、北朝鮮もまた市場化改革が始まっている。

ではなぜ「社会主義国」と名乗っていたのか?それは、資本主義経済の特徴である「生産手段の私有」ではなく、「生産手段の国有」であったこと。生産手段(機械・工場・土地等)は原則として私有ではなく国のものである。生産手段を買って、原則として自由に企業を作ることができず、会社は原則として全て国営企業であった。

経済活動は、「市場経済」ではなく「中央計画経済」であった。各企業は、原則として自由に生産・取引きができず、政府が経済計画を決めて指令し、各企業がそれに従うことによって営まれた。

また、「前衛党独裁」の政治体制を取っていた。政党は共産党一つしかない(統一社会党、統一労働者党、社会主義労働者党、朝鮮労働党と名乗っている国もあった)。他党の存在もあったが、その場合も共産党の指導に従うものとされた。

生産手段を私有している人々(資本家階級:ブルジョアジー)は、ごく一握りであり、圧倒的多数の人々(労働者階級:プロレタリアート)は、機械・工場・土地・店等、何も生産手段を持っていない為、生きていくためには、生産手段を所有しているブルジョアジーの元で労働力を売り、搾取され、見返りに賃金をもらって生活するしかない。

「社会主義国」と名乗っていたが、資本主義経済と同じように「階級」が存在する。共産党の幹部たち支配階級と、一般の労働者階級との二大グループに分裂し、一般の労働者階級は資本主義経済と同じように、支配階級に支配され搾取されてはじめて生きていける。自由・平等など何処にもなかった。絶対自由と差別のない平等を勝ち取らなくてはいけない。

 また国有計画経済をもって「社会主義国」と名乗っていたが、国有計画経済が「社会主義」ではない。アソシエーション社会(協同組合の連合社会=自主的に連合した労働者たち自身が労働、経営、所有を一身に担う生産社会)こそ、社会主義社会であり、自由で自立した諸個人による協同社会の建設を目指すべきである。

 生産手段を国有化したからといって、人民大衆がみな、経済運営の意志決定に参加し、民主的合意の上で労働しなければ意味がない。ソ連型体制の国では、その実体すらなかった。

 ソ連では、「企業長単独責任制」が企業経営の原則とされ、上から任命された企業長が企業内の全権限を持つものとされていた。一般労働者は企業運営について口を出す機会も、企業長を選択することも、辞職させることもできなかった。

 計画経済についても同様に、計画策定段階で意見が聞かれるのは企業長のレベルまでであって、一般労働者が意見を言える機会はなかった。作られた計画は、一応最高会議で採択されるものの、質問も意見もでないわずか二日の会期の会議で儀式として「承認」されるだけである。第1次五カ年計画も第2次五カ年計画も開始後の事後承認だったし、農業集団化のような重大事が審議されてもいない。

 しかもその最高会議は全国民から選挙された最高機関とされているが、この選挙というものが民主的ではなかった。各選挙区の立候補者は共産党の推薦する一人しか認められず、有権者は、あらかじめその候補者の名前が印刷されている投票用紙を受け取ってすぐ投票箱に入れれば「信任」したということになる。

 不信任したければ違う所に行って名前を抹消しなければならない。しかし、そんなことをしたら、共産党幹部を批判するのと同様、秘密警察に逮捕され、収容所送りか、粛清されるのである。

 だから候補者は100%の信任率で信任されるのだが、殆どの有権者は自分の所の代議員の名前も顔も知らないという状態だった。このような代議員達の会議で承認されたからといって、一般人民が計画決定に参加したということにならない。

 言論・結社の自由が認められず、民主主義的普通選挙を実施しない、階級の存在する、一党独裁社会が「社会主義」社会であるはずがない。

佐藤氏は宇野弘蔵氏の「マルクス経済学」とイデオロギーの観点からの「マルクス主義経済学」の姿勢の違いから、「マルクス経済学」の立場から論じているのは良い。

しかしアナキスト(佐藤氏はアナーキストと言っている)が権力を掌握すると、恐ろしい社会になると思う、と書いているが、アナキストは権力に反対し、権力を無くす、権力を行使しない思想である、基本的なところが理解できていない。

(つづく)

※1(ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギスタン、タジキスタン、エストニア、ラトビア、リトアニア)

※2(東ドイツ、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、アルバニア、ブルガリア))

※3(中国、北朝鮮、モンゴル、ベトナム、ラオス、カンボジア)

※4(キューバ)

※5(アフガニスタン、南イエメン)

※6(ガーナ、モザンビーク、アンゴラ、エチオピア) 


■旧ソ連・旧東欧諸国・中国等=国家資本主義論

★松尾匡のページ「ソ連=国家資本主義論」:http://matsuo-tadasu.ptu.jp/yougo_soren.html

★松尾匡のページ「ソ連型体制は国家資本主義だった」:http://matsuo-tadasu.ptu.jp/shucho3.html

■アソシエーション論

★amazon大谷禎之介著『マルクスのアソシエーション論』

★松尾匡のページ「アソシエーション論」」http://matsuo-tadasu.ptu.jp/yougo_aso.html

★ワーカーズ「アソシエーション社会」:http://www.workers-2001.org/assi.htm

★amazon『アソシエーション革命宣言』社会評論社

■その他

★アナキズムFAQ:http://www.ne.jp/asahi/anarchy/anarchy/faq/

★柄谷行人公式ウエブサイト:http://www.kojinkaratani.com/jp/

★Jandy's Website :http://www.hi-net.zaq.ne.jp/jandy/search_and_link_top_page.htm

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