3)蹄鉄を使うと蹄病が起きない気がするのだが
これは、蹄鉄が良い、という事じゃないんです。実際にはやっぱり蹄病は起きまくっているんだけど、起きる箇所が裸蹄の時とは異なる、ということ。
この件については、特にサラについて考えなければならない。サラって、競馬馬時代にはアルミ冷鉄を付けられてる。「冷鉄」とはなにかというと、「鉄をカンカンに熱して蹄底にじゅっと当てて~」というのとは違って、ただ、出来合いのアルミをくっつけるだけ。この違いの理由はよく分からないのだが、多分、若くてじっとしててくれないサラに通常の蹄鉄を打つのが危険すぎる(人にも馬にも)のと、後は単純に馬の頭数が多すぎて、一々鉄を熱してなんてやってられない、のかも。鉄の蹄鉄はやっぱり重いから、競争能力に悪影響がある、もあるかも。
で、だから、ここで水虫をうつされちゃうんですよね~~~~。道具越しに。
乗馬に転用されたら、サラでも鉄を焼いて蹄にジュっとやる蹄鉄に変えられる。この理由もよく分からないんですがね。「そんなもんだから」なんでしょうかね。
鉄を焼いて装蹄すると、しかし、蹄縁の水虫は一瞬殺滅されます。当たり前ですね。熱による殺菌が効くわけだ。けれど、残念ながら、蹄の奥に侵入した白癬菌は殺せないし、熱で焼絡されない蹄叉は白癬菌の巣窟になる。
ので、蹄叉腐乱は蹄鉄を付けても起きる。で、蹄叉が消滅してしまう馬も多数。そうじゃなければ、蹄癌、とこういうこと。
もう一つの問題は、釘。なぜに釘が緩んで落鉄が起きるのか?未消毒の釘が(釘は焼きませんから)白癬菌を運んでしまうから。
つまり、釘でもって白癬菌を打ち込んでしまうから、釘周囲に白癬菌が広がる。カビは当然ながら同心円状に侵入してゆくから、釘周りの蹄壁がボロボロになって落鉄、となるわけ。決して、装蹄師の腕が悪いせいではありません。
蹄鉄は蹄縁の状態の悪さを隠してしまうから、それも大問題だと思う。蹄鉄を打ち替える時、蹄縁が良い状態になっていることはほぼない、と思うんだけど、蹄内に侵入済みの白癬菌が食い荒らしているからで、更に細菌の2次感染が起きるし。そこへ無理してさらに蹄鉄を打つ、どんどん蹄の状態が悪くなる、けど、蹄鉄で一応体重を支えはできるから、問題が先送りになり続けちゃうんでしょうね。
元来蹄鉄の目的は「護蹄」の筈なんだけど、全然できてないじゃないか、と思うのですよ。
あと、今回のカンファレンスでも思ったんだけど、大動物の先生方は、動物の体をぞんざいに扱い過ぎなんじゃないでしょうかね。蹄の治療でも、生爪剥がすようなことやってさ。痛いなんてもんじゃないと思うのに。こういう鈍感さが馬獣医の大問題だと思うんですけどね。それって、多分やっぱり鉄を焼いて蹄にジュっとやっても大丈夫だしさあ、という誤解からなってると思うんですよ。だから釘打ったって大丈夫、の筈ないべや。自分の爪に釘打ってみりゃすぐ分かるだに。
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