そもそも、正常な蹄って多分こうなってます。
最初できたての蹄組織はそんなにガチガチにはなっていないと思う。しかし、あの巨体を支えている内にどんどん圧縮されて、蹄底に達する頃にはガチゴチになるはず、なんです、本来。野生動物の宥蹄動物(ホントにすごく多いですよね、生息域も幅広い)が、誰一人削蹄師なんぞ必要としていないのは、体重によって蹄がいい感じに固まる削れた分だけちょこっと伸びる、を繰り返しているから。元来そうそう伸びるもんじゃない、というのも抑えるべきポイントだと思います。野生だと運動量が多いから、すぐ削れちゃうから、伸びないんだ、というのは間違いです。
しかし、例えば濃厚飼料を多給してしまうと、こんな現象が起きたりします。栄養過多のせいで伸びが速すぎて、蹄底を支えられるような硬さになる以前に蹄底に組織が到達してしまうもんで、蹄尖がやたら伸びまくる(ロングトー)。
で、こうした蹄組織の虚弱化が更に深刻になるのが爪水虫。その場合、ロングトーの傾向は顕著になります。だって蹄の組織が食い荒らされてボロボロになってしまうから。こんな感じ。蹄病にはあーだこーだ色々な病名が付いてますけど、結局仕組みは同じで、それぞれの馬の蹄質の一番弱い場所が重点的にやられます。だから、白線が弱ければ白線病・蹄壁が弱くなれば裂蹄・その直下なら蟻道・蹄叉なら蹄叉腐乱、まあなんでもありですが、全て爪水虫が原因で、それを助長するのが濃厚飼料と蹄鉄、となります。
で、爪水虫を退治するために抗真菌剤を長期間飲ませるわけですが、そうすると、こうなります。
抗真菌薬は爪組織に入り込んで定着し、真菌のこれ以上の増殖を抑えてはくれますが、どこもかしこも均一に浸潤するわけではない。恐らく分布域にムラが生じている筈です。真菌側からすると、生存可能域がじりじり減る、もんだから、とにかく生きられそうな場所に集中して増殖しようとします。その部分はどうなるかというと、ビックリするくらいふにゃふにゃになってしまう。または、ガサガサになる。例としては、こんな感じ
これは今年7月頃の左前肢蹄外側ですが、がっさがさで裂蹄が酷い。この部分をハサミで切ると簡単に切れてしまう。ゴム状になっていた箇所までありました。そのくせ蹄尖はやけにがっちりしています。側面への真菌薬浸潤が不足している一方、蹄尖には潤沢に真菌薬が分布しているんでしょう。
ここまで蹄の状況がアンバランスだと、そりゃあ内部に炎症の一つや二つ起きます。しかも、蹄の上部は蹄質が良くなっているので、要は木靴の中で腫れた足、状況。ちょっとの炎症でもめっちゃ痛くなる。
これに近いのは、二日酔いの時の頭痛。あれ、脳浮腫なんだそうですが、頭蓋骨ががっちりしてますから、わずかな浮腫でもめっちゃ頭が痛くなる。同じことでしょう。でもねえ、それがあの巨体の足元なんだから。可哀そうだ。。。。
もう一つ、真菌が最も派手に活躍できるのが「高温&多湿」。日本では梅雨時で、大体その頃に蹄の状況が悪化するケースが多いと思うんですが、ジメジメ&高温のせいで真菌が増殖しやすくなるわけ。梅雨時の風呂場と同じこと。
今回は、蹄の状況がアンバランスな時期がたまたま梅雨時に重なっていたのが大きそうなんです。となると、今は寒くなってるからいいけど、また来年はどうなるやら・・・・。この寒い時期に完全駆逐できるといいんですが。
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