ボクは榎本武揚について「幕末に徳川家艦隊を引きいて函館戦争で土方歳三とともに五稜郭で最後まで戦った人」という程度の知識しか持っていませんでした。
本屋さんで偶然この本に出合ったのですけど,ブックカバーの裏表紙に記載された概要文に興味を持って購入しました。
「黒船来航に揺れる幕末。榎本釜次郎(武揚)は、幕府要人の蝦夷地視察に随行した後、新設の海軍伝習所に入所。操船、蒸気機関等の技術や語学を研鑽し、オランダ留学を果たす。欧州の地で近代国家間の戦争を目の当たりにした釜次郎は、日の本と隔絶する列強諸国の有り様に驚愕する―。新田次郎文学賞受賞作を全面改稿した決定版、待望の文庫化!」
という記載です。
上巻は上記の概要に沿った内容です。
ボクは榎本を軍人だと思っていたのですが,実際は海軍伝習所に入所してオランダに留学はしたけど,操船や蒸気機関の技術や語学を学んだだけで,軍人としてのキャリアを積んだことはなかったんですね。
そして,勝海舟をこき下ろしていることに驚きました。
勝海舟をこのような見方をする著作を初めて読みました。
中巻では
「最新鋭艦「開陽丸」を操り帰国した榎本武揚は、幕臣として奔走し徳川海軍を設立するも、世界情勢に背を向け内紛を続ける日の本の有り様に絶望する。そして大政奉還がなされ、徳川幕府はついに幕を閉じるが……。」
という記載があります。
下巻では
「押し寄せる西軍の前に奥羽越列藩同盟の雄・仙台藩が降伏、会津は陥落した。榎本武揚は徳川家艦隊を引き連れ蝦夷ガ島に向かい箱館を攻略。英仏米露普を相手に自治州を宣言し、蝦夷共和国を樹立する。だが荒天により開陽丸を喪い、西軍が海峡を突破!五稜郭に拠り奮戦するも、土方歳三は倒れ、武揚は…。全面改稿の決定版、堂々完結。」
という記載があります。
全巻を読み終えて,どうも釈然としない気持ちばかりが残りました。
榎本が率いた「蝦夷共和国」は函館で新政府軍に敗れ,土方歳三は必死に戦ったのちに戦死し,その6日後に榎本は降伏することになります。
降伏が遅すぎたことは明らかです。
自分は切腹し損なって生き延び,二年半のあいだ獄につながれましたが,罪は問われず釈放されています。
そして明治政府において外務大臣などの要職を歴任して72歳で生涯を終えています。
軍人でない人が軍を率いるとこういうことになるのでしょう。
前途ある多くの若い命を奪ってしまったという悲しい結末です。
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