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ウイルスを世界に拡散、大国化を急ぎすぎた中国の罪。 平均寿命の推移から考える中国の医療水準の実態

2020-02-19 12:58:09 | 健康・糖質制限・ダイエット・衛生

ウイルスを世界に拡散、大国化を急ぎすぎた中国の罪

平均寿命の推移から考える中国の医療水準の実態

2020.2.17(月)  JBpress  川島 博之 ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問

封鎖された中国・武漢市の住民(写真:新華社/アフロ)

 

 中国でコロナウイルスに感染して死亡する人が増え続けている。中国以外でも香港と

フィリピンで死者が報告されているが、どちらもこの原稿を書いている2月11日時点では、

1名ずつである。中国における死者は1000名を超えているから、死亡するケースは中国で

圧倒的に多い。

 

 中国以外では感染者が少ないために死者が少ないとも考えられる。コロナウイルスが

感染した場合の死亡率は1%から2%程度と見積もられているから、1000人が死亡したの

なら中国の感染者数は数万人から10万人になっているはずだ。しかし11日の時点では、

中国での感染者は約4万2000人と発表されている。感染者数が少なく見積もられている

可能性がある。

 

 これは当局が故意に感染者数を少なめに公表しているためとも考えられるが、

これだけの混乱が生じており、またその初動体制における隠蔽体質が批判されている

ことを考えると、あえて低めの数字を発表しているとは考えにくい。感染者数が少ない

真の理由は、確実な検査を行って感染者を特定する能力が不足しているからだろう。

この辺りの医療水準の低さが感染を抑え込めない原因になっていると考えられる。

 

一気に経済大国になったが平均寿命は?

 中国、特に湖北省など地方の医療水準はどの程度のものなのだろうか。それを客観的に

判断する資料は乏しいが、ここでは各国の平均寿命を比較することで医療水準の差異を

考えてみたい。中国のデータは信用が置けないものが多いが、人が何歳で死んだかという

記録から計算される平均寿命は、比較的信頼性が高いデータである。

 図1に中国、日本、米国、それにインドの男性の平均寿命の推移を示す。

図1 中国、日本、米国、インドの平均寿命(男性)の推移(出所:世界銀行)

 

この図には中国が驚異的な経済発展を始めた1980年代より2017年までの値を示したが、

この期間に平均寿命はどの国でも大きく伸びた。中国で8.9歳、日本で7.5歳、米国で6.1歳、

インドでは14.2歳も伸びた。平均寿命の伸びは幼児死亡率の低下による部分が大きい

ために、経済発展が遅れていた国ほど大きく伸びる。インドの伸びが大きいのはその

ためである。

 

 中国の平均寿命は伸びているものの、それでも日本や米国の水準には達していない。

2017年の中国の平均寿命は74.3歳であるが、これは日本の1983年とほぼ同じ水準である。

 

 本題からそれるが、米国の平均寿命は2010年代に入って伸び悩んでいる。これは

自殺率や薬物の乱用による死亡が原因とされるが、この図からも、なぜ米国で極端な

米国第一主義を掲げるトランプが大統領になったり、社会民主主義者を自称する

サンダースが民主党の有力候補者になったりするのかが理解できよう。

GDPは増えているが、米国社会は病んでいる。日本の平均寿命は2010年代に入っても

伸びているから、経済が低迷する日本の方が、寿命という点では米国より良好な

状況にある。

 

 話を戻すと、平均寿命から考えて中国の医療水準は米国や日本に遅れをとっている

としてよいだろう。図1は国全体の平均値であるが、中国では北京や上海などの大都市と

地方では大きな格差が存在する。それは医療も例外ではない。湖北省の省都である

武漢には海外から多くの企業が進出しているとされるが、それでも湖北省は田舎である。

中国のコメ作の中心地の1つであり、多くの人は農村に住んでいる。

 

 中国では優秀な医師は北京や上海などの大都市に集まるので、農村には優秀な医師は

ほとんどない。平均を考えても中国の医療水準は日本や米国に劣っている。それに加えて

医療の偏りが、湖北省で発生した感染症を抑え込めない原因になっていると考えられる。

 

疎かにされた地方都市の衛生状態

中国はGDPを増大させる公共投資や住宅建設に力を入れてきたが、GDPに直接関係がない

地方や農村の医療改善には力を入れてこなかったようだ。そのような傾向は習近平政権に

なってから一層顕著になった。それは日本と中国の平均寿命の差を取ってみるとよく

分かる(図2)。

図2 日本と中国の平均寿命の差

 

 日本は1990年頃より、失われた20年とも30年とも言われて経済が発展することは

なかったが、それでも平均寿命は伸びている。一方、中国はその期間に奇跡の成長を

遂げたが、平均寿命では日本に追いつくことはできなかった。それでも1995年頃から

2012年頃までは差が縮小していた。しかし、それ以降は差がほぼ一定になっている。

これでは永遠に日本に追いつくことができない。

 

 差が縮小しなくなったのは習近平の治世に原因がある。今回、中国がコロナウイルス

による感染症を防ぐことができなかったのは、感染症が発生した事実を隠蔽したこと

だけが理由ではない。習近平政権になってから農村や地方都市の衛生状態の改善や

医療の普及などを怠り、GDPの増大や軍事強国の建設という目標に力を注ぎすぎた結果で

あろう。

 

 中国の古典である『老子』に「天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず」

なる言葉がある。お金儲けや軍事力の増強だけに邁進しても、豊かで人々が安心して

暮らせる国を作ることはできない。敵は意外な方向からやって来たようだ。

 


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