津軽ジョンがる電源日記

『KOJO TECHNOLOGY』 電源メーカースタッフ日記

Crystalシリーズ_その2

2020-01-15 16:01:36 | Crystal(電源タップ)
こんにちは、ジョンがる隊長です。

昨年末発売が開始されたCrystal3.1および6.1は、先のブログ(Crystalシリーズ その1)等でも述べているように、そのコストパフォーマンスで大人気となったForce barシリーズの後継機種となる。
CrystalシリーズはForce bar同様、音質的な追い込みはもちろんのこと、そのコストに重点が置かれている。

オーディオアクセサリの一種である電源タップは、そのパイニアとしてオヤイデ電気やフルテックの存在があるが、今や台頭するメーカは山とあり、それぞれのメーカの特徴と音色をもって広く販売されている。

しかし、最近は云十万もする電源タップまで見受けられ、高騰化(決してそれがダメと否定しているのではない)が進む中、ことForce barシリーズやこれから移行が進むCrystalシリーズは、ユーザー層の視野を広げ、より多くの人に楽しんでいただこうという目的から派生した製品である。
ましてやKOJOは二番煎じ(後発メーカ)、ちょっとやそっとでは目を向けてくれないことを覚悟して取り組んだ。

上記よりコンセプトとして以下が挙げられた!
1.コストへの拘り!
2.他メーカにはない、ちょっと変わったことをしたい!

1.コスト(低減)への拘り!
概ね以下が考えられた。
1-1.工数単価の安い協力会社への外注化
1-2.作業性を上げ工数を減らす(作業効率のアップ)
1-3.部品単価の安いものを選定
いずれも言うが易しであるが、決して楽なものではない。

かくして必死に取り組むことになるのである。

「1-1.工数単価の安い協力会社への外注化」だが、近隣にも協力会社は多数あり、依頼すれば請け負ってくれる会社たくさんある。しかし内製できることは可能な限り社内対応というのがKOJOポリシーだ。(社内にも技術の蓄積は必要だという意図がある)

ということで「1-2.作業性を上げ工数を減らす(作業効率のアップ)」になる。
電源タップは言ってしまえば「機構部品(板金)」、「電子部品(線材)」、「梱包材」くらいしかなく構造も単純だ。(ここでは製品原価について言っているので、梱包材も含めた)
しかし侮るなかれ、いくら構造が単純で部品点数が少ないとは言え、「えいやぁ!」で設計しては作業性の配慮に欠け、安く収まるものも収まらなかったりするのである。加え、良くなるはずの音も良くならないのである。
もちろんコストをかければ立派なものもできる。しかし、Force barやCrystalはそこに着眼はないのである。

作業の効率化は主に「板金」構造に大きく影響され、決定づけると言っても過言ではない。
弊社の場合、(内外部含め)専任デザイナーは抱えていない。
デザイン、素材(材質)、機械加工機や板金加工機による加工方法、またそれらに対するコスト的感覚、音質のノウハウについて熟知したスタッフが統括、プロデュースし作業を進めている。
(当然ではあるが)大事な場面ではデザインレビュー(DR)もする徹底ぶりだ。

故に加工が出来ない構造、低コストでの実現が不可能な困難極まりないデザインはしないのである。ただ、その一方で見た目を意識し、「如何にも良い音がしそう」、「しっかりしてそう」、「パフォーマンスが高そう」的なイメージに仕立てるのだ。

見た目はやはり大事である。

作業性だけに捕らわれるとデザインが疎かになる。デザインに拘り過ぎると作業性が悪化したりする。この辺は隊長の大好物であるが、常に現場と設計者の押し問答である!
DRや試作を行うなかで、コスト面で折り合いがつかないシーンが間々ある。大概はここであきらめているのかも知れないが、定価を上げて妥協するのではなく、更にもう一歩前進するために創造するのである。知恵を絞るのである。常に違うジャンルにも目を向けアンテナを張っておくのである。

やれない理由を考えるのではなく、やるために何が必要か考えるのである。

そこに突破口が見いだせたとき、新境地が待っているのである。そこにはコスト低減のために綿密に考慮された、他メーカには簡単に発想できないアイディア、創意工夫が盛り込まれることになるのだ。まさにCreativeな作業である。

苦労して登った山からの景色は絶景なのである!

次は「1-3.部品単価の安いものを選定する」だ。
これは正にノウハウの塊だ!一般論ではあるが、オーディオ的に優れた素材は高額なものが多い。でも安易には使わない。いや、今の場合使ってはいけないのである。ひとたび使うとその高額な部品に頼ってしまう危険性も含んでいる。

安価な部品だからと言って、音質的にはこの程度かな・・・といった妥協は許さない。その素材の優れた部分を十分に引き出さなければパフォーマンスの向上は望めないのである。
使ったことがない部品であれば基礎実験を行い、コストがかからないプラスαの処置や手間をかけパフォーマンス向上に努めるのである。
 仮にその部品が採用されなかったとしても、ノウハウとして蓄積され次に活かされるのである。

安価な部品の中に潜む特異性、独創性を引き出せ!

繰り返しになるが、Force barやCrystalにおいて高額部品は買えない!ならば如何にスタンダードな素材、メッキ、線材を採用して、高いパフォーマンスを生ませるかが重要だ。
6Nだ7Nだの高価な線材は使えないのである。ロジウムメッキ、特殊素材!無理無理なのである。
今回Crystalの内部配線には4NOFC錫メッキ線(単線)を採用している。この線材は裸線材のため被覆を剥ぐ必要がなく、半田の浸透性も良いため作業効率アップにもつながる他、音質的にも「おいしい帯域(中・中低域)」を得意とすることから、音楽性も高まるという一石三鳥の旨味がる。

こうした一般的な素材を使いながらも高音質化を図るノウハウを惜しみなく投入している。いや、逆に投入しなければ良いものにならないのである。

ただ、これだけでは足りないのである。
安価ながらも凄いパフォーマンスだと言わせるには、もう一皮も二皮も剥けなければならない。

そこで考案されたのがメカニカル・アイソレーション・システム(M・I・S)だ。
オーディオでは振動対策が高音質化のひとつとして取り上げられるが、この振動対策を電源タップ内に取り込んだのがForce barでありCrystalである。
使用することが限られた部品や素材、メッキの限界を超えるため、構造的アプローチから高音質化の道を開いたのである。

構造的アプローチでコストダウンを突破!

M・I・S構造はTOPシャーシ、サブシャーシ、BTTOMシャーシの3つで構成されており、サブシャーシにインレット、コンセント(アウトレット)他全ての部品がマウントされている。サブシャーシは、これも振動抑制効果が高い合金ワッシャを介在してTOPシャーシに吊るされた構造を取っている。これにより外部からの振動がアウトレットやインレットに直接伝わりにくい構造となり、効果は絶大なものとなった。

2.他メーカにはない、ちょっと変わったことをしたい!
コスト低減と直接の関係はないが、KOJOが電源タップを製品化しようと決議されたとき、他メーカの製品にはない、ちょっと変わったことをする必要があると考えていた。しかもそれが一部のユーザーにとって重宝されるものではなく、万人受けするものでありたい訳だ。

 話しは少し?飛ぶが、隊長はこれでいておしゃれ好き!ファッションや雑貨、建築物やデザインなども好物である。
家族サービスの一環として、休日みんなで買い物に出かけた際、「無印良品」を覗いた。電源タップなどを置いているコーナーがあり、結構おしゃれなデザインでシンプル!結構好きかも・・・なんて見ていたら、なんとそこに連結できるタップが置いてあったのだ!
「何とまぁー、こんなところにこんなアイディアを持った製品(電源タップ)があるのだ」と衝撃が走った。
 また、ショックでもあった。「何故これを思いつかなんだ」と!

結果そのアイディアをオーディオ向けにリバイスし、Force barシリーズやCrystalシリーズに応用展開することになるのだが、

かくしてアンテナを張っていたことで功を奏したわけである。

お陰様でいろんな意味で(隊長が)大好きな「合体」が、オーディオ業界の中でもかなり認知されるようになり、「KOJOタップ=合体」の代名詞がささやかれるようになったとか・・・。